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離縁してあげますわ!
【19】
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寮に戻ったのは2日後だった。
まだ仕事も休んでいる。
人の目が怖い。
みんながわたしをジロジロと見ている気がする。それに、男の人が怖い。
公爵に対してもだけど、周りにいた使用人や護衛の人達のことを思い出しても怖くなる。
誰も助けてはくれなかった。ハンクスだってわたしが侍従に蹴られるのを黙って見てた。
最後は助けてくれたけど、あんな怖い思いをしているのに、必死で抵抗しているのにみんな黙って見ていた。あの侍従なんかわたしのお腹を思いっきり蹴った。
男なんて誰も信用できない。
わたしは辞表を書いて仕事を辞める決心をした。
というより、もう部下達と仕事をすることはできないと思う。あそこの部署は男の人が多い、いくら信用していても所詮は男。
ーー無理、無理だわ。
考えただけで鳥肌が立ち、吐き気がしてくる。
殿下に対しても同じ。
わたしを好きだった?
あんな態度しか取れない男に、「えっ?わたしが好きだったの?嬉しいわ」なんて言えない。
「わたし、殿下のこと一度も好きだと思ったことはありません。一度くらい負かしてやりたいと思い続けてはいましたが……一度も勝てませんでした」
ーー悔しいけど。
「わかってる。僕の一人相撲だって……それでもアリアのことが好きだったんだ……」
「はあ?わたしは地味で眼鏡女で、愛嬌もないし、殿下に好かれる要素なんてどこにもないと思いますけど?」
自分で言うのもなんだけど、モテたことなんてない。ハンクスくらいだった。
好きだと言ってくれた人は。優しくしてくれた人も。
それにコロッと騙された馬鹿な女だけど。
「アリアはとても努力家で貴族令嬢なのに他の子達と違って派手さがなく清楚だ。それに、自分の夢を持っていていつも輝いていたよ。今だって男が多い職場で自分より年上の部下が多いのに、君は自分の力で部下達を黙らせ信頼を得た。とても凄いことだと思うよ」
「有難うございます。上司である殿下にそう言ってもらえて嬉しいです……」
ーーそう、あなたはわたしにとって上司でしかない。そう言ったつもりなのに……
「僕にチャンスをくれないか?今すぐに断らないで欲しい」
「チャンス?」
「これからの僕を見て決めて欲しいんだ」
「…………」
ーーえっ?嫌です!
と言いたいところだけど、なんて返事をしようか悩んでいたら、ほんと、最高のタイミングで看護師さんが現れた。
「目覚めたんですね?」
優しい声がわたしを落ち着かせてくれた。
「あっ、はい。殿下、看護師さんが来られたから、また、今度、はい、お帰りになってください」
わたしは扉の方を指さした。
「………はああ、わかった、今日は帰るよ」
「で、殿下?」
看護師さんが殿下の顔を見て大慌てで頭を下げ挨拶を始めた。
「僕帰るから挨拶はしなくていいよ。アリアのことよろしくね」
殿下が帰って行くのをベッドから見送って、『もう二度とくるな』と心の中で呟いた。
流石にお医者様は男の人でも怖くなかった。診察されても鳥肌は立たなかった。
オズマンがお見舞いがてら、仕事の書類を持ってきてくれた時は、『こいつ、ふざけるな!』と思ったけど平気だった。
書類を渡される時、指が一瞬触れるまで。
そう、触れた瞬間、鳥肌!!!
吐くことはなかったけど、顔も真っ青になって「どうしたんですか?」とオズマンがのんきに訊いてくるから、ムカッとした。
「うるさい!入院しているわたしに仕事を持ってくるから気分が悪いの!」と怒って誤魔化した。
「すみません、でもアリアさんがいないとわからない仕事も多くて」
「………やるわよ!」
思わず大きな声が出てしまった。
この時、もう仕事は無理かも……と思ったのよね。
寮に帰ってからも机の上には何故か山積みの書類が………
辞めるつもりなのに!体調悪いから休んでいるのに!(本当はサボってるだけだけど)
わたし、誰にも会わずにここで仕事を続ける?
