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結婚式
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白いウェディングドレスには刺繍を施され思った以上に美しいドレスになった。
お母様が着たドレスを手直ししてもらった。
ブラン王国からお祖父様、伯父様伯母様たちが参加してくれた。
わたしの名前はダイアナ・ブラン。
お祖父様の養子となりブラン王国の王族としてキース様に嫁ぐ。
「ダイアナ、とても綺麗だよ」
お祖父様はもう国王を退位している。そして何故か……わたしとキース様の屋敷に住んでいる。
「お前がやっと私たちの元へ帰ってきてくれたんだ。これからは一緒に暮らそう」
と言い出してやって来た。
元国王が狭い離れの屋敷に住むなんて有り得ない!と断ったのに
「わたしはずっとお前と暮らしたかったんだ。お前が辛い思いをしていると知っていたのに助けてやれなかった。やっぱり口出しするべきだった。
ダニエルのクソも許せんがカステルも許せん。うちの娘に対して!」
思い出すと悔しさが込み上げてくるようだ。
真実を伝えたのはわたしがお祖父様の養子になる時だった。それまではお母様が亡くなってわたしが冷遇されていたことしか知らない。
もちろん知らせていなかったし、本当のことを話すことも躊躇われた。
でも養子になるためにももう誤魔化してばかりでは駄目だと思いわたしの口で真実を伝えた。
お祖父様は怒って「戦争だ!」と言い出した。
お母様の兄であるブラン王国の国王である伯父様も「全て消し去ってやる」と怒り狂っていた。
「お祖父様、伯父様、今まで黙っていたこと申し訳ありませんでした。でもこの日記を読んでください」
わたしはお母様の日記を二人に見せた。
お母様はお二人に向けた想いを書いていた。
『お父様、お兄様、わたしが受けた真実をいつか知る時がくるかもしれません。でもお願いです。何もしないでください。その代わりどうかダイアナをわたしの代わりに愛してください。わたしの代わりにダイアナの成長を見届けてください。
ダイアナが暮らす国を、そしてこの国の人々をわたしのために苦しめないでください。
親不孝な娘で申し訳ありません。先に逝くことを許してください。
ダイアナをお願い致します。
愛しています、お父様、お兄様』
「お祖父様、もう過去のことは忘れましょう」
ーーそう言ってるけどわたしも忘れられない。
お母様の人生を、心を返してほしい。
わたしだっていまだに許せないでいる。
それでも争いで人々が死ぬのは嫌だ。
お祖父様はしばらく部屋から出て来なかった。
そして……次の日の朝、わたしに会いに来て
「ダイアナ、わたしはお前と本当の家族になった。だから一緒に暮らす。わたしもお前と共にエレファのいる国で暮らそう」
そう言ってついて来たのだ。
たくさんの使用人を引き連れて……
王妃様は慌ててお祖父様のための宮を用意してくれた。そこに使用人を押し込んで
「ダイアナの屋敷に住むんだ!」
と言い張り、今日の結婚式の日も朝からわたしの部屋に入り浸っている。
「大旦那様、お願いですからしばらく部屋を出て行ってください」
新しくわたし付きになってくれた侍女のリュシュが、ガタガタと震えながらもお祖父様に向かって言った。
「何故だ?ダイアナの美しい姿を一番に見るのはわたしなんだ!」
「女性の着替える姿を見るのは駄目です!着替え終わりましたらお呼び致します」
リュシュがあまりにも可哀想になって「お祖父様少しお待ちくださいね」と声を掛けるとシュンとして部屋を出て行った。
「お祖父様が迷惑をかけてごめんなさい。お母様のウェディングドレスを着るからとても楽しみにしているみたいなの」
「分かっております。この国で一番綺麗な花嫁に仕上げてみせます」
リュシュ達侍女がみんなで化粧、髪のセット、着替えと丁寧にそして美しく仕上げてくれた。
お祖父様は「エレファ……」と呟き涙を流していた。
