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え?またやって来たのですか?

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おじさまであるお二人と初めての対面はとても緊張した。

お二人にはそれぞれ子供が三人いる。

わたしのいとこ達になる。……らしい。

また時間を見て君に紹介するよと言われたが、王族と平民では格差があり過ぎてお会いするなんてとんでもないとお断りした。

わたしはなんとか終わりホッとしてソファでぐったりしていると、ニコルちゃんがわたしの膝に飛び乗ってきた。

「アイリス、今日はとても綺麗よ。お姫様みたい」

ニコルちゃんはわたしのドレス姿と化粧を初めて見たので、右から左からキョロキョロとずっとわたしの顔と服装を見回していた。

「アイリス、ロバートと離縁するならネイサンおじさまと再婚しない?わたしと親戚になれるわ」

アイリス様はいつの間にか7歳になっていてもう大人顔負けの話をしてくる。

「え?えええ!わたしはまだ旦那様の妻ですよ?それも平民です、無、無理です」

わたしはとんでもないと頭を横にブンブン振った。

「でもアイリスとロバートはまだ何もないのよね?」

そう、わたしは旦那様と結婚して一年半が過ぎた。
もうすぐ2年になろうとしているが、白い結婚のまま。
旦那様は正式にセルマ君を養子に迎えてくれて、セルマ君ももうすぐ5歳になる。

わたしの可愛い息子が……わたしはなんだか大きくなって離れていくのが寂しくて、でもお兄ちゃんになっていくセルマ君が可愛くて自分でもなんとも言えない気分になっている。

旦那様と離縁……ずっと結婚してから言われ続けているこの言葉。




そんなある日、パルバン様の屋敷はお休みして、家でお庭の手入れをしていると、玄関で騒がしい音が聞こえてきた。


「ロバートは何処なの?最近わたしに冷たいのよ」

あ……あの声は…ルイーズ様?っぽいわよね?

わたしは庭から出てこっそり茂みに隠れて、玄関をそっと覗いた。

やはり、忘れもしないあのルイーズ様だ。

「あの小娘はもう居ないの?ねえ、ロバートと連絡を取りたいの」
ロバート様は一昨日から、王都を離れて他の領地へ商会の会議で出掛けている。

『また黒いのがきた。ラファあの黒いのが嫌い、苦手なの』

ラファもルイーズ様が苦手でわたしの影にサッと隠れた。
『ラファ、隠れても向こうには見えないから大丈夫よ』

 『あの黒いの前よりもっと大きくなってる。ラファがアイリス守るからここに居て』 

『ありがとうラファ。頼りにしているわ』


「ちょっと!退きなさいよ!この家にロバートを隠しているんでしょう?私たちは愛し合っているのよ!邪魔しないで!」

わたしはリイナとミナがルイーズ様に頬を叩かれそうになるのを見て堪らなくなってルイーズ様の前に思わず立ちはだかった。

が………ここからどうすればいいのかしら?

「あ、あの、わたしの大切なあ二人に暴力を振るわないでください」

「あ!あんた、ロバートのお飾り妻ね!貴女が嫌がって離縁しないからロバートはとても困っているのよ!」

わたしはなんで答えればいいのか逡巡していた。

「……………」

「黙っていないで答えなさい!平民のくせに」

今度はわたしに手を挙げてわたしは頬を思いっきり叩かれ……

(……あれ?)

わたしはチラッと目を開けると

(痛みがこない……)

ルイーズ様は振り上げた手を下ろすことが出来なくて真っ赤な顔をして怒りを露わにしていた。

「な、何で手が動かないの!」
怒鳴っていたと思ったら、なぜか足がよろけてそのまま尻餅をついてしまった。

「い、痛い!もお‼︎ 何なのこの家は!」

『アイリス、この黒いの何処かに捨てる?川?海?山?』

『駄目よ、死んでしまうわ』

『でもこの黒いの、また来るよ。何処かに捨ててもう来ないようにしよう』


わたしはラファにも頭を抱えつつ、ルイーズ様をどうすればいいのか考えていた。

「あの、旦那様は多分明日にはお帰りになると思います。ただこの家は旦那様の家ではありません。
旦那様には本宅がありますので、よろしければそちらに会いにいかれることをお勧めします」

「知っているわ!でもあそこにはほとんど帰っていないと聞いたのよ」

「まあ、そうなんですか?では他にもお家があるのかもしれませんね、おモテになる方だから」

わたしがにっこり微笑むと
「貴女!わたしを馬鹿にしているの?」
と言いながらなんとか立とうとしていた。

わたしは慌てて手を貸そうとしたら

「触らないで!平民風情が高貴なわたしを触っていいと思っているの?」

「すみません」

わたしは確かに今まで庭いじりをしていたので汚いことに気がついた。

「ねえ、貴女とロバートは白い結婚らしいと噂されているわ。あの邪魔な子供と一緒にロバートの前から消えてくれないかしら?」

「……それは…ロバート様がそうして欲しいと言われるのなら仕方がないと思いますが、わたしの一存では難しいと思います。
セルマ君は旦那様の息子になりましたので」

「だから!その邪魔なガキを連れて出て行けと言っているのよ!」

ルイーズ様は立ち上がるとわたしに向かってずっと文句を言い続けた。

(うーん、このままずっと聞いているしかないのかしら?)

『あの黒いの、殺しちゃ駄目だよね?仕方がないから膜の中に入れてうるさいの聞こえなくしちゃうね』

ラファが見えない膜にルイーズ様を入れて、外からは何を言っているかわからなくなった。

一人で大きな口を開けてパクパクと何か言っているが聞こえないので、やっと静かになりホッとした。

「リイナとミナ、ごめんね。大丈夫だった?」

「アイリス様は出て来ては駄目です!わたし達に何かあっても出てきては駄目なんですよ!」
二人は涙ぐんでわたしの手を握った。

「だって二人が叩かれるのを見るのは嫌だったんだもの。ルイーズ様もわたしを見ればわたしにしか当たらないからいいかなと思ったの」

「もう自己犠牲はやめてください」
リイナの言葉に

「違うわ、だって二人はわたしの大事な家族なのよ?彼女に逆らえないからと言って黙って叩かれるところなんて見たくないわ」




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