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ダイアナ16歳 ほんと疲れる。
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馬車は中からしっかり鍵はかけられているが、剣や斧で扉を無理やり壊されないとも限らない。
後ろには護衛騎士もいるはずなのに……
助けに来ないと言うことは怪我を負ったかもしくは亡くなっているのか。
「おい開けろ!」
「扉をぶっ壊すぞ」
「オラァ!」
体当たりしてくる男達。
笑い声も聞こえる。
ーーわたしはどうなるのだろう?
いつもなら強気で負けないわ!と思っているのに流石に今の状況は恐怖でしかない。
扉をバンバン叩く音が大きくて、激しくて、どうしていいのかわからなかった。
何分経ったのだろう。
数分?数十分?
時間の感覚がわからない中思考が停止していた。
でも扉を壊そうとはしない男達は、外から大きな声で言った。
「婚約解消を自分からするんだ!次は命はないぞ」
「お前は大人しく息を殺すように生きていればいいんだ!」
何人かがそう言うと扉をガンガン蹴って去っていった。
しばらく馬車の中で固まったまま動けずにいた。
「…………ダイアナ様!大丈夫ですか?」
御者の心配する声が聞こえて来た。
「え、ええ」
外が静かになっているのに気がついたわたしは恐る恐る扉を開けた。
外に出るとここは街から少し離れたひと気のない道だった。御者は殴られた後があり左頬が腫れていた。
わたしの護衛達は殴られて縄で縛られて転がされてはいたけど酷い出血や大怪我はないようだった。
わたしは脅されたみたいだ。
命がない?婚約解消?
一体誰が?まさか王女であるジャスティア殿下?
まさかね。殿下なら本人がわたしの前にやって来て『婚約解消しなさい』と堂々と命令する気がする。
でもそれなら誰?
お父様ならわたしを襲うことなんてしない。ハッキリとわたしに文句と命令をするはずだ。
倒れている騎士二人に近づき縄を解いた。
「二人とも大丈夫?犯人の顔は覚えている?」
「それが……申し訳ありません。顔を布で隠していてわかりませんでした。ただ……かなりの剣の使い手で戦い慣れている者でした」
「そう……」
お父様に報告しても守ってはくれないだろう。
公爵家に帰らず王宮にあるわたしの部屋に帰ることにした。
王妃様の宮にある女官達が寝泊まりする部屋の一室をわたしにも当てがってくれている。
そこには王妃様が用意してくださったドレスや宝石、普段着などが置かれている。
「必要なものだけはこちらで準備するわ」
と言ってくれるのだけどやはり貰うのは気が引ける。
だから本当に最低限のものだけをありがたく頂いた。
あと二年したらキース様との婚約は解消される。そのあとわたしはたぶん公爵家を出るだろう。必要なのはお金と普段着だけ。
豪華なドレスなんて興味もない。
ただ人前で着る服がなさすぎて、いざという時困ると改めて感じてからは、王妃様やおじいさまの好意をありがたく受け入れることにした。
ーーさすがにドレスを持っていない令嬢なんて表には出られないものね。
王宮の部屋に入ると、気が張っていたのか震えが止まらない。
そんな時に最悪な人が呼び出しをして来た。
今日はキース様がお休みの日。
それを狙ったのか……
「ジャスティア殿下がお茶をしたいと申しております」
ーーこれは否は無理ですよね?
「すぐにでしょうか?」
「はい、お茶の用意をしてローズガーデンの四阿でお待ちしております」
ーー絶対まだ居るわけないわよね?
なんて言えるわけもなく
「すぐに着替えてお伺いいたします」
と言って王女付きの侍女を追い出した。
扉に手を置いて額をゴンっと打ち付けて大きな溜息。
「はあー」
何を言われるのか、考えただけで頭が痛い。
さっきの馬車での出来事がまだ記憶に残っている中、着替えは一人でできないので仲の良い王妃様付き侍女の方にお願いして王妃様に頂いたドレスに着替えた。
「さっ、行ってこよう!」
菫色のシンプルなドレスに長い髪の毛はキース様にあった時のまま、おろしてハーフアップにしてもらった。前髪は先ほどおでこを思いっきり打ち付けたので、赤くなったおでこを隠すために前髪をしっかり下ろした。
廊下を歩いて王妃宮を出て庭園へと歩いていると、目の前にとても美しく着飾った王妃様がわたしを見て微笑んだ。
「ダイアナ、わたくしも一緒にお茶を楽しもうと思っているの」
後ろには護衛騎士もいるはずなのに……
助けに来ないと言うことは怪我を負ったかもしくは亡くなっているのか。
「おい開けろ!」
「扉をぶっ壊すぞ」
「オラァ!」
体当たりしてくる男達。
笑い声も聞こえる。
ーーわたしはどうなるのだろう?
