7 / 76
キース様の言葉には…
しおりを挟む
王宮に着くと王妃様に会いに行った。
約束の時間までもう少し……
二人で王宮内の庭園で時間を潰した。
彼のエスコートで庭園を歩いて回る。
この庭園には外国の珍しい花々がたくさん植えられている。たくさんの庭師さんが丹精込めて手入れをしているので何度来ても飽きることのない庭園だ。
何ヶ所かに噴水があり四阿が設けられている。
疲れたら手彫りで作られたベンチに座ることが出来るようにいろんな所に置かれている。
ーーこのベンチ1個が多分官僚の人の一月分の給料くらいだと王妃様が笑いながら教えてくれたけど……
何十個もある。もちろん重たくて簡単には盗むことはできないけど売ったら私の家出のためのお金になるかしら?なんて思ったことがあった。
もちろん数年前なのでまだ未成年。
可愛い妄想だった。
こんなことを考えながらキース様の手を取り歩いていると、少し離れたところから鋭い視線や冷たい視線を浴びせられた。
キース様にも聞こえてはいるようだ。
「あの子がキース様の婚約者らしいわ」
「父親に見捨てられた公爵令嬢よ、あの黒髪に翠色の瞳では仕方がないわよね。まるで呪われている娘みたいだもの」
二人の令嬢がコソコソと話しているのが聞こえる。
言われ慣れているわたしにはなんとも思わないけど、隣にいるキース様には不愉快に感じるかもしれない。
そう思っているとキース様が二人の令嬢の方を向いた。
何も言わずただ二人を見た。
二人の令嬢はキース様に見られ、慌てて話すのをやめた。それでもじっと見られているのでどうしていいのか分からずタジタジとしている。
「ダイアナはとても綺麗な髪をしていると僕は思っています。彼女の瞳に僕を映してもらえることを光栄だと思っていますよ」
キース様は優しく二人に微笑んだ。
すると顔を真っ赤にして「し、失礼します」と言って逃げるように二人は去っていった。
「僕のせいでダイアナ嬢に嫌な思いをさせてすまなかった」
キース様がすまなそうにわたしに謝る。
「別にキース様の所為ではありません。わたしのこの姿が悪い意味で目立つので仕方ありません。慣れていますので気になさらないでください」
「慣れないで!」
キース様が突然大きな声で言うとわたしの肩を掴んだ。
「いいかい?君は諦めが早い。まだ16歳だ。好きなことだってしていい、本当なら甘えてもまだいい歳なんだ。そんな諦めきった顔をして過ごすな」
わたしはキース様の言葉に驚き頷くこともできなかった。
ーー諦めきった顔?
多分諦めきったのではなく諦めている。
わたしのような家庭はたくさんある。父親に愛人がいる人や第二夫人がいる人、冷めきった家庭で育った子供達もたくさんいる。
そんな中の一人なだけ。
いつもそう思って過ごしていた。
ただキース様のご両親のように温かく仲の良い夫婦に出会うと、隠している傷を抉られてズキズキと痛み出すだけ。
ご両親はキース様を愛しているのが見ているだけでわかってしまう。……羨ましいと思わない(ようにしている)ただ……こんな温かい家庭が貴族の中にもあるのだと現実を知らされるだけ。
ーー知りたくないし認めたくないけど。
約束の時間までもう少し……
二人で王宮内の庭園で時間を潰した。
彼のエスコートで庭園を歩いて回る。
この庭園には外国の珍しい花々がたくさん植えられている。たくさんの庭師さんが丹精込めて手入れをしているので何度来ても飽きることのない庭園だ。
何ヶ所かに噴水があり四阿が設けられている。
疲れたら手彫りで作られたベンチに座ることが出来るようにいろんな所に置かれている。
ーーこのベンチ1個が多分官僚の人の一月分の給料くらいだと王妃様が笑いながら教えてくれたけど……
何十個もある。もちろん重たくて簡単には盗むことはできないけど売ったら私の家出のためのお金になるかしら?なんて思ったことがあった。
もちろん数年前なのでまだ未成年。
可愛い妄想だった。
こんなことを考えながらキース様の手を取り歩いていると、少し離れたところから鋭い視線や冷たい視線を浴びせられた。
キース様にも聞こえてはいるようだ。
「あの子がキース様の婚約者らしいわ」
「父親に見捨てられた公爵令嬢よ、あの黒髪に翠色の瞳では仕方がないわよね。まるで呪われている娘みたいだもの」
二人の令嬢がコソコソと話しているのが聞こえる。
言われ慣れているわたしにはなんとも思わないけど、隣にいるキース様には不愉快に感じるかもしれない。
そう思っているとキース様が二人の令嬢の方を向いた。
何も言わずただ二人を見た。
二人の令嬢はキース様に見られ、慌てて話すのをやめた。それでもじっと見られているのでどうしていいのか分からずタジタジとしている。
「ダイアナはとても綺麗な髪をしていると僕は思っています。彼女の瞳に僕を映してもらえることを光栄だと思っていますよ」
キース様は優しく二人に微笑んだ。
すると顔を真っ赤にして「し、失礼します」と言って逃げるように二人は去っていった。
「僕のせいでダイアナ嬢に嫌な思いをさせてすまなかった」
キース様がすまなそうにわたしに謝る。
「別にキース様の所為ではありません。わたしのこの姿が悪い意味で目立つので仕方ありません。慣れていますので気になさらないでください」
「慣れないで!」
キース様が突然大きな声で言うとわたしの肩を掴んだ。
「いいかい?君は諦めが早い。まだ16歳だ。好きなことだってしていい、本当なら甘えてもまだいい歳なんだ。そんな諦めきった顔をして過ごすな」
わたしはキース様の言葉に驚き頷くこともできなかった。
ーー諦めきった顔?
多分諦めきったのではなく諦めている。
わたしのような家庭はたくさんある。父親に愛人がいる人や第二夫人がいる人、冷めきった家庭で育った子供達もたくさんいる。
そんな中の一人なだけ。
いつもそう思って過ごしていた。
ただキース様のご両親のように温かく仲の良い夫婦に出会うと、隠している傷を抉られてズキズキと痛み出すだけ。
ご両親はキース様を愛しているのが見ているだけでわかってしまう。……羨ましいと思わない(ようにしている)ただ……こんな温かい家庭が貴族の中にもあるのだと現実を知らされるだけ。
ーー知りたくないし認めたくないけど。
283
お気に入りに追加
4,161
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私があなたを好きだったころ
豆狸
恋愛
「……エヴァンジェリン。僕には好きな女性がいる。初恋の人なんだ。学園の三年間だけでいいから、聖花祭は彼女と過ごさせてくれ」
※1/10タグの『婚約解消』を『婚約→白紙撤回』に訂正しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
寡黙な貴方は今も彼女を想う
MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。
ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。
シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。
言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。
※設定はゆるいです。
※溺愛タグ追加しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】真実の愛に目覚めたと婚約解消になったので私は永遠の愛に生きることにします!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢のアリスティアは婚約者に真実の愛を見つけたと告白され婚約を解消を求められる。
恋する相手は平民であり、正反対の可憐な美少女だった。
アリスティアには拒否権など無く、了承するのだが。
側近を婚約者に命じ、あげくの果てにはその少女を侯爵家の養女にするとまで言われてしまい、大切な家族まで侮辱され耐え切れずに修道院に入る事を決意したのだが…。
「ならば俺と永遠の愛を誓ってくれ」
意外な人物に結婚を申し込まれてしまう。
一方真実の愛を見つけた婚約者のティエゴだったが、思い込みの激しさからとんでもない誤解をしてしまうのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる