【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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嫌です。別れません

14話  ダン編

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「ダンの浮気者!勝手に女作って子供まで産ませるなんて!信じられない!」

 涙をボロボロ流しながら俺の胸を叩くマナ。

 やばい、可愛い。何年経ってもマナは可愛い。

 アイリスの息子が俺のことを『とうちゃん』と呼ぶ。俺は別にそれを嫌だと思ったことはない。リオより小さいあいつが俺を『とうちゃん』と呼ぶたびにリオのことを思い出される。

 ただし、アイリスの子は俺の子ではない。

 俺は確かにマナと結婚してからも女遊びは続けていた。それはマナのことを愛していないと周りに思わせるためと、他の女の家で暮らすことで二人のことに目を向けさせないようにする目眩しでもある。

 仕事絡みの俺の部下の女達を恋人役にした。だから誰とでも寝ていたわけではない。

 俺がたまに他の女を抱くのは、マナとそういう関係を築けなかったから。でももうマナが傷つく顔を見ることはできなくて女遊びはやめた。

 結局マナから逃げていただけで、向き合うことすらできずにいた。

 それでも俺はマナ達に会いにはいけない。俺自身も影の仕事のせいでいつも追われる立場だった。

 他人の悪事を探ったり、時には国にとって悪だと感じる者達は排除しなければならなかった。そして仕事絡みで、この顔を使って女を落とし、いろんな情報を聞き出すこともあった。そこには色恋が絡むこともあった。

 体の関係はそれなりにあった。だが相手と子供を作るつもりはなく避妊はしっかりしていたし、俺に本気で惚れて付き合おうとしたのはこのアイリスだけだった。

 アイリスは部下で恋人役としてしばらく一緒に暮らした。

 アイリスとは何度か体の関係はあったが互いに愛情はないと思っていた。まさかアイリスが本気で俺を好きになりマナのところに突撃するとは思わなかった。

 アイリスには二度とマナのところへ行かないように強い言葉で諌めた。いや、脅した。

 次にマナのところへ行けば、お前の家族もろとも仕事はさせない。路頭に迷えと。

 部下であるアイリスの家族はアイリスが俺に付き纏うのをやめさせた。

 俺ももうアイリスを抱くことはしなかった。

 俺が魔女に助けられてから魔女に言われた。

『お前からは他の女の色香を感じる。そんな男をマナに近づけることはさせない』

 俺はもう女を抱いてはいなかった。それでも仕事上、女と絡むことはある。

 それを魔女は女の匂いを感じると言うのだ。

『俺はあの二人に近づくつもりはない』

『だったら勝手に死ね。ここに来ればマナはお前を助ける。そしてお前が帰ってきたことを喜ぶ。どうせまた影として暮らし、女のところを渡り歩くんだろう?』

『俺の仕事は他の貴族達の裏を探ることだ。そのため女を籠絡させるのも仕事。だが最近は他の女は抱いていない』

『それでもお前には女の匂いが残っている。抱いていないだけでそれに近いことはしている、そうだよな?』

 魔女がニヤッと笑った。俺は彼女の目を背けるしかなかった。

 言ってることは当たりだ。いつもいつもではない。

 しかし今回はどうしても情報を得たくて、俺は王妃に近づき、王妃と恋人になった。それは国王から頼まれてリオを暗殺しようとしている情報と証拠を得るためだった。

 そのため殺されかけた。それからも俺は王妃の恋人として今も暮らしている。

 この場所は仲間達と共に情報を共有する場所であり隠れ家でもある。

 アイリスは俺のことを諦め他の影と結婚した。しかし離婚して今は息子と二人この隠れ家で影として働きながら暮らしいている。

 アイリスの子供は何故か俺になつき、『とうちゃん』と呼んでいる。だが俺一人に言っているわけではない。遊んでくれる男の人には『とうちゃん』と呼ぶので、俺以外にも何人か『とうちゃん』と呼ばれていた。

 マナは完全にアイリスの子供は俺の子供だと勘違いしてる。

 だが俺は否定するのをやめた。

 だって俺は汚い。

 王妃とは寝てない、体の関係はない。魔女が秘薬をくれた。惑わせの薬、それはそう思い込む薬。王妃は俺と寝ていると思っている。俺に抱かれ愛されていると思い込んでいる。

 だけどそれは公の場で知らしめられている。

 国王も認めている関係で王妃の恋人、愛人として俺は今過ごしている。

 だからマナに本当のことを伝えることはできない。

 王妃は狡猾だ。愛人を作るのはこの国では子供を産み終われば認められている。

 三人目、やっと王子を産んだ王妃はもう愛人を作っても何も言われない。そのため国王に俺が愛人になるようにと命令された。

 リオをこの国の王太子にするために、国王は王妃を廃妃するつもりだ。しかし王妃は尻尾を出さない。

 リオを暗殺しようとしていることも、実家の公爵家の富を得るために裏金を作っていることも、人身売買に手を出している実家を庇っていることも、なかなか王妃との繋がりを見つけ出せないで数年過ごしている。

 かなり疑い深く慎重派の王妃の懐に入るためには本気の恋愛をするしかない。そのためマナとリオのそばにはいられない。

 リオのことは捨てたと思われている。俺が侯爵家を継ぐためにもリオは邪魔だからだ。

 陛下の血を受け継ぐ甥がいれば俺の地位は危ぶまれる。そう王妃に伝え、リオを捨てたといえば王妃は納得してくれた。
 もちろんマナが俺の妻だと言うことは王宮では誰にも知られていない。

「マナ、帰ってくれ」

「………そう」

 マナはものすごく傷ついた顔をしていた。

 そして俺の頬を思いっきりバシッ!バシッ!と右と左、叩いて「クソ男!」と怒鳴って帰って行った。

「ダン?いいの?」

 アイリスが心配して俺のところへやってきた。

「とうちゃん、いたい?」
 アイリスの息子が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。

「ああ、これくらい、大丈夫だ」

「とうちゃん、おとななのに、ないてるの?」

「俺が?泣くわけないだろう?」













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