上 下
21 / 76

ダイアナ16歳   誰が襲ったのか。②

しおりを挟む
 なんとか涙が止まって我に返るとなんだか恥ずかしくなって思いっきりソファに顔を埋めてしまった。

「ダイアナはずっと一人で頑張って来たものね。人に頼ることを知らないのは大人のせいね」

 そう言って王妃様はわたしの頬に両手を添えて優しく包んでくれた。

「だから恥ずかしがらなくていいのよ。さっきはジャスティアがごめんなさい。あの子は逆に甘えることしか知らないの、甘えることで人の愛情を試しているの、そんなことばかりしていても本当の愛情なんて貰えないのにね」

 どこか遠くを見ているような王妃様にわたしの心はズキンと痛んだ。

 あんなに心配してくれる人がお義母様でいてくれるのにジャスティア殿下はその愛情に気がつかないなんて、ほんと馬鹿だ。

「ジャスティア殿下がダイアナを襲ったとは考えられない。あの人は直情的でそんな回りくどいことはしない。俺のことを気に入ってくれているけど、君との婚約を脅すことはしないと思う。そんなことをするより陛下に頼んで自分と婚約をしたいと言い出すはずだ。
 ま、今回は君をお茶会に呼んで嫌味を言おうとしたみたいだけど」

 ーー確かに、隠れてするわけでもなく堂々と呼びしたもの。

「あらキース、ジャスティアのことよく見ているわね。あの子はキースを確かに気に入っているわ。でもそれはわたしのものだったから欲しがったと思うの」

「王妃様の?」
 わたしは意味がわからなくて王妃様を見た。

「あの子はね、昔からわたしのものを欲しがるのよ。側近でも侍女でも、宝石や小物もね」
 思い出しながら苦い顔をしている王妃様。

 ーーああ、本当は王妃様の愛情が欲しいのね。

「では誰がダイアナが乗っている馬車を襲ったのでしょう?報告では剣にしっかり覚えがある者で戦いにも慣れていると言ってました。顔を布で隠していたので人相はわかりませんがたぶん騎士か元騎士ではないかと言っておりました」

「報告したのはうちの護衛だったのね」

「違うよ、俺がつけた侯爵家の騎士達だよ」

「あの騎士さん達はキース様の?」

「うん、守ってあげられなくてごめん。そんな弱い騎士をつけたつもりはなかったんだけど、相手が上手だった。今度はしっかり守ってみせるから怖い思いをさせてごめん。でもね出来れば俺のことで脅されたんだから俺のこと頼って欲しかった。一応婚約者なんだ。仮とはいえ君を2年間守ると約束をしたんだ」

「心配かけてごめんなさい」

「王妃様、すみません。今回守ってあげられなくて、次はないようにしますので」

「犯人の目処は?」

「ジャスティア様ではないと確認が取れましたので……ダイアナの両親かとも思いましたが、敢えてそんなことする必要はないと思います。屋敷であの二人ならはっきり本人に言えるのですから。俺との婚約などやめてしまえと」

「確かに、ダニエルならそんな回りくどいことしないわ、それにミリアは頭がいい子だもの、バレるようなことはしない。だったらこんなことして得するのは?」

 わたしは誰なのかわからなかった。

「………この話はいったん保留にしましょう、ちょっと調べたいことがあるから」

「王妃様がそう仰るならわかりました」
 キース様はそう言うと、それ以上この話はしなかった。

 それからはわたしが外出する時は護衛の数が2人から4人へと増えていた。

 お父様達は興味がなくそのことに触れることもわたしをもちろん心配して声をかけてもらえることもなかった。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私があなたを好きだったころ

豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」 ※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。 ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。 え?イザックの婚約者って私でした。よね…? 二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。 ええ、バッキバキに。 もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

私の知らぬ間に

豆狸
恋愛
私は激しい勢いで学園の壁に叩きつけられた。 背中が痛い。 私は死ぬのかしら。死んだら彼に会えるのかしら。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

処理中です...