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キース様とは。
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ベッドに寝そべってウトウトしながらいろんなことを思い出していた。
お父様なんか嫌い。気持ちが悪い。
なのにどうして助けてしまったのだろう。
今まで愛情なんてもらったことなんてないのに。助けに来てくれたキース様には感謝したのにお父様には「どうして?」としか思えなかった。
でもふたりが必死にわたしを守ろうとしてくれている姿を見て、一人じっとしてなんていられなかった。
戦うことは出来なくても迷惑をかけるのは嫌だった。
せめて何かあった時に自分で逃げようと思っていた。二人の足手纏いにだけはなりたくなかった。
そう思ってこっそり二人を見ていたらお父様が圧されていたのがわかった。このままではお父様は負けてしまう。
そう思ったら思わずお父様の前にいて必死で剣を握っていた。
一応剣術は王妃様に少しは覚えていた方がいいわよと言われて、王宮で騎士の人に指導をしてもらっていた。
でも戦えるほどの技術はなく相手の剣を受けるのが必死で攻めるなんて出来なかった。
あの時キース様が助けてくれなかったらわたしはたぶんお父様と一緒に切られて死んでいただろう。
キース様は実家に帰りたくないわたしの気持ちをわかってくれて、ご自分の実家に連れてきてくれた。
そう言えばまだアシュア様にもデヴィッド様にも挨拶をしていなかった。
思わずベッドから起き上がり廊下に出ようとして自分の姿を思い出して寝巻きを脱ぎ捨てた。
そして先ほど着ていたドレスに着替えた。
キース様はたぶんお仕事に行かれているのだろうと言うのはわかる。昨日のこともあったから報告もあり今は忙しくされているのだろう。
わたしの所為でたくさんの人に迷惑をかけている。
自分でもどうすればいいのかよく分からない。
どれだけの人に迷惑をかけているのかこれからどうしたらいいのか。
それでもまずはこの屋敷の当主である二人に挨拶をしなくては……
毎月この屋敷には婚約者として顔を出しているので昼間お二人がいるであろう場所は大体わかる。
先ほどから顔を出してくれる侍女に頼んでお二人に会えるようにしてもらった。
「ダイアナ?もう起きても大丈夫なの?」
「医者には一度君が眠っている間に診てもらったんだが、落ち着いたらあとでもう一度診察するつもりだったんだ。とても疲れているんだから挨拶など余計なことを考えなくていい。今は何も考えずにゆっくりとしていなさい、わかったね?」
「あら?デヴィッドったら心配なくせにそんな言い方したら誤解されるわよ?ダイアナ、後の事はキースが全て動いてくれるわ。それまで何かと不便だけどここでゆっくりとしていて欲しいの」
「みなさんにご迷惑ばかりかけてすみません。わたしのことです、わたしが動かなければいけないと思うのです」
「うーん、確かにそうなんだけど、貴方では無理だわ。バーランド前公爵…貴方のお祖父様は息子に公爵の地位を譲ったくせにいまだにかなりの力を持っているの。さらにかなり有力な知人も多いの。簡単には解決できないのよ」
「ならばキース様も大変なことになるのでは?」
「ふふ、あの子なら大丈夫よ?王妃様も陛下も味方につけているし近衛騎士団長達もしっかり味方につけているから。あのクソジジイと戦うための準備はしているはずよ?」
「わたしは何も知らなかったのですね」
周りに守られているのに気がつきもせず辛い立場にいると思い込んでいた。自分が我慢をしたらそれでいいと思っていた。
「キースが何も言わないのが悪いのよ。しっかり守ってあげていれば今回のようなことは起きなかったはずよ?ダイアナはこの屋敷の中で今は守られていなさい。そして体も心も元気になって私たちの前で笑ってちょうだい」
アシュア様はそう言ってわたしを抱きしめて頭を撫でてくれた。
「よく頑張った、助かってよかったわ」
わたしはその言葉に何も言えなくてたくさん泣いた。
わたしが涙を流したのはいつだったかしら?
お母様が亡くなった時?お父様が再婚した時?