大切な娘の死に立ち会えず、本当のことを聞かされず過ごして来たお祖父様。本当はこの国を許したくはないはず。
だけどわたしのために堪えてくださった。
それにお祖父様がこの国にいるのも本当はわたしのため。
父方のお祖父様の事件の内容は公にはされてはいないことも幾つかある。
それはお母様を守るため。死んでしまっているのに世間で今更醜聞が広まるなんて絶対あってはならない。
だけどお祖父様のせいで騙されて借金を負わされた人や犯罪に巻き込まれた人もたくさんいる。
逆恨みでわたしを狙っている人もいるとキース様達も警戒してくれている。
だからお祖父様はわたしの結婚式が何事もなく挙げられるようにとそばに居てくれる。
お祖父様は元国王。常に「影」と「護衛」が付いている。お祖父様がそばにいればわたしに害を及ぼそうとしても阻止される。
お祖父様の優しさに感謝しながらわたしはキース様に嫁ぐ。
「お祖父様、いつもご心配をおかけしてすみません。キース様のところに嫁いでもわたしはお祖父様の孫です、会いに行きますね」
「エレファや妻にも見せてやりたかった。ダイアナとても綺麗だよ、幸せになりなさい」
「ありがとうございます」
お祖父様がわたしを抱きしめてくれた。
そして、キース様も近衛騎士の正装に着替えて部屋に迎えに来た。
わたしのドレス姿を見て優しそうに目元を緩めた。
「ダイアナ、とても綺麗だ」そう言うとわたしの前に来て跪いて手を取りキスをした。
「一生大切にする、愛してる」
「当たり前だ!わたしのダイアナが綺麗なのは!大切にする?命をかけてダイアナを守り抜け!」
お祖父様は横からキース様に色々言い始めた。
キース様は何も言い返さず黙ってお祖父様の話を聞いていた。そして……
「わたしは命をかけてダイアナを守り抜きます。そして一生愛し続けます」
お祖父様はその言葉にキース様に文句を言うのをやめた。
「エレファが大切に守り抜いたダイアナをどうか幸せにしてやってくれ。ダイアナが我慢しないで泣ける場所を作ってやってくれ」
「わかりました、必ずお約束します」
◆ ◆ ◆
明日最終話です。
お母様が着たドレスを手直ししてもらった。
ブラン王国からお祖父様、伯父様伯母様たちが参加してくれた。
わたしの名前はダイアナ・ブラン。
お祖父様の養子となりブラン王国の王族としてキース様に嫁ぐ。
「ダイアナ、とても綺麗だよ」
お祖父様はもう国王を退位している。そして何故か……わたしとキース様の屋敷に住んでいる。
「お前がやっと私たちの元へ帰ってきてくれたんだ。これからは一緒に暮らそう」
と言い出してやって来た。
元国王が狭い離れの屋敷に住むなんて有り得ない!と断ったのに
「わたしはずっとお前と暮らしたかったんだ。お前が辛い思いをしていると知っていたのに助けてやれなかった。やっぱり口出しするべきだった。
ダニエルのクソも許せんがカステルも許せん。うちの娘に対して!」
思い出すと悔しさが込み上げてくるようだ。
真実を伝えたのはわたしがお祖父様の養子になる時だった。それまではお母様が亡くなってわたしが冷遇されていたことしか知らない。
もちろん知らせていなかったし、本当のことを話すことも躊躇われた。
でも養子になるためにももう誤魔化してばかりでは駄目だと思いわたしの口で真実を伝えた。
お祖父様は怒って「戦争だ!」と言い出した。
お母様の兄であるブラン王国の国王である伯父様も「全て消し去ってやる」と怒り狂っていた。
「お祖父様、伯父様、今まで黙っていたこと申し訳ありませんでした。でもこの日記を読んでください」
わたしはお母様の日記を二人に見せた。
お母様はお二人に向けた想いを書いていた。
『お父様、お兄様、わたしが受けた真実をいつか知る時がくるかもしれません。でもお願いです。何もしないでください。その代わりどうかダイアナをわたしの代わりに愛してください。わたしの代わりにダイアナの成長を見届けてください。
ダイアナが暮らす国を、そしてこの国の人々をわたしのために苦しめないでください。
