【完結】わたしはお飾りの妻らしい。  〜16歳で継母になりました〜

たろ

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お義父様の思い④ 番外編

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悲しみの中、葬儀を済ませて、わたしはバーバラとトムに、わたしの家族のフリをして屋敷に戻ってくることを頼んだ。

トムはもちろん執事として。

アイリスが16歳になるまでの数ヶ月間、仲が良い家族だと思わせたいと頼んだのだ。
もちろんアイリスには冷たく当たって欲しいと。

バーバラ達は戸惑いながらも了承してくれた。

しかし、アイリスに対して憎しみなどない三人は、アイリスを見るたびにどうしていいのか戸惑って、無視することしかできなかった。

「旦那様、わたしにはアイリス様を虐めるなど出来ません、この屋敷にいるのが精一杯です、お許しください」
バーバラは泣きそうになっていた。
元々優しい女性だ。
嫌いでも憎いわけでもないまだ15歳の女の子を虐めるなんて出来るわけがない。

娘も「お義姉様はとても優しい方です。それを虐めるなんて出来ません」
と、やはり断られた。

トムの息子も「僕も嫌です、あんな優しい人に意地悪なんて出来ません」

みんなで話し合いとりあえず、無視をすることにした。
目を合わせないように、顔を合わせないように。

それだけでもみんな疲弊していた。

わたしだって本当はアイリスの悲しそうな顔を見て何度も謝って本当のことを言いたかった。

抱きしめて愛していると伝えたかった。

でもこのままではアイリスが死んでしまう。

確かにアイリスの体は弱ってきて寝込んでいることも増えていた。

精霊も、アイリスをなんとか守っていたが、緑の精霊がどんどん弱ってきているので助けようがないと言った。

早くアイリスの加護の力を弱らせて、緑の精霊を助け出さなければアイリスが死んでしまう。

わたしは焦りの中、アイリスを無視し傷つけて過ごした。

シリアを大事にしていたわたしに別の家庭があったことはアイリスには辛いことだった。

わたしを見る目は諦めと悲しみだった。

バーバラの娘がわたしにそっくりだったからだ。

偽物の家族ではないことは明らかだ。

本当はもうトムとバーバラは夫婦で、わたしとは無関係なのだが、バーバラ達はわたしへの恩を忘れていなくて助けてくれたのだ。

そしてアイリスを家から追い出した日……わたしはあの子の後ろ姿を見送りながら、もう会うことも許してもらうこともできないのだと感じた。

「………アイリス……必ず助かってくれ……わたしのことは恨んでいい、嫌って貰っていい……頼む、助かってくれ……」

わたしは時折ロバート様から連絡を貰い、アイリスの様子を聞いていた。

使用人の家族に見守られながらなんとか頑張っていると聞きホッとした。

そして、いずれ来るだろうと思われる国王陛下のアイリスへの執着。
シリアに似たアイリスをこのまま放っておくわけがない。
また隙あらばアイリスを自分のものにしようとするはず。
あの男を国王の座から引き摺りおろさなけば安心してアイリスが過ごすことは出来ない。

わたしは、ユージンの幼馴染だ。
王太子殿下のカルロス・バーナード殿下も次男のマルクス殿下も子どもの頃から知っている。

二人も弟を殺されて憤ってはいるが、陛下の力はまだまだ強固で若い殿下二人の力では退位させるのは難しかった。

だから、わたし達は陛下の罪の証拠を少しずつ集めていくしかなかった。

陛下に群がる周りにいる甘い汁を吸っている古いタヌキ達も一緒に始末してしまうつもりだ。

何年もかけて陛下に気づかれないように、集めてきた証拠。

これはこの国を変えることが出来る希望だ、そしてアイリスの幸せな人生を送らせるために必要なものだ。

わたしはアイリスが家を出てから、すぐにバーバラ達をロバート様のワルシャイナ王国へと向かわせた。

わたしが影で陛下の犯罪の証拠を集めていることが分かれば、今度はバーバラ達親子が人質として狙われるかもしれない。
そうなればせっかく集め証拠を差し出さなければいけなくなる。
だから四人はワルシャイナ王国のロバート商会の支部で働かせてもらい暮らすことにした。

これで命を狙われるのはわたしだけだ。

安心して証拠集めをできる。

わたしは何度も思い出す。

シリアが最後にわたしに言った本心を………

「ゼイ…ラム、本…当は貴…方を愛して…いたの、でも…気…がつく…のが遅す…ぎた…の……」

わたしはシリアに愛されていた。

お互い信頼関係はあっても愛情はないと思っていた。

シリアはユージンを愛し続けていると思っていた。
わたしは他所に家庭を作ったと思われていた。

浮気をして子供ができてしまったことは今更言い訳は出来ない。
でも、それでも、やはりシリアしか愛せなかった。

バーバラもわたしを愛することはなかった。

わたしの本当の娘も可愛いとは思っている。
だがあの子はもうトムの娘だ。

アイリスは、ずっと自分の娘だと思い育ててきたし、一緒に過ごす時間が長かったのもあって、アイリスへの愛情の方が深いものがあった。

アイリスを守るためならこの命捨ててもいい。

わたしは胸を張ってシリアに会いに行ける。

何度も殺されかけながら、わたしは時を待った。

そして……陛下を退位させることに成功した。

それでももうアイリスに会うことはないだろう。

わたしはあの子にそれだけの酷いことをしたのだから。今さら合わせる顔はない。

わたしは、また、一人シリアを思いながら生きていこうと思う。

シリアが迎えにきてくれるまで、このシリアが愛した屋敷の中で。






◇ ◇ ◇

「お義父様、ご無沙汰しております。ロバート様に全て話を聞きました」






                                    END


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