いつもなら強気で負けないわ!と思っているのに流石に今の状況は恐怖でしかない。
扉をバンバン叩く音が大きくて、激しくて、どうしていいのかわからなかった。
何分経ったのだろう。
数分?数十分?
時間の感覚がわからない中思考が停止していた。
でも扉を壊そうとはしない男達は、外から大きな声で言った。
「婚約解消を自分からするんだ!次は命はないぞ」
「お前は大人しく息を殺すように生きていればいいんだ!」
何人かがそう言うと扉をガンガン蹴って去っていった。
しばらく馬車の中で固まったまま動けずにいた。
「…………ダイアナ様!大丈夫ですか?」
御者の心配する声が聞こえて来た。
「え、ええ」
外が静かになっているのに気がついたわたしは恐る恐る扉を開けた。
外に出るとここは街から少し離れたひと気のない道だった。御者は殴られた後があり左頬が腫れていた。
わたしの護衛達は殴られて縄で縛られて転がされてはいたけど酷い出血や大怪我はないようだった。
わたしは脅されたみたいだ。
命がない?婚約解消?
一体誰が?まさか王女であるジャスティア殿下?
まさかね。殿下なら本人がわたしの前にやって来て『婚約解消しなさい』と堂々と命令する気がする。
でもそれなら誰?
お父様ならわたしを襲うことなんてしない。ハッキリとわたしに文句と命令をするはずだ。
倒れている騎士二人に近づき縄を解いた。
「二人とも大丈夫?犯人の顔は覚えている?」
「それが……申し訳ありません。顔を布で隠していてわかりませんでした。ただ……かなりの剣の使い手で戦い慣れている者でした」
「そう……」
お父様に報告しても守ってはくれないだろう。
公爵家に帰らず王宮にあるわたしの部屋に帰ることにした。
王妃様の宮にある女官達が寝泊まりする部屋の一室をわたしにも当てがってくれている。
そこには王妃様が用意してくださったドレスや宝石、普段着などが置かれている。
「必要なものだけはこちらで準備するわ」
と言ってくれるのだけどやはり貰うのは気が引ける。
だから本当に最低限のものだけをありがたく頂いた。
あと二年したらキース様との婚約は解消される。そのあとわたしはたぶん公爵家を出るだろう。必要なのはお金と普段着だけ。
豪華なドレスなんて興味もない。
ただ人前で着る服がなさすぎて、いざという時困ると改めて感じてからは、王妃様やおじいさまの好意をありがたく受け入れることにした。
ーーさすがにドレスを持っていない令嬢なんて表には出られないものね。
王宮の部屋に入ると、気が張っていたのか震えが止まらない。
そんな時に最悪な人が呼び出しをして来た。
今日はキース様がお休みの日。
それを狙ったのか……
「ジャスティア殿下がお茶をしたいと申しております」
ーーこれは否は無理ですよね?
「すぐにでしょうか?」
「はい、お茶の用意をしてローズガーデンの四阿でお待ちしております」
ーー絶対まだ居るわけないわよね?
なんて言えるわけもなく
「すぐに着替えてお伺いいたします」
と言って王女付きの侍女を追い出した。
扉に手を置いて額をゴンっと打ち付けて大きな溜息。
「はあー」
何を言われるのか、考えただけで頭が痛い。
さっきの馬車での出来事がまだ記憶に残っている中、着替えは一人でできないので仲の良い王妃様付き侍女の方にお願いして王妃様に頂いたドレスに着替えた。
「さっ、行ってこよう!」
菫色のシンプルなドレスに長い髪の毛はキース様にあった時のまま、おろしてハーフアップにしてもらった。前髪は先ほどおでこを思いっきり打ち付けたので、赤くなったおでこを隠すために前髪をしっかり下ろした。
廊下を歩いて王妃宮を出て庭園へと歩いていると、目の前にとても美しく着飾った王妃様がわたしを見て微笑んだ。
「ダイアナ、わたくしも一緒にお茶を楽しもうと思っているの」
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