あなたとの離縁を目指します

たろ

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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。

【30】

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「マリーン」
 暴れ回るマリーンさんにオーグは近づいた。

「あんたなんか大っ嫌いよ!みんな不幸になればいいんだ!
 アイリーンは使い物にならないし、イリアナを始末できなかった。でもオーグ…あんたが愛したあの聖女様はあんたのことなんか忘れてしまった。オーグとの愛の中で生まれたはずのイリアナは母親からの愛情すら受けずに育った。
 ふんっ!いい気味だ!オーグが一番大切なものを壊してやる!」

「壊すなら俺だけにしてくれ!イリアナには何も関係ないことだろう?
 俺だけを呪い殺せばいい」

「オーグが死んだら面白くないだろう?」
 マリーンはオーグを見て微笑んだ。その笑顔の中には憎悪しか感じられなかった。

「あんたの大切なものが壊れていくのを、あんたが苦しみながら見ている姿をあたしが見る方がよっぽど楽しいんだ。イリアナ……オーグの娘に生まれてきたことをくやみながら生きな」

 マリーンさんは酷い言葉を並べているはずなのに、怒鳴り散らしているはずなのに、顔がとても怖い形相なのに、何故か背中が……とても哀しんでいるように見える。

「もういい、マリーン……やめろ……やめてくれ……苦しまないでくれ……」

 オーグは震える手でそっとマリーンさんを抱きしめた。

「さ、、、触るな!」
 最後まで抵抗しようと体をのけぞりオーグから逃げようとするマリーンさん。

 オーグはマリーンさんを大きな体で抱きしめた。

 わたしは……マリーンさんからされたことを許せるほど優しい人間ではない。

 いくらオーグが好きだからと言っても、いくらオーグに振り向いてもらえないからと言っても、無理やり関係を迫って子作りしたり、わたしが邪魔だからと言って母親から記憶を消してわたしを育児放棄させたり、わたしにしたことはとてもではないけど、許せそうもない。

「オーグ……マリーンさんはきちんと罪を償わないといけないの」

「わかってる……だが俺がマリーンをここまで追い詰めた……マリーンと俺は姉弟のように育ったんだ……だから……」

「あたしは姉なんかじゃない!ずっとずっと……」
 ボロボロと涙を流すマリーンさん……

「オーグ、あんたの優しさは間違ってる……マリーンは罪を償わなければいけない……拘束して城へと連れていくつもりだ」

「……わかってる」
 オーグは項垂れた。

 マリーンは言いたいことを言ったからなのか、なんだかスッキリした顔をしていた。

 でもわたし達に一度も謝罪の言葉はなかった。

 セデンが騎士達を数人リンデの森の入り口付近に呼んだ。
 マリーンさんは錠で魔力を使えなくされていた。
「もう抵抗なんてしないよ」

 ふんっと言って鼻を鳴らした。

「さっさと連れて行きな!向こうに行けばアイリーンとも会えるだろう?」

 バタバタした時間の中でセデンとゆっくり話すことはできなかった。

 ただ、わたしの巻き戻りの理由もお城での出来事もアイリーン様とマリーンさんの黒魔法のせいだとわかった。

 でも……セデンとだからそうですかとは……言えない。

 わたしの中には……消えない記憶がある。

 巻き戻し前2人の睦み合う姿を何度も見せつけられた。

 今回は2人の関係は城だったかもしれない。だけどわたしの心は……




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