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番外編 ダニエルとその子供達③
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ネヴァンス侯爵家の屋敷は思った以上に厳重になっていた。
門に近づいた途端、「勝手に入ることは出来ません」と公爵であるわたしに対しても門前払いだった。
「わたしが誰だかわかって言っているのか?」
門兵は「申し訳ございません。例えどなたであろうと許可なき者は通さないようにと申しつけられております」
顔色ひとつ変えないではっきりと言われた。
「これだけしっかりしていれば、これからのダイアナのここでの生活は安心出来るな」
わたしのその一言に門兵二人は深々と頭を下げてくれた。
「ひとつ頼みがある。アシュアにダニエルが来たと伝えてくれないか?」
「………わかりました、少々お待ちください」
しばらく門の外で待っていると、「アシュア様がお帰りくださいとのことです、申し訳ありません」と謝られた。
「せめてこの花束だけでも渡してくれないか?」
自分が公爵の地位にいようと今のわたしは何もできない男でしかない。それを思い知らされながらも「頼む、この花だけはダイアナに渡したいんだ。わたしの名前は出さなくていい、会えなくてもいい、だけどエレファの好きだった花をどうしても今日渡したいんだ」
渡すのを躊躇って諦めたくせに、今更なのにやはり渡したかった。せめてエレファの想いを届けたかった。
「あら?ダニエル、自分がどれだけダイアナに冷たくしてきたかわかっているくせによく会いに来れたわね」
「アシュア、わかっている。だからわたしからだと言わなくていい、会えなくてもいい。エレファが好きだった花を渡したいんだ」
「エレファを裏切っておいてよく言えたわね?エレファの女としての尊厳を壊しておいて。わたしは貴方を絶対に許さないわ。王妃が許してもね」
「……わかっている、許されるなんて思っていない」
「さっき、王妃からの伝言が早馬で来たわ。貴方が来るとね。ダイアナが貴方が来て喜ぶと思って?あの子はやっと貴方達から離れることが出来て幸せになったのよ?」
「…………帰るよ」
流石に甘い考えだとわかってはいた。勢いだけで来た。だけど浅はかだった。
「ふぅ……どうぞ、でも会わせないわよ。花を置いたら帰って」
そっと扉に近づきそっと花束を置いた。そして扉をノックすると中から「はい?」と声が聞こえたので急いでその場を離れた。
使用人は中から返事が来てから声をかけて扉を開けて中に入る。中にいる人が開けることはない。
やはりしばらくなにも動きはなかった。
しばらくして、中からそっと扉が開いた。
ダイアナは花束を見て驚きながらも廊下を見回してから、少し悩みながら花束を持って部屋の中へ戻っていった。
メッセージカードは入れていない。
わたしはエレファの好きなかすみ草の他に黄色のスターチスと青い薔薇を入れた花束をダイアナに贈った。
【かすみ草は『幸福』黄色のスターチスは『愛の喜び・誠実』青い薔薇は『夢かなう・神の祝福』」】
エレファが好きだった花言葉。それを真似して作ってもらった花束だった。
わたしが隠れている姿をアシュアが見ていた。
「ダニエル、もう帰って。ダイアナとはわたしが話すから。まだ貴方には会う資格はないわ。冷たいかもしれないけどダイアナが会いたいと言わない限り貴方を近づけるつもりはないの」
「わかっている、花束を渡せただけで十分だ、それにあの子の声を聞けたし姿も見れた。アシュア、ありがとう」
わたしはもう十分だった。
そしてアシュアはわたしから離れてダイアナの部屋へと向かった。
そして扉をノックするとまたダイアナの声がかすかに聞こえた。
「はい?」
「アシュアよ、入ってもいいかしら?」
「どうぞ」