親不孝な娘で申し訳ありません。先に逝くことを許してください。
ダイアナをお願い致します。
愛しています、お父様、お兄様』
「お祖父様、もう過去のことは忘れましょう」
ーーそう言ってるけどわたしも忘れられない。
お母様の人生を、心を返してほしい。
わたしだっていまだに許せないでいる。
それでも争いで人々が死ぬのは嫌だ。
お祖父様はしばらく部屋から出て来なかった。
そして……次の日の朝、わたしに会いに来て
「ダイアナ、わたしはお前と本当の家族になった。だから一緒に暮らす。わたしもお前と共にエレファのいる国で暮らそう」
そう言ってついて来たのだ。
たくさんの使用人を引き連れて……
王妃様は慌ててお祖父様のための宮を用意してくれた。そこに使用人を押し込んで
「ダイアナの屋敷に住むんだ!」
と言い張り、今日の結婚式の日も朝からわたしの部屋に入り浸っている。
「大旦那様、お願いですからしばらく部屋を出て行ってください」
新しくわたし付きになってくれた侍女のリュシュが、ガタガタと震えながらもお祖父様に向かって言った。
「何故だ?ダイアナの美しい姿を一番に見るのはわたしなんだ!」
「女性の着替える姿を見るのは駄目です!着替え終わりましたらお呼び致します」
リュシュがあまりにも可哀想になって「お祖父様少しお待ちくださいね」と声を掛けるとシュンとして部屋を出て行った。
「お祖父様が迷惑をかけてごめんなさい。お母様のウェディングドレスを着るからとても楽しみにしているみたいなの」
「分かっております。この国で一番綺麗な花嫁に仕上げてみせます」
リュシュ達侍女がみんなで化粧、髪のセット、着替えと丁寧にそして美しく仕上げてくれた。
お祖父様は「エレファ……」と呟き涙を流していた。
大切な娘の死に立ち会えず、本当のことを聞かされず過ごして来たお祖父様。本当はこの国を許したくはないはず。
だけどわたしのために堪えてくださった。
それにお祖父様がこの国にいるのも本当はわたしのため。
父方のお祖父様の事件の内容は公にはされてはいないことも幾つかある。
それはお母様を守るため。死んでしまっているのに世間で今更醜聞が広まるなんて絶対あってはならない。
だけどお祖父様のせいで騙されて借金を負わされた人や犯罪に巻き込まれた人もたくさんいる。
逆恨みでわたしを狙っている人もいるとキース様達も警戒してくれている。
だからお祖父様はわたしの結婚式が何事もなく挙げられるようにとそばに居てくれる。
お祖父様は元国王。常に「影」と「護衛」が付いている。お祖父様がそばにいればわたしに害を及ぼそうとしても阻止される。
お祖父様の優しさに感謝しながらわたしはキース様に嫁ぐ。
「お祖父様、いつもご心配をおかけしてすみません。キース様のところに嫁いでもわたしはお祖父様の孫です、会いに行きますね」
「エレファや妻にも見せてやりたかった。ダイアナとても綺麗だよ、幸せになりなさい」
「ありがとうございます」
お祖父様がわたしを抱きしめてくれた。
そして、キース様も近衛騎士の正装に着替えて部屋に迎えに来た。
わたしのドレス姿を見て優しそうに目元を緩めた。
「ダイアナ、とても綺麗だ」そう言うとわたしの前に来て跪いて手を取りキスをした。
「一生大切にする、愛してる」
「当たり前だ!わたしのダイアナが綺麗なのは!大切にする?命をかけてダイアナを守り抜け!」
お祖父様は横からキース様に色々言い始めた。
キース様は何も言い返さず黙ってお祖父様の話を聞いていた。そして……
「わたしは命をかけてダイアナを守り抜きます。そして一生愛し続けます」
お祖父様はその言葉にキース様に文句を言うのをやめた。
「エレファが大切に守り抜いたダイアナをどうか幸せにしてやってくれ。ダイアナが我慢しないで泣ける場所を作ってやってくれ」
「わかりました、必ずお約束します」
◆ ◆ ◆
明日最終話です。
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