あなたとの離縁を目指します

たろ

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(まだ)離縁しません

中編 8

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「リナ、このワンピースでいいかしら?」

 大きな鏡の前で何枚もの服を着てどれがいいのか選んでいる。

 恋人に会うみたい?

 だってアルバードに会うのは本当に久しぶりなの。
 手紙を放置していたのはわたしだけど。

 一応伯爵夫人、あんまり変な格好はしたくない。だけど、アルバードの前で豪華なドレスなんて着たことない。

 人前に出てもおかしくないプリーツがたっぷり入った白地に黄色の花柄のワンピースを選んだ。

 やっぱりわたしは元気に見える服装の方が似合うと思うの。

「リナ、お菓子はわたしが作りたいの!いいかしら?」

「もちろんです!料理長もそのつもりで準備していると思います!」

「せっかくだからフランと一緒に作ろうかしら?」

「フラン様も喜ばれると思いますよ」







「アンナ、これでいい?」

「うん、とっても上手!」

 フランがメイド長お手製のエプロンをつけて、踏み台に乗ってクッキー生地を捏ねている。

「疲れるわよ?」
「ぼくやりたい!」

 本当はクッキーの型抜きをしてもらうつもりだったのに、フランは「おにいちゃんだから」と言っていろんなことに挑戦中。

 カップケーキに生クリームを乗せて果物やチョコレートを乗せるのもフランが手伝ってくれた。

 
「ぼく……きれいにつくれない」

「そんなこと絶対ありません!」

 フランが作ったカップケーキはもちろんわたしが頂く。
 だってお顔にチョコレート、髪の毛にはクリームをつけながら必死で作ってくれたんだもの。

 誰にも譲れないわ。いくら旦那様がいると仰っても譲るつもりはない。

「この初めて作ったフラン作のカップケーキはわたしのものです!誰にも譲りません!
 もう勿体無くて食べるのも躊躇してしまいそう」

「アンナ、たべる?ぐちゃぐちゃだよ?」

「何を言ってます!こんな素敵なカップケーキ!とっても美味しそうです」

 ーーうん、見た目はちょっとアレだけど。

 口の中に入ればどうせ全てぐちゃぐちゃになるんだもの。




 準備も終わりフランはひと休みでお昼寝中。

 朝選んだワンピースに着替えて髪の毛も変わるしてハーフアップにしてもらった。

 そろそろしながらアルバードを待っていた。

 旦那様も仕事を早めに終わらせて帰ってきてくれると言っていた。

 フランは「きたらおこしてね」と何度も言ってやっとお昼寝をしてくれた。

「ぼく、アルにあって、アンナはぼくのおよめさんって、おしえてあげるの」

 と言っていた。

 やばい、可愛すぎる!
 うちの子がもう天使を超えたかも。






「アンナ様!アルバード様がいらっしゃいました」

 リナが声をかけてくれた。

「わかった、客室へ行くわ」

「フランはまだお昼寝中?」

「はい、旦那様もまだお帰りになっておりません」
 申し訳なさそうにいうリナ。

「ちょうどよかったわ。ゆっくり二人で話をしたかったの」



 客室に入る前に大きく深呼吸をした。

 ーーさぁ入るわよ!

 自分に気合を入れる。





「アルバード!久しぶりね!」


 アルバードに久しぶりの再会で抱きつこうとした。

「姉上、あなたはなんてことをしたんですか!全く勝手なことばかり!」

 思わず固まった。
 両手はそのまま……アルバードに抱きつけなくてヒクヒクと顔が引き攣るわたし。

「結婚って一体どう言うことなんですか?」

 ーーえっ?そこから?

「結婚…しちゃった!えへっ!」

「笑って誤魔化してもダメです!」

 口を尖らせ頬を膨らませる。

 秘技、フラン!(のまね)

「手紙を出すのに全く無視!」

 ーー怒るじゃん!

「なんですか!そのワンピース!」

 ーーえっ?似合わない?

 思わず自分のスカートを捲って見た。

「スカートを捲らない!もうあなたは伯爵夫人なんですよ!」

「………はあい」

 面倒くさそうに答えるとまた叱られた。

「はい!ですよね?姉上」

「………はい」

 どこの小姑だよ!14歳のくせに!

「姉上、結婚したならもう少し落ち着いた格好をしないといけないでしょう?なぜワンピースなんですか?それは普段着でしょう?客を迎える時は普通ならドレスに着替えるものではないのですか?」

「普通ならね?でもアルバードだから変に畏まるとおかしいかなって思ったの」

「はあ、姉上がどんな素敵な伯爵夫人になったか楽しみにきたのに」

「えっ?わたしが素敵?うふふふふっ。もうアルバードったら!」

 やっぱりアルバードに抱きついてしまった。

 もう!お姉ちゃんが大好きなのは変わらないわね!

「うわっ!もう!引っ付かないでください!いい年して!」

「いい年は余計だわ!だけど久しぶりのアルバードをしっかり味わわせてちょうだい!」

 わたしよりも背も高くなって、声も可愛らしかったのに低音の大人の声になり始めて……わたしの可愛いアルバードがなんだかおっさんになり始めて……

 でもやっぱりかわいくて………


「だ、だめぇ!アンナはぼくのなの!あっちいって!!!」

 ーーうん?
 寝てたはずのフランの声が聞こえてきた。

 それも扉のところに仁王立ち。

 ちっちゃすぎて迫力なくて可愛らしいだけなんだけど!!!


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