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婚約者
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王妃様はわたしを見てにっこりと微笑むと、後ろに控えていた近衛騎士に声をかけた。
「キース・ネヴァンス、貴方がダイアナの婚約者になりなさい」
「「は?」」
わたしとネヴァンス様は同時に声を出した。
ーーな、何を言い出すのかしら?
ネヴァンス様と言えばわたしでも噂は知っている。
侯爵家の次男で、眉目秀麗。婚約者がまだいない彼は令嬢達の間での人気が凄まじかった。
彼が鍛錬場で訓練に励めば令嬢達や侍女達、女官までもが熱い視線で見つめる。
王妃様の護衛として後ろに控えているだけなのにみんなが振り返る。そんな人と婚約?
反論できない二人を無視して王妃様は続けて話し出した。
「そうね、期限はダイアナが卒業するまで!お互い好きな人が出来たら婚約は解消していいわ、わかったかしら?」
「むりむりむり!おばさま!なにをとつぜんいいだすのですか?」
わたしは焦って久しぶりに「おばさま」呼びをしてしまった。
慌てて手で口を塞いだが王妃様はしっかりと聞いていた。
「あら?久しぶりに「おばさま」と呼んでくれたのね?嬉しいわ。
ダイアナは父親の言いなりにはなりたくない。そこにいるキースは近衛騎士として仕事を頑張りたいのにうるさい令嬢達の攻撃に辟易しているのよね?」
おもちゃを見つけたイタズラ好きの子供のような顔つきで
「ね?ちょうどいいでしょう?」
と嬉しそうに言った。
ーーやめて!やめて!そんな可愛いフリをしてもわたしは頷かないし返事もしない!
「王妃様は、彼女と婚約をすれば仕事が捗るというのですね?」
キース・ネヴァンスは顎に手を置いてしばらく考え込んでいた。
「ふふ、いい考えでしょう?キースがいくらこの部屋に控えていても興味を示さないダイアナなら貴方の婚約者にピッタリだと思わない?」
「確かに……」
「確かに。ではないですよね?婚約するってはい、そうですかで出来るわけではありませんよね?
しっかり考えましょう」
わたしはほぼ話したことがないネヴァンス様に突っ込みを入れたのに無視された。
「あら?ダイアナはキースじゃ不満なの?キースはすごくモテるんだけど、クソがつくほど真面目で女遊びは…たぶんあまりしないと思うわ、たぶん優良物件だと思うのよ」
ーーその、「たぶん」は一体なんなの?わたしはヒクヒクと顔が引き攣りながらもなんとか笑顔でいるしかなかった。
「王妃様、一旦この話を実家のほうに持ち帰らせていただいても宜しいでしょうか?」
「もちろんよ、ダイアナの方の実家にはわたしから話を入れておくわ、いややっぱり主人から話してもらいましょう。そうすれば断ることはないでしょうからね」
ーー主人って国王でしょう?いくら頑固で自分勝手なお父様でも絶対断れないじゃない、て言うかそれお父様に話したらネヴァンス様ももう断れないくない?
なんだかどんどん勝手に話が進んでいくのをわたしはひたすら黙って聞いていた。
「キース・ネヴァンス、貴方がダイアナの婚約者になりなさい」
「「は?」」
わたしとネヴァンス様は同時に声を出した。
ーーな、何を言い出すのかしら?
ネヴァンス様と言えばわたしでも噂は知っている。
侯爵家の次男で、眉目秀麗。婚約者がまだいない彼は令嬢達の間での人気が凄まじかった。
彼が鍛錬場で訓練に励めば令嬢達や侍女達、女官までもが熱い視線で見つめる。
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反論できない二人を無視して王妃様は続けて話し出した。
「そうね、期限はダイアナが卒業するまで!お互い好きな人が出来たら婚約は解消していいわ、わかったかしら?」
「むりむりむり!おばさま!なにをとつぜんいいだすのですか?」
わたしは焦って久しぶりに「おばさま」呼びをしてしまった。
慌てて手で口を塞いだが王妃様はしっかりと聞いていた。
「あら?久しぶりに「おばさま」と呼んでくれたのね?嬉しいわ。
ダイアナは父親の言いなりにはなりたくない。そこにいるキースは近衛騎士として仕事を頑張りたいのにうるさい令嬢達の攻撃に辟易しているのよね?」
おもちゃを見つけたイタズラ好きの子供のような顔つきで
「ね?ちょうどいいでしょう?」
と嬉しそうに言った。
ーーやめて!やめて!そんな可愛いフリをしてもわたしは頷かないし返事もしない!
「王妃様は、彼女と婚約をすれば仕事が捗るというのですね?」
キース・ネヴァンスは顎に手を置いてしばらく考え込んでいた。
「ふふ、いい考えでしょう?キースがいくらこの部屋に控えていても興味を示さないダイアナなら貴方の婚約者にピッタリだと思わない?」
「確かに……」
「確かに。ではないですよね?婚約するってはい、そうですかで出来るわけではありませんよね?
しっかり考えましょう」
わたしはほぼ話したことがないネヴァンス様に突っ込みを入れたのに無視された。
「あら?ダイアナはキースじゃ不満なの?キースはすごくモテるんだけど、クソがつくほど真面目で女遊びは…たぶんあまりしないと思うわ、たぶん優良物件だと思うのよ」
ーーその、「たぶん」は一体なんなの?わたしはヒクヒクと顔が引き攣りながらもなんとか笑顔でいるしかなかった。
「王妃様、一旦この話を実家のほうに持ち帰らせていただいても宜しいでしょうか?」
「もちろんよ、ダイアナの方の実家にはわたしから話を入れておくわ、いややっぱり主人から話してもらいましょう。そうすれば断ることはないでしょうからね」
ーー主人って国王でしょう?いくら頑固で自分勝手なお父様でも絶対断れないじゃない、て言うかそれお父様に話したらネヴァンス様ももう断れないくない?
なんだかどんどん勝手に話が進んでいくのをわたしはひたすら黙って聞いていた。
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