わたしはその声が聞こえた瞬間、唇を噛み締めぐっと手に力を入れた。
そして、その場から去った。
屋敷に帰ると、二人が少し緊張気味に迎えに出てきた。
「お義姉様に会えましたか?」
ジェファの問いに、「会わずに花束だけを置いてきた」と説明した。
わたしの顔を見てそれ以上は何も聞かないでくれた。
わたしはこの二人に愛情はないと思っていた。ミリアの子で無理やり跡取りとして作らされた子供。わたしの意思はそこにはなかった。ずっとそう思っていた、いや、そう思い込んでいた。
ただダイアナを避けるためにこの子達といた、そんな気持ちだった。
だけど、この子達のおかげで、平常心を保つことが出来ているのだと今更ながら感じた。
二人の顔を見た瞬間、緊張していた気持ちが安堵に変わっていた。
わたしは………この子達を愛していたんだ。
ダイアナのことばかり考えていたけど、この子達は自分の立ち位置を理解し、義姉を虐げでいたことを反省して、いつもこの屋敷でビクビクしながら過ごしていたことに気がついた。
「ジェファ、エリーナ、ここに座りなさい。わたしは父親として愚かだった。周りを見ることもできず子供達の心を傷つけて踏み躙って……すまない。お前達を可愛がっているふりをしていつもダイアナのことしか見ていなかった。……ダイアナを傷つけながら暮らし、ダイアナがわたしから離れてしまったら今度はお前達のことを見ようともしなかった……」
ふと二人を見ると俯き体が小刻みに震えていた。
「すまなかった……やっと気がつくなんて……遅すぎたと分かっていても、伝えておきたい」
二人のそばに行き二人の肩に手を置いた。
「わたしはお前達を愛していたんだ。とても大切な息子と娘なんだ」
「……………お父様?」
エリーナが涙いっぱいの目でわたしを見つめた。
ジェファは俯いたままだった。
そして二人がわたしに抱きついて……泣き出した。
「わたしは要らない子ではないの?生まれてきてもよかったの?」
「当たり前だ、エリーナが生まれてきてくれてとても嬉しいよ」
「ほんとぉに?」
「もちろんだ、こんなお父様だけど一緒に暮らしてくれるかい?」
「はい!」
エリーナは泣きながらも必死で笑顔を作ろうとしてくれた。
ジェファはただ泣き続けた。
ダイアナのこともずっと分かっていて、どうすることもできずわたしと共に存在を無視して過ごしてきたジェファ、わたしのせいで姉を虐げされられて後悔や懺悔の気持ちが今も続いている。
「ジェファ、ダイアナが以前、お前達を大切にしてほしい、と言われたんだ。なのにわたしはダイアナを不幸にしておいてお前達を可愛がることに罪悪感を感じて優しく出来なかった。だけど今ならわかる。ダイアナはお前達には自分と同じ辛い目にあって欲しくないと思っているんだと。ずるいかもしれない、だけどお前達と本当の家族になりたい」
「お父様、こちらの書類ですが、少し計算がおかしいところがあるので報告書をもう一度精査したいた思います」
16歳になったジェファはわたしの片腕として仕事をこなすようになっていた。いつかは公爵の地位を譲りわたしは領地で一人で暮らすつもりだ。
エレファが好きだと言ったかすみ草が沢山咲く場所で。
夏季冷涼な気候を好んで生育するかすみ草。エレファが好きな場所は高冷地で夏でも涼しい環境でそよ風を運び、初夏から晩秋にかけて「満天の星」を思わせる無数の花々を咲かせる、わたしはそこで一人エレファを想いながら生きていこうと思う。
「お父様、結婚するまではわたしのそばに居てくださいね」エリーナはわたしの気持ちに気がついているのか、いつもそう言って甘えてくる。
まだ11歳の可愛い娘を残して去るわけにもいかず苦笑いをしながらもわたしは二人のそばでダイアナのことを思いながら暮らし続ける。
わたしの贖罪は、この子達を大切に育てること。後悔と罪悪感を感じながら。
◆ ◆ ◆
ミリア編をこの後書くつもりです。
あと少しだけお付き合いくださいね。
たぶん数日後になると思います……
そして【子供ができたので離縁致しましょう】の
『終わり。の続き。』を書きました。短めの1話ですが。もしよければ読んでみてくださいね。
門に近づいた途端、「勝手に入ることは出来ません」と公爵であるわたしに対しても門前払いだった。
「わたしが誰だかわかって言っているのか?」
門兵は「申し訳ございません。例えどなたであろうと許可なき者は通さないようにと申しつけられております」
顔色ひとつ変えないではっきりと言われた。
「これだけしっかりしていれば、これからのダイアナのここでの生活は安心出来るな」
わたしのその一言に門兵二人は深々と頭を下げてくれた。
「ひとつ頼みがある。アシュアにダニエルが来たと伝えてくれないか?」
「………わかりました、少々お待ちください」
しばらく門の外で待っていると、「アシュア様がお帰りくださいとのことです、申し訳ありません」と謝られた。
「せめてこの花束だけでも渡してくれないか?」
自分が公爵の地位にいようと今のわたしは何もできない男でしかない。それを思い知らされながらも「頼む、この花だけはダイアナに渡したいんだ。わたしの名前は出さなくていい、会えなくてもいい、だけどエレファの好きだった花をどうしても今日渡したいんだ」
渡すのを躊躇って諦めたくせに、今更なのにやはり渡したかった。せめてエレファの想いを届けたかった。
「あら?ダニエル、自分がどれだけダイアナに冷たくしてきたかわかっているくせによく会いに来れたわね」
「アシュア、わかっている。だからわたしからだと言わなくていい、会えなくてもいい。エレファが好きだった花を渡したいんだ」
「エレファを裏切っておいてよく言えたわね?エレファの女としての尊厳を壊しておいて。わたしは貴方を絶対に許さないわ。王妃が許してもね」
「……わかっている、許されるなんて思っていない」
「さっき、王妃からの伝言が早馬で来たわ。貴方が来るとね。ダイアナが貴方が来て喜ぶと思って?あの子はやっと貴方達から離れることが出来て幸せになったのよ?」
「…………帰るよ」
流石に甘い考えだとわかってはいた。勢いだけで来た。だけど浅はかだった。
「ふぅ……どうぞ、でも会わせないわよ。花を置いたら帰って」
そっと扉に近づきそっと花束を置いた。そして扉をノックすると中から「はい?」と声が聞こえたので急いでその場を離れた。
使用人は中から返事が来てから声をかけて扉を開けて中に入る。中にいる人が開けることはない。
やはりしばらくなにも動きはなかった。
しばらくして、中からそっと扉が開いた。
ダイアナは花束を見て驚きながらも廊下を見回してから、少し悩みながら花束を持って部屋の中へ戻っていった。
メッセージカードは入れていない。
わたしはエレファの好きなかすみ草の他に黄色のスターチスと青い薔薇を入れた花束をダイアナに贈った。
【かすみ草は『幸福』黄色のスターチスは『愛の喜び・誠実』青い薔薇は『夢かなう・神の祝福』」】
エレファが好きだった花言葉。それを真似して作ってもらった花束だった。
わたしが隠れている姿をアシュアが見ていた。
「ダニエル、もう帰って。ダイアナとはわたしが話すから。まだ貴方には会う資格はないわ。冷たいかもしれないけどダイアナが会いたいと言わない限り貴方を近づけるつもりはないの」
「わかっている、花束を渡せただけで十分だ、それにあの子の声を聞けたし姿も見れた。アシュア、ありがとう」
わたしはもう十分だった。
そしてアシュアはわたしから離れてダイアナの部屋へと向かった。
そして扉をノックするとまたダイアナの声がかすかに聞こえた。
「はい?」
「アシュアよ、入ってもいいかしら?」
「どうぞ」
わたしはその声が聞こえた瞬間、唇を噛み締めぐっと手に力を入れた。
そして、その場から去った。
屋敷に帰ると、二人が少し緊張気味に迎えに出てきた。
「お義姉様に会えましたか?」
ジェファの問いに、「会わずに花束だけを置いてきた」と説明した。
わたしの顔を見てそれ以上は何も聞かないでくれた。
わたしはこの二人に愛情はないと思っていた。ミリアの子で無理やり跡取りとして作らされた子供。わたしの意思はそこにはなかった。ずっとそう思っていた、いや、そう思い込んでいた。
ただダイアナを避けるためにこの子達といた、そんな気持ちだった。
だけど、この子達のおかげで、平常心を保つことが出来ているのだと今更ながら感じた。
二人の顔を見た瞬間、緊張していた気持ちが安堵に変わっていた。
わたしは………この子達を愛していたんだ。
ダイアナのことばかり考えていたけど、この子達は自分の立ち位置を理解し、義姉を虐げでいたことを反省して、いつもこの屋敷でビクビクしながら過ごしていたことに気がついた。
「ジェファ、エリーナ、ここに座りなさい。わたしは父親として愚かだった。周りを見ることもできず子供達の心を傷つけて踏み躙って……すまない。お前達を可愛がっているふりをしていつもダイアナのことしか見ていなかった。……ダイアナを傷つけながら暮らし、ダイアナがわたしから離れてしまったら今度はお前達のことを見ようともしなかった……」
ふと二人を見ると俯き体が小刻みに震えていた。
「すまなかった……やっと気がつくなんて……遅すぎたと分かっていても、伝えておきたい」
二人のそばに行き二人の肩に手を置いた。
「わたしはお前達を愛していたんだ。とても大切な息子と娘なんだ」
「……………お父様?」
エリーナが涙いっぱいの目でわたしを見つめた。
ジェファは俯いたままだった。
そして二人がわたしに抱きついて……泣き出した。
「わたしは要らない子ではないの?生まれてきてもよかったの?」
「当たり前だ、エリーナが生まれてきてくれてとても嬉しいよ」
「ほんとぉに?」
「もちろんだ、こんなお父様だけど一緒に暮らしてくれるかい?」
「はい!」
エリーナは泣きながらも必死で笑顔を作ろうとしてくれた。
ジェファはただ泣き続けた。
ダイアナのこともずっと分かっていて、どうすることもできずわたしと共に存在を無視して過ごしてきたジェファ、わたしのせいで姉を虐げされられて後悔や懺悔の気持ちが今も続いている。
「ジェファ、ダイアナが以前、お前達を大切にしてほしい、と言われたんだ。なのにわたしはダイアナを不幸にしておいてお前達を可愛がることに罪悪感を感じて優しく出来なかった。だけど今ならわかる。ダイアナはお前達には自分と同じ辛い目にあって欲しくないと思っているんだと。ずるいかもしれない、だけどお前達と本当の家族になりたい」
「お父様、こちらの書類ですが、少し計算がおかしいところがあるので報告書をもう一度精査したいた思います」
16歳になったジェファはわたしの片腕として仕事をこなすようになっていた。いつかは公爵の地位を譲りわたしは領地で一人で暮らすつもりだ。
エレファが好きだと言ったかすみ草が沢山咲く場所で。
夏季冷涼な気候を好んで生育するかすみ草。エレファが好きな場所は高冷地で夏でも涼しい環境でそよ風を運び、初夏から晩秋にかけて「満天の星」を思わせる無数の花々を咲かせる、わたしはそこで一人エレファを想いながら生きていこうと思う。
「お父様、結婚するまではわたしのそばに居てくださいね」エリーナはわたしの気持ちに気がついているのか、いつもそう言って甘えてくる。
まだ11歳の可愛い娘を残して去るわけにもいかず苦笑いをしながらもわたしは二人のそばでダイアナのことを思いながら暮らし続ける。
わたしの贖罪は、この子達を大切に育てること。後悔と罪悪感を感じながら。
◆ ◆ ◆
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