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幼馴染が大切ならわたしとは離縁しましょう。
ああ、やっぱり。
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思いっきり転んだわたしに扉の向こうでクスッと笑ったのは何故かアデリーナだった。
「やだぁ、クスクス。大丈夫ですかぁ?」
今日はダレンとの婚約のため両家の顔合わせ。大切な日なのに?
いくら幼馴染とはいえ何故彼女が?
転んで座り込んでいると犬が嬉しそうに尻尾を振って私の顔をペロペロと舐め始めた。
「やめなさい!ジャック!」
ダレンの父親が犬を叱る。慌てて使用人がわたしから犬を引き離した。
わたしは父の手でなんとか立ち上がったけど、確かに笑われても仕方ないくらい無惨にワンピースが汚れていた。
ついでにセットされた髪は犬のジャックによってぐしゃぐしゃにされた。
「…………わたし、帰ってもいいかしら?」
情けないやら恥ずかしいやら。どうせこのまま顔合わせなんてできないし、それに、アデリーナがここに居るだけでなんだか気分が悪い。
何故居る?何故わたしを見て笑う?何故ここにダレンは居ないの?
「ミ、ミズナ、帰るって……それは…」
父は戸惑いながらもわたしの姿をまじまじと見て「今日はとりあえず帰ろう」と言ってくれた。
父がダレンの父親にとりあえずまた次回と言おうとした時、ダレンが姿を現した。
ダレンは普段着で何事かと言った感じで出てきた。
もちろんアデリーナがダレンの横にちょこんと寄り添うように立って今あったことを説明していた。
なんなんだ、この風景。
わたし、こんなところに嫁ぐの?政略とはいえ?
胃の中から湧き上がる沸々とした怒り。
「ミズナ、着替えならうちにあるから!アデリーナ、君の服、何かミズナに貸してやって」
「ええ?わたしの服?」
とっても嫌そうにアデリーナが言う。
「結構です!」
「だけど、そんな格好で……」
彼にこれ以上話しかけてもらいたくなかった。
「政略結婚なので、次回は結婚式で会いましょう」
わたしはくるりときた道を歩き、さっさと乗ってきた馬車に乗った。
まだ馬車が移動していなかったのでよかった。
「待って!」
追いかけてきたダレンに顔も見ず背を向けたまま一言。
「両家の顔合わせにまで大切な幼馴染を参加させるなんて、やっぱり頭の中が優秀な人は、凡人では考えられない常識を持っているのね」
「ち、違うんだ」
彼が何か言い訳をしようとしたけど、
「愛や恋なんてわたし達の中にはないから。好きなだけ他の人とすればいいわ」
と冷たく告げた。
そう所詮政略なのだから。
そして半年後、向こうからどんなに誘いがあろうと一切会うことなく結婚式を挙げた。
ウエディングドレスは母の使ったものをリメイクしてもらった。
どうでもよかったから。お金なんてかける必要はない。
お互いの商売がそれなりにうまくいけば、離縁すればいい。
わたしは白い結婚を望み、ダレンと結婚した。
たくさんの人が参加してくれた結婚式、みんなに祝福された。
わたしはとても幸せそうな笑顔をいっぱい振りまいた。
友人達は驚いていたけど羨ましがっていた。
わたしとダレンの新居にはたくさんの友人が遊びにきた。
もちろんそこにはアデリーナを含め、ダレンのそばにいつもいた女の子達も遊びに来る。
だからわたしも仲の良い幼馴染の男友達を呼ぶことにした。
我が家は腕力のあるおじさん達がたくさん働いていた。そこの子供達とはいつも野山を駆け回って遊んでいた。
そこにはもちろん友情しかなかった。男と女にだって友人関係は成立する。
彼が女の子達と仲が良いのと同じで、わたしにも仲の良い男友達はいる。
ただ、向こうは侍らせている感じだけど、わたしの男友達はどう見てもわたしを男としか見ていないし、扱わない。
「ミズナ、今度山に行ってみんなで狩りに行こうぜ」
「みんなで飲み会するんだけど、ミズナの友達呼んでくれよ、お前の友達可愛い子が多いから」
「ハットが結婚するらしいぜ。ミズナ、みんなでお祝いに行こう」
なんて感じでどこにも色気や異性としての付き合いなんてない。
だけどダレンのそばによる女性達は
「ダレン、今日のわたしの服どうかしら?」
「ねぇ、今度の劇、とっても人気があるらしいの。一緒に行かない?」
「もう暗くなってきたわ。送ってくれないかしら?」
なんて、嫁の前で言うセリフじゃないだろう?って感じの話をフツーにしてる。
ダレンは「そうだね」とニコニコして返事をする。
アデリーナは当たり前のように我が家に遊びにきてはダレンと楽しそうに話している。
わたし?
わたしはそれを見て「お好きにどうぞ」って感じで放ってる。
結婚してひと月。
寝室はもちろん別。互いにあまり顔を合わせない。と言うかわたしが避けてる。
わたしの仕事は商会での事務。
ダレンの母、セリナさんにくっついて仕事を教わっている。仕事中はお義母さんとは呼ばないでセリナさんと呼んでいる。
「今度の休みは二人で出かけるの?」
「いえ、わたしは友達と狩りに行くので。ダレンはアデリーナと美術館に行くと言ってましたよ?」
なんでもないことのように返事をした。
「ミズナとダレンは……」
と言って、ため息をついてはいても、それ以上夫婦のことには首を突っ込まないでいてくれる。
政略結婚なんてこんなものでしょう。
◆ ◆ ◆
次からは二人の結婚生活です。
「やだぁ、クスクス。大丈夫ですかぁ?」
今日はダレンとの婚約のため両家の顔合わせ。大切な日なのに?
