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男達のドタバタ

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パルバン様達との会合が終わり、ジャンにしばらく商会の仕事は任せるため、引き継ぎをした。
俺はすぐにワルシャイナ王国へ向かった。

兄上とは、商会を立ち上げてから仕事として接することがあった。
だが、俺を弟として認めてくれているのかはわからない。
父上である元国王の頼みで俺と取引をしているだけなのかもしれない。

俺が王弟であることは、ワルシャイナ王国ではもちろん知られていない。

知るものは王の側近のみ。

俺は商会の会頭として、王に接見する許可をもらっている。

各国の珍しいものや貴重なものを俺の商会を通じて取引させてもらっている。

俺はもちろん今回も、王が気に入りそうなものを持参した。

今回はアイリスが作った傷薬だった。


「こちらは、むらさき草をもとに作った傷薬です。癒しと緑の加護を持った者が作った薬です。こちらの国で怪我をした兵士や騎士達に使って頂きたくお持ちしました」

俺は頭を垂れて、陛下の言葉を待った。

「ほう、誰か怪我をしたものはいないか?」

今怪我をしているものなどここではそう簡単には見つからない。

俺は持っていた折りたたみのナイフを取り出して自らの腕を切りつけた。

「何をしている?」

「ナイフを隠し持っていたな」

「こいつを捕まえろ」

周りがザワザワとしている中で俺は陛下を見ると、陛下はニヤッと笑った。

「塗ってみろ」

陛下は周りを沈めると俺に傷薬を試してみろと言ってくれた。

「ありがとうございます」


俺は左腕の深く切りつけて溢れる血を布で一度拭くと、薬を塗り付けた。

みんなはそれをただじっと見ていた。

溢れる血が塗り薬を塗っただけで、自然と止まった。

深い傷がすぐに治った訳ではない。

だが使ってみた本人にはわかる。

傷で激しい痛みがあったのに、痛みがなくなった。

「血が止まったな、だが綺麗に傷が治った訳ではないな」

「はい、ただ、痛みがなくなりました。たぶんこの薬を数回、時間をあけて塗れば、傷も塞がると思います。この薬を塗った者達の経過を纏めたものがここに記してあります」

俺は陛下に書類を渡した。

陛下はその書類をパラパラと見て、
「お前の傷の経過を見てどうするか決めよう」

と返事をくれた。

「ではこれで終わりだ、皆下がれ」

「しかし、此奴はナイフを持っております」

「ロバート、ナイフはそこの兵士に渡せ」

「はい、かしこまりました」
俺はナイフを渡すとそのまま立っていた。

兵士三人掛かりで、俺の身体検査をされた。

「こいつは自らを傷つけてわたしにこの薬の効果を見せるつもりでナイフを持っていたんだ、なあ?ロバート」

俺はニヤッと笑った。

兵士たちは俺を解放すると、陛下に言われたとおりに遠くから俺を睨みつけて、陛下の様子を見守っていた。


陛下と宰相、軍務大臣の三人だけが残った。

「お前に頼まれた二人をここに残した。お前の話とはなんだ?」
陛下はすぐに俺に問いかけた。

「お忙しい陛下のお時間をいただき誠にありがとうございます。以前一つだけ願いを聞くと約束して頂いたことを覚えていらっしゃいますか?」

「父上に退位する時に、どうしてもお前が困った時に一度だけその願いを叶えて欲しいと頼まれたな。何を願う?」

俺は長くなることを前置きして、話し出した。


「わたしには妻がおります。その妻が先ほどの薬を作りました。まだ17歳の少女ですが二つも加護を持つ心優しい娘です。
わたしは彼女の母親の死に際に守り人として婚姻をして守るように頼まれました。彼女の母親はわたしの幼馴染です。母親はわたしの出生の秘密を知っていてわたしなら守れると思い託されました。

ただ、妻は自分があの国でとても珍しい加護を二つも持っていること、それが他国をも脅かすほどの力であることは存じておりません。
さらに妻は、母親も父親も自分の祖父に殺されています。その祖父は母親であるシリアの美しさと癒しの力に惚れ込んで息子の恋人であるのに我が物にしようとしました。
それを阻止しようとした息子を簡単に殺しました。

身籠っていたシリアは、精霊に選ばれた別の男と結婚して妻アイリスを育てました。
守り人のおかげでシリアは恋人の父親に手を出されることなく過ごしましたが、娘のアイリスの精霊が弱り精霊とアイリスの命が危ぶまれてシリアは自分の精霊にアイリス達を守るように頼みました。

その祖父はずっとシリアへの執着だけはずっと持っていて常にシリアを見張っていたようです。
シリアが加護が弱まったことを知った祖父はシリアを連れ去ろうとして馬車の事故で亡くなりました。たまたまそれを助けたのがわたしです。16年ぶりの再会でした。その時にアイリスのことを頼まれました。

わたしはアイリスと結婚してアイリスを放置してアイリスに薬をたくさん作らせて、それを無理やり奪い売って回りました」

「守り人で守らないといけないのに、なぜだ?理由があったのだろう」

陛下は俺の話をじっと聞いていたのだが、不思議に思ったみたいだ。

「はい、精霊を助けなければアイリスも死んでしまいます。ただ精霊も自分が弱っていることがわかっていたので自分で膜を作りその中で死なないようにアイリスの中で過ごしていたらしいのです。
シリアの癒しの精霊ならアイリスの精霊を助けることが出来るのですが、アイリスの精霊の力をギリギリまで使い果たさないとその膜を破り近づき精霊を助けることが出来ませんでした。
その力を使い果たすのに一番早い方法が彼女を不幸にすることでした。幸せだと力をなかなか減らせません。不幸になると力はどんどん減ってしまいます、だから守り人であるわたしが彼女を傷つけ、辛い思いをさせ続けました」

「お前はどんな思いだった?」

「10歳も年下とはいえ結婚した以上は妻です。恋愛の愛情はなくても情はあります。守ってあげたいと思っているのに、不幸にするなど耐えられませんでした。夜中にこっそり会いに行っては寝ている妻に謝っていました」

俺はあの時のことを思い出して、グッと手を握りしめた。



◆ ◆ ◆

すみません

前回の話で、


マーティンの名前をユージンと書いていました。

訂正しております。






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