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離縁してください
【19】
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「シルビア……わかったよ……君の意思を尊重するよ……この屋敷は君の名前にしておくからここに住むといい」
「えっ?む、無理です、わたしにはこの屋敷を維持する余裕なんてありません…‥働く場所もこれからどうなるかわからないのに」
「彼らを雇うのは厳しいかもしれない……君に俺の領地の管理をこのままお願いするからその利益をこの屋敷に維持費として使えばいい」
「アレックはどうするの?」
「俺?俺は騎士だ。いくらでも働くところもあるし住むところもある。君に今まで辛い思いをさせたんだ。慰謝料として払わせて欲しい」
ーー簡単だったんだ。わたしが一言離縁して欲しいとお願いすれば良かった。
なのに……王命だからとその言葉に縋っていたのはわたしだったんだ。
彼を好きだった。だから、辛いと言いながらそばにいたかった。
ソニア殿下と二人いつも仲良くいる姿を何度も見て心がズキズキと痛むのに、この屋敷にわたし自身が住んでいたのはそれでもアレックを諦められなかったから。彼が帰ってきてくれるのを待ち続けていたから。
だけどわたしは『離縁して欲しい』と言った。そしてアレックは『わかった』と返事をした。
それが全て………
「アレック……わたし、何もいらない……明日出て行きます」
わたしが離縁して欲しいと言ったのに、まだ未練があるから馬鹿なことを言ったのがいけなかった。
ーー実家に帰ろう。
アレックとの結婚のおかげで実家の借金はほぼなくなった。アレックの実家の侯爵家と王家からの援助で領地も改良されたし、育ちやすい作物の苗を教わった。
品種改良された干ばつに強い麦のおかげで今年は豊作だった。まだまだ安定的ではないけど、少しずつ良い方向へと向かっている。
実家の伯爵家の領地に倣い、他の干ばつに苦しむ領地の人たちもこれから少しずつ変わっていけるかもしれないと希望を持ち始めている。
わたしの結婚も悪いことばかりではなかった。こうしてたくさんの人々の生活が変わっていくきっかけ作りになってくれた。
もうそれだけで満足するしかない。
「どこへ行くんだ?」
「……実家に帰ります……父も母もわたしが帰ってきて領地運営の手伝いをすることを喜んでくれると思います」
ーーうん、驚くかもしれないけど。今は猫の手も借りたいくらい忙しい時期だから……なんだかんだ文句言いながらも受け入れてくれるはずだわ。
「しかし、君は事務官の仕事もあるし……」
「お菓子作りは好きです。仕事ももちろんやりがいがあります。だけど……たくさんの男の人がいる場所で働くのはまだ怖いんです」
ーーあの時の恐怖を克服するのはまだまだもう少し時間がかかりそう。
お菓子作りからと思ったけど……実家で作って届けることもできるし。
王都から少し離れてはいるけど……
それにこの屋敷はアレックのものであってわたしがもらうには立派すぎるし、とても維持できるものではないもの。
「シルビア……その……今まですまなかった……離縁はする。王命での結婚などするべきではなかったんだ」
ーーするべきではなかった……そうだよね?後悔してるのね?
泣いたらダメ。わかっていたことだもの。
あなたがソニア殿下を愛していることは……わたしを守るため……それはソニア殿下を守ることだからだよね?
唇を噛み涙を堪えた。
「えっ?む、無理です、わたしにはこの屋敷を維持する余裕なんてありません…‥働く場所もこれからどうなるかわからないのに」
「彼らを雇うのは厳しいかもしれない……君に俺の領地の管理をこのままお願いするからその利益をこの屋敷に維持費として使えばいい」
「アレックはどうするの?」
「俺?俺は騎士だ。いくらでも働くところもあるし住むところもある。君に今まで辛い思いをさせたんだ。慰謝料として払わせて欲しい」
ーー簡単だったんだ。わたしが一言離縁して欲しいとお願いすれば良かった。
なのに……王命だからとその言葉に縋っていたのはわたしだったんだ。
彼を好きだった。だから、辛いと言いながらそばにいたかった。
ソニア殿下と二人いつも仲良くいる姿を何度も見て心がズキズキと痛むのに、この屋敷にわたし自身が住んでいたのはそれでもアレックを諦められなかったから。彼が帰ってきてくれるのを待ち続けていたから。
だけどわたしは『離縁して欲しい』と言った。そしてアレックは『わかった』と返事をした。
それが全て………
「アレック……わたし、何もいらない……明日出て行きます」
わたしが離縁して欲しいと言ったのに、まだ未練があるから馬鹿なことを言ったのがいけなかった。
ーー実家に帰ろう。
アレックとの結婚のおかげで実家の借金はほぼなくなった。アレックの実家の侯爵家と王家からの援助で領地も改良されたし、育ちやすい作物の苗を教わった。
品種改良された干ばつに強い麦のおかげで今年は豊作だった。まだまだ安定的ではないけど、少しずつ良い方向へと向かっている。
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わたしの結婚も悪いことばかりではなかった。こうしてたくさんの人々の生活が変わっていくきっかけ作りになってくれた。
もうそれだけで満足するしかない。
「どこへ行くんだ?」
「……実家に帰ります……父も母もわたしが帰ってきて領地運営の手伝いをすることを喜んでくれると思います」
ーーうん、驚くかもしれないけど。今は猫の手も借りたいくらい忙しい時期だから……なんだかんだ文句言いながらも受け入れてくれるはずだわ。
「しかし、君は事務官の仕事もあるし……」
「お菓子作りは好きです。仕事ももちろんやりがいがあります。だけど……たくさんの男の人がいる場所で働くのはまだ怖いんです」
ーーあの時の恐怖を克服するのはまだまだもう少し時間がかかりそう。
お菓子作りからと思ったけど……実家で作って届けることもできるし。
王都から少し離れてはいるけど……
それにこの屋敷はアレックのものであってわたしがもらうには立派すぎるし、とても維持できるものではないもの。
「シルビア……その……今まですまなかった……離縁はする。王命での結婚などするべきではなかったんだ」
ーーするべきではなかった……そうだよね?後悔してるのね?
泣いたらダメ。わかっていたことだもの。
あなたがソニア殿下を愛していることは……わたしを守るため……それはソニア殿下を守ることだからだよね?
唇を噛み涙を堪えた。
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