いくら幼馴染とはいえ何故彼女が?
転んで座り込んでいると犬が嬉しそうに尻尾を振って私の顔をペロペロと舐め始めた。
「やめなさい!ジャック!」
ダレンの父親が犬を叱る。慌てて使用人がわたしから犬を引き離した。
わたしは父の手でなんとか立ち上がったけど、確かに笑われても仕方ないくらい無惨にワンピースが汚れていた。
ついでにセットされた髪は犬のジャックによってぐしゃぐしゃにされた。
「…………わたし、帰ってもいいかしら?」
情けないやら恥ずかしいやら。どうせこのまま顔合わせなんてできないし、それに、アデリーナがここに居るだけでなんだか気分が悪い。
何故居る?何故わたしを見て笑う?何故ここにダレンは居ないの?
「ミ、ミズナ、帰るって……それは…」
父は戸惑いながらもわたしの姿をまじまじと見て「今日はとりあえず帰ろう」と言ってくれた。
父がダレンの父親にとりあえずまた次回と言おうとした時、ダレンが姿を現した。
ダレンは普段着で何事かと言った感じで出てきた。
もちろんアデリーナがダレンの横にちょこんと寄り添うように立って今あったことを説明していた。
なんなんだ、この風景。
わたし、こんなところに嫁ぐの?政略とはいえ?
胃の中から湧き上がる沸々とした怒り。
「ミズナ、着替えならうちにあるから!アデリーナ、君の服、何かミズナに貸してやって」
「ええ?わたしの服?」
とっても嫌そうにアデリーナが言う。
「結構です!」
「だけど、そんな格好で……」
彼にこれ以上話しかけてもらいたくなかった。
「政略結婚なので、次回は結婚式で会いましょう」
わたしはくるりときた道を歩き、さっさと乗ってきた馬車に乗った。
まだ馬車が移動していなかったのでよかった。
「待って!」
追いかけてきたダレンに顔も見ず背を向けたまま一言。
「両家の顔合わせにまで大切な幼馴染を参加させるなんて、やっぱり頭の中が優秀な人は、凡人では考えられない常識を持っているのね」
「ち、違うんだ」
彼が何か言い訳をしようとしたけど、
「愛や恋なんてわたし達の中にはないから。好きなだけ他の人とすればいいわ」
と冷たく告げた。
そう所詮政略なのだから。
そして半年後、向こうからどんなに誘いがあろうと一切会うことなく結婚式を挙げた。
ウエディングドレスは母の使ったものをリメイクしてもらった。
どうでもよかったから。お金なんてかける必要はない。
お互いの商売がそれなりにうまくいけば、離縁すればいい。
わたしは白い結婚を望み、ダレンと結婚した。
たくさんの人が参加してくれた結婚式、みんなに祝福された。
わたしはとても幸せそうな笑顔をいっぱい振りまいた。
友人達は驚いていたけど羨ましがっていた。
わたしとダレンの新居にはたくさんの友人が遊びにきた。
もちろんそこにはアデリーナを含め、ダレンのそばにいつもいた女の子達も遊びに来る。
だからわたしも仲の良い幼馴染の男友達を呼ぶことにした。
我が家は腕力のあるおじさん達がたくさん働いていた。そこの子供達とはいつも野山を駆け回って遊んでいた。
そこにはもちろん友情しかなかった。男と女にだって友人関係は成立する。
彼が女の子達と仲が良いのと同じで、わたしにも仲の良い男友達はいる。
ただ、向こうは侍らせている感じだけど、わたしの男友達はどう見てもわたしを男としか見ていないし、扱わない。
「ミズナ、今度山に行ってみんなで狩りに行こうぜ」
「みんなで飲み会するんだけど、ミズナの友達呼んでくれよ、お前の友達可愛い子が多いから」
「ハットが結婚するらしいぜ。ミズナ、みんなでお祝いに行こう」
なんて感じでどこにも色気や異性としての付き合いなんてない。
だけどダレンのそばによる女性達は
「ダレン、今日のわたしの服どうかしら?」
「ねぇ、今度の劇、とっても人気があるらしいの。一緒に行かない?」
「もう暗くなってきたわ。送ってくれないかしら?」
なんて、嫁の前で言うセリフじゃないだろう?って感じの話をフツーにしてる。
ダレンは「そうだね」とニコニコして返事をする。
アデリーナは当たり前のように我が家に遊びにきてはダレンと楽しそうに話している。
わたし?
わたしはそれを見て「お好きにどうぞ」って感じで放ってる。
結婚してひと月。
寝室はもちろん別。互いにあまり顔を合わせない。と言うかわたしが避けてる。
わたしの仕事は商会での事務。
ダレンの母、セリナさんにくっついて仕事を教わっている。仕事中はお義母さんとは呼ばないでセリナさんと呼んでいる。
「今度の休みは二人で出かけるの?」
「いえ、わたしは友達と狩りに行くので。ダレンはアデリーナと美術館に行くと言ってましたよ?」
なんでもないことのように返事をした。
「ミズナとダレンは……」
と言って、ため息をついてはいても、それ以上夫婦のことには首を突っ込まないでいてくれる。
政略結婚なんてこんなものでしょう。
◆ ◆ ◆
次からは二人の結婚生活です。
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