【完結】わたしはお飾りの妻らしい。  〜16歳で継母になりました〜

たろ

文字の大きさ
上 下
33 / 53

……アイリスを守る。

しおりを挟む
「シリアの美しさはアイリスに受け継がれている……さらにユージン殿下にも似ていらっしゃる。国王が謁見すればまた昔の悪夢のような事態が起こりかねない」
ロバートはあってはならない、阻止せねばと固く誓った。


パルバンは、王太子殿下のことを話し出した。

「あの事件で一番悲しんだのは弟を亡くされた王太子殿下だった。あのお方に話をしてみようかと思っている」

「どうしようと言うのですか?」

「国王ももう60歳を過ぎていらっしゃる。そろそろ代替わりをしなければ……いや、遅すぎたくらいだ」

「そうですね、王太子殿下も40歳を過ぎましたね、国王は引退して新しい風が必要ですね」

「もう少し我々が早く動いていればシリア様が亡くなられることもなかった。もうあの国王についていく者はあまりいない。名ばかりの国王だ、実質王太子殿下が政務を行っているんだ」

「では、わたしはワルシャイナ王国にしばらく行こうと思います。
兄に会ってきます、この国の、王太子殿下への支援を頼んで参ります」

「ロバート、そう言ってもらえると助かる。我が国よりも力のあるワルシャイナ王国の後ろ盾があれば、国王を引き摺り下ろすのも楽になる」

「その間、アイリスはわたし達が絶対に守ろう、そしてアイリスが気にしていたセルマやリイナ達だったかな?
我が侯爵家で預かろう」

「助かります、アイリスを誘き寄せるために、利用されるかもしれないと心配していました。今はラファが守ってはくれていますが、みんなが一ヶ所に集まってくれればラファも守りやすいですから」

『ラファ、アイリスに合わせる顔がない』

『今頑張らなければいつ頑張るんだ!ラファ、アイリスを今度は絶対に守ってやってくれ』

『ラファ、アイリスを守る、約束する』

「パルバン様、ラファもそちらの屋敷に行って一緒に守ってくれるそうです」

「わかった。アイリスには国王のことは話せないが、セルマ達がくることは伝えよう」

「ところでアイリスは母親の死の真相を知っているのか?」
パルバンが聞くと、ロバートは

「伝えていません、あの子は母親をなんとか助けようと必死でした。あの姿を見ていたわたしは、国王のことは話せませんでした。ただ父親の死のことは伝えました。まあ、そのあと家を出て行かれましたので本人がどう思っているかはわかりません」

「両親を祖父に殺されるなんて……あの国王は殺人の罪で裁いてやる」
ロバートは思い出し、怒りを露わにしていた。





◇ ◇ ◇

「アイリス、君が作った傷薬は騎士達の間で瞬く間に評判になってしまったよ」

パルバン様の言葉にわたしは嬉しくて

「ほんとですか?あの薬草はとても珍しいものです。もっと増やしてたくさん作ってみんなに配らなくっちゃ」

「アイリス、体は一つなんだから無理は駄目だよ。だから君は倒れてしまうんだ、精霊もいけないことをしたと思うが、君も頑張りすぎだ」

パルバン様に怒られた。

そう、わたしは夢中になると寝食を忘れて没頭してしまう。

ラファだけの所為ではない。
わたし自身もすぐに自分を追い込んでしまう。

もし、精霊が死にかけていると聞いたらわたしは自分の命のことなんか考えないで、加護の力を無理やり使い切っていたと思う。

「君に話さないといけないことがあると言ったよね。まだもう少し問題があって全て話せないんだが、今日の昼から君の大切な人たちがこの屋敷に来ることになっているんだ」

「わたしの大切な人達?」

「そうだ、君が家を出る時に残してきた人達だよ」

「え?セルマ君?………ですか?」

「そうだ、ただ、みんなが来てからしばらくはこの屋敷の外に出ないで欲しい。
君の守りを強固にしておきたいんだ」

「それは話さないといけないけど、話せないと言っていた問題の一つですか?」

「よくわかるね、君が外に出ると問題がさらに大変なことになる。セルマ君達の命にも関わるかもしれない、だからみんなこの屋敷で大人しくしていて欲しい」

「わたしがこの屋敷で過ごすことがみんなのためになるのなら、もうしばらくこちらでお世話になりたいと思います、よろしくお願いします」

わたしはパルバン様のことを信用してこの屋敷に留まることにした。

そして、お昼を過ぎた頃、リイナとミナ、アナに連れられてセルマ君がやってきた。

「まぁま、だっこぉ」

セルマ君はわたしを見るなり、リイナの手を振り払いわたしの元へ走ってきた。

「セルマ君!」
わたしはセルマ君を