殿下からの接触は今のところ全て寮母さんが断ってくれてる。
離縁したばかりで今回の事件。寮母さんがわたしのことを心配してくれている。なのに仕事だけは、断ってくれない。
寮母さん曰く。
「アリアちゃんは仕事をしていた方が何も考えずに済むからね。体のためにも仕事はしてた方がアリアちゃんのためになるよ」と言われた。
さすが独身の時からお世話になっている寮母さん。わたしの性格よく分かってるわ。
まだ仕事も休んでいる。
人の目が怖い。
みんながわたしをジロジロと見ている気がする。それに、男の人が怖い。
公爵に対してもだけど、周りにいた使用人や護衛の人達のことを思い出しても怖くなる。
誰も助けてはくれなかった。ハンクスだってわたしが侍従に蹴られるのを黙って見てた。
最後は助けてくれたけど、あんな怖い思いをしているのに、必死で抵抗しているのにみんな黙って見ていた。あの侍従なんかわたしのお腹を思いっきり蹴った。
男なんて誰も信用できない。
わたしは辞表を書いて仕事を辞める決心をした。
というより、もう部下達と仕事をすることはできないと思う。あそこの部署は男の人が多い、いくら信用していても所詮は男。
ーー無理、無理だわ。
考えただけで鳥肌が立ち、吐き気がしてくる。
殿下に対しても同じ。
わたしを好きだった?
あんな態度しか取れない男に、「えっ?わたしが好きだったの?嬉しいわ」なんて言えない。
「わたし、殿下のこと一度も好きだと思ったことはありません。一度くらい負かしてやりたいと思い続けてはいましたが……一度も勝てませんでした」
ーー悔しいけど。
「わかってる。僕の一人相撲だって……それでもアリアのことが好きだったんだ……」
「はあ?わたしは地味で眼鏡女で、愛嬌もないし、殿下に好かれる要素なんてどこにもないと思いますけど?」
自分で言うのもなんだけど、モテたことなんてない。ハンクスくらいだった。
好きだと言ってくれた人は。優しくしてくれた人も。
それにコロッと騙された馬鹿な女だけど。
「アリアはとても努力家で貴族令嬢なのに他の子達と違って派手さがなく清楚だ。それに、自分の夢を持っていていつも輝いていたよ。今だって男が多い職場で自分より年上の部下が多いのに、君は自分の力で部下達を黙らせ信頼を得た。とても凄いことだと思うよ」
「有難うございます。上司である殿下にそう言ってもらえて嬉しいです……」
ーーそう、あなたはわたしにとって上司でしかない。そう言ったつもりなのに……
「僕にチャンスをくれないか?今すぐに断らないで欲しい」
「チャンス?」
「これからの僕を見て決めて欲しいんだ」
「…………」
ーーえっ?嫌です!
と言いたいところだけど、なんて返事をしようか悩んでいたら、ほんと、最高のタイミングで看護師さんが現れた。
「目覚めたんですね?」
優しい声がわたしを落ち着かせてくれた。
「あっ、はい。殿下、看護師さんが来られたから、また、今度、はい、お帰りになってください」
わたしは扉の方を指さした。
「………はああ、わかった、今日は帰るよ」
「で、殿下?」
看護師さんが殿下の顔を見て大慌てで頭を下げ挨拶を始めた。
「僕帰るから挨拶はしなくていいよ。アリアのことよろしくね」
殿下が帰って行くのをベッドから見送って、『もう二度とくるな』と心の中で呟いた。
流石にお医者様は男の人でも怖くなかった。診察されても鳥肌は立たなかった。
オズマンがお見舞いがてら、仕事の書類を持ってきてくれた時は、『こいつ、ふざけるな!』と思ったけど平気だった。
書類を渡される時、指が一瞬触れるまで。
そう、触れた瞬間、鳥肌!!!
吐くことはなかったけど、顔も真っ青になって「どうしたんですか?」とオズマンがのんきに訊いてくるから、ムカッとした。
「うるさい!入院しているわたしに仕事を持ってくるから気分が悪いの!」と怒って誤魔化した。
「すみません、でもアリアさんがいないとわからない仕事も多くて」
「………やるわよ!」
思わず大きな声が出てしまった。
この時、もう仕事は無理かも……と思ったのよね。
寮に帰ってからも机の上には何故か山積みの書類が………
辞めるつもりなのに!体調悪いから休んでいるのに!(本当はサボってるだけだけど)
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離縁したばかりで今回の事件。寮母さんがわたしのことを心配してくれている。なのに仕事だけは、断ってくれない。
寮母さん曰く。
「アリアちゃんは仕事をしていた方が何も考えずに済むからね。体のためにも仕事はしてた方がアリアちゃんのためになるよ」と言われた。
さすが独身の時からお世話になっている寮母さん。わたしの性格よく分かってるわ。
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