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嫌です。別れません
29話
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目覚めてから半年。
今は穏やかな時間が過ぎている。
ただ、あんなに元気だったはずの魔女さんが時おり『疲れた疲れた』と言って身体を休めることが増えた。
御年300年を超えている魔女さんはわたしに寿命を与えてしまったので『あたしの人生もあと僅かだ』と言い出した。
「魔女さん、わたしのせいでごめんなさい」
何度も謝った。でも謝って済むことではない。彼女の命を奪ったのだから。
そしてこの辛い思いをリオはずっとしてきたのだと思うと、短絡的にしか考えていなかったわたしはなんて酷い人なんだと今更ながらに感じてしまう。
「マナ、あたしゃ長生きし過ぎたんだ。こんな体調だけどあたしの寿命はあんた達が死ぬ時と同じくらいさ。ちょうどいいくらいあんた達と笑い合いながら生きていって、あんた達と同じくらいに死ねる。
やっと寂しいお別れをしなくて済むんだ。
あたしゃ幸せだよ」
普段素直じゃない魔女さんがポロッと本音を言ってくれた。
どんなに長生きしても幸せではなかったのかもしれない。仲の良い人たちがどんどん先に死んでしまうのを見続けてきた魔女さんの寂しさや孤独に触れた気がした。
「ふふっ、じゃあ、魔女さん。わたしの癒しの力で魔女さんの体調を見守りつつ一緒にあともうしばらく長生きして一緒に死にましょうね?」
わたしが笑いながらそう言うと、魔女さんも笑いながら言った。
「あたしの名前はソフィアだよ」
「ソフィア様………素敵なお名前ですね?これからはそう呼んでも?」
「やめておくれ。その名前で呼ばれていたのはずっとずっと大昔、あたしの夫や両親、家族たちさ。今はもう忘れられた名前だ。ただ覚えて欲しかったんだ。あたしの名前をこの世で一人だけでも知って欲しかったんだ」
「じゃあわたしは魔女さんにそのたった一人として選んでいただいたんですね?」
「あんたはあたしにとって娘でもあり友でもあり、そして楽しませてくれる人物だからね」
魔女さんは顔を顰めた。
やっぱり調子が悪いみたい。
いつもの笑顔はなく、疲れて見える。
あの元気な笑い声は消えてしまっていた。
そんな魔女さんの手を握り、ほんの僅かな癒しの力を少しずつ魔女さんに流して行く。
「マナ?」
心配したリオが仕事を早めに終わらせ帰ってきた。
「お帰りなさい」
「マナは夕食は?」
「あ………」
「忘れていたでしょう?メイド達が心配してるよ?」
「ごめんなさい」
魔女さんの寝息が聞こえてきた。
わたしは毛布をそっと掛け直して部屋を出た。
食堂に二人で歩いて行く。
「魔女さんは?」
「あまりよくはなさそう。わたしのために……色々してくださったから」
わたしは言葉を濁しながらリオにそう伝えた。
わたしはリオのために。魔女さんはわたしのために。お互いがお互いを思い遣ってその結果が今。
「魔女さんは僕のずっとずっと昔の……血の繋がった祖母なんだ」
「あ……魔女さんは昔王妃だったと言ってたわ」
「うん、そして夫であるその当時の国王を守るため呪いを受けて、魔女にされてしまったんだって。ずっといつか死ねる日をと待っていたみたい」
わたしは黙ってリオの話を聞いた。
魔女さんは昔の話をわたしにはあまりしなかった。リオは祖先になるからなのか話を聞いたらしい。
一人生き続けることの辛さは、魔女さんにしかわからないけど、長く、孤独で、気が狂いそうなほど辛かったのだと想像できた。
魔女さんは床にふせりながらも、わたし達と笑い合い共に生きて、生をまっとうし共に終わらせようとしている。
魔女さんの顔に安堵している表情が見てとれた。
今は穏やかな時間が過ぎている。
ただ、あんなに元気だったはずの魔女さんが時おり『疲れた疲れた』と言って身体を休めることが増えた。
御年300年を超えている魔女さんはわたしに寿命を与えてしまったので『あたしの人生もあと僅かだ』と言い出した。
「魔女さん、わたしのせいでごめんなさい」
何度も謝った。でも謝って済むことではない。彼女の命を奪ったのだから。
そしてこの辛い思いをリオはずっとしてきたのだと思うと、短絡的にしか考えていなかったわたしはなんて酷い人なんだと今更ながらに感じてしまう。
「マナ、あたしゃ長生きし過ぎたんだ。こんな体調だけどあたしの寿命はあんた達が死ぬ時と同じくらいさ。ちょうどいいくらいあんた達と笑い合いながら生きていって、あんた達と同じくらいに死ねる。
やっと寂しいお別れをしなくて済むんだ。
あたしゃ幸せだよ」
普段素直じゃない魔女さんがポロッと本音を言ってくれた。
どんなに長生きしても幸せではなかったのかもしれない。仲の良い人たちがどんどん先に死んでしまうのを見続けてきた魔女さんの寂しさや孤独に触れた気がした。
「ふふっ、じゃあ、魔女さん。わたしの癒しの力で魔女さんの体調を見守りつつ一緒にあともうしばらく長生きして一緒に死にましょうね?」
わたしが笑いながらそう言うと、魔女さんも笑いながら言った。
「あたしの名前はソフィアだよ」
「ソフィア様………素敵なお名前ですね?これからはそう呼んでも?」
「やめておくれ。その名前で呼ばれていたのはずっとずっと大昔、あたしの夫や両親、家族たちさ。今はもう忘れられた名前だ。ただ覚えて欲しかったんだ。あたしの名前をこの世で一人だけでも知って欲しかったんだ」
「じゃあわたしは魔女さんにそのたった一人として選んでいただいたんですね?」
「あんたはあたしにとって娘でもあり友でもあり、そして楽しませてくれる人物だからね」
魔女さんは顔を顰めた。
やっぱり調子が悪いみたい。
いつもの笑顔はなく、疲れて見える。
あの元気な笑い声は消えてしまっていた。
そんな魔女さんの手を握り、ほんの僅かな癒しの力を少しずつ魔女さんに流して行く。
「マナ?」
心配したリオが仕事を早めに終わらせ帰ってきた。
「お帰りなさい」
「マナは夕食は?」
「あ………」
「忘れていたでしょう?メイド達が心配してるよ?」
「ごめんなさい」
魔女さんの寝息が聞こえてきた。
わたしは毛布をそっと掛け直して部屋を出た。
食堂に二人で歩いて行く。
「魔女さんは?」
「あまりよくはなさそう。わたしのために……色々してくださったから」
わたしは言葉を濁しながらリオにそう伝えた。
わたしはリオのために。魔女さんはわたしのために。お互いがお互いを思い遣ってその結果が今。
「魔女さんは僕のずっとずっと昔の……血の繋がった祖母なんだ」
「あ……魔女さんは昔王妃だったと言ってたわ」
「うん、そして夫であるその当時の国王を守るため呪いを受けて、魔女にされてしまったんだって。ずっといつか死ねる日をと待っていたみたい」
わたしは黙ってリオの話を聞いた。
魔女さんは昔の話をわたしにはあまりしなかった。リオは祖先になるからなのか話を聞いたらしい。
一人生き続けることの辛さは、魔女さんにしかわからないけど、長く、孤独で、気が狂いそうなほど辛かったのだと想像できた。
魔女さんは床にふせりながらも、わたし達と笑い合い共に生きて、生をまっとうし共に終わらせようとしている。
魔女さんの顔に安堵している表情が見てとれた。
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