あの頃の記憶は朧げで今思い出してもあの頃の感情はよく分からない。ただ悲しくて悔しくて、気持ち悪くて。
たくさん泣いたはずなのによく覚えていなくて。
あの頃のわたしを抱きしめてあげたい。
アシュア様はそんなわたしの気持ちがわかったのか
「ダイアナもういいの、いっぱい泣きなさい。ずっと我慢していたのよね?分かっていても助けてあげられなかった私たち大人も悪いの。ごめんなさい、小さな貴女を守ってあげられなくて」
わたしはアシュア様の胸でひたすら泣き続けた。
お父様なんか嫌い。気持ちが悪い。
なのにどうして助けてしまったのだろう。
今まで愛情なんてもらったことなんてないのに。助けに来てくれたキース様には感謝したのにお父様には「どうして?」としか思えなかった。
でもふたりが必死にわたしを守ろうとしてくれている姿を見て、一人じっとしてなんていられなかった。
戦うことは出来なくても迷惑をかけるのは嫌だった。
せめて何かあった時に自分で逃げようと思っていた。二人の足手纏いにだけはなりたくなかった。
そう思ってこっそり二人を見ていたらお父様が圧されていたのがわかった。このままではお父様は負けてしまう。
そう思ったら思わずお父様の前にいて必死で剣を握っていた。
一応剣術は王妃様に少しは覚えていた方がいいわよと言われて、王宮で騎士の人に指導をしてもらっていた。
でも戦えるほどの技術はなく相手の剣を受けるのが必死で攻めるなんて出来なかった。
あの時キース様が助けてくれなかったらわたしはたぶんお父様と一緒に切られて死んでいただろう。
キース様は実家に帰りたくないわたしの気持ちをわかってくれて、ご自分の実家に連れてきてくれた。
そう言えばまだアシュア様にもデヴィッド様にも挨拶をしていなかった。
思わずベッドから起き上がり廊下に出ようとして自分の姿を思い出して寝巻きを脱ぎ捨てた。
そして先ほど着ていたドレスに着替えた。
キース様はたぶんお仕事に行かれているのだろうと言うのはわかる。昨日のこともあったから報告もあり今は忙しくされているのだろう。
わたしの所為でたくさんの人に迷惑をかけている。
自分でもどうすればいいのかよく分からない。
どれだけの人に迷惑をかけているのかこれからどうしたらいいのか。
それでもまずはこの屋敷の当主である二人に挨拶をしなくては……
毎月この屋敷には婚約者として顔を出しているので昼間お二人がいるであろう場所は大体わかる。
先ほどから顔を出してくれる侍女に頼んでお二人に会えるようにしてもらった。
「ダイアナ?もう起きても大丈夫なの?」
「医者には一度君が眠っている間に診てもらったんだが、落ち着いたらあとでもう一度診察するつもりだったんだ。とても疲れているんだから挨拶など余計なことを考えなくていい。今は何も考えずにゆっくりとしていなさい、わかったね?」
「あら?デヴィッドったら心配なくせにそんな言い方したら誤解されるわよ?ダイアナ、後の事はキースが全て動いてくれるわ。それまで何かと不便だけどここでゆっくりとしていて欲しいの」
「みなさんにご迷惑ばかりかけてすみません。わたしのことです、わたしが動かなければいけないと思うのです」
「うーん、確かにそうなんだけど、貴方では無理だわ。バーランド前公爵…貴方のお祖父様は息子に公爵の地位を譲ったくせにいまだにかなりの力を持っているの。さらにかなり有力な知人も多いの。簡単には解決できないのよ」
「ならばキース様も大変なことになるのでは?」
「ふふ、あの子なら大丈夫よ?王妃様も陛下も味方につけているし近衛騎士団長達もしっかり味方につけているから。あのクソジジイと戦うための準備はしているはずよ?」
「わたしは何も知らなかったのですね」
周りに守られているのに気がつきもせず辛い立場にいると思い込んでいた。自分が我慢をしたらそれでいいと思っていた。
「キースが何も言わないのが悪いのよ。しっかり守ってあげていれば今回のようなことは起きなかったはずよ?ダイアナはこの屋敷の中で今は守られていなさい。そして体も心も元気になって私たちの前で笑ってちょうだい」
アシュア様はそう言ってわたしを抱きしめて頭を撫でてくれた。
「よく頑張った、助かってよかったわ」
わたしはその言葉に何も言えなくてたくさん泣いた。
わたしが涙を流したのはいつだったかしら?
お母様が亡くなった時?お父様が再婚した時?
あの頃の記憶は朧げで今思い出してもあの頃の感情はよく分からない。ただ悲しくて悔しくて、気持ち悪くて。
たくさん泣いたはずなのによく覚えていなくて。
あの頃のわたしを抱きしめてあげたい。
アシュア様はそんなわたしの気持ちがわかったのか
「ダイアナもういいの、いっぱい泣きなさい。ずっと我慢していたのよね?分かっていても助けてあげられなかった私たち大人も悪いの。ごめんなさい、小さな貴女を守ってあげられなくて」
わたしはアシュア様の胸でひたすら泣き続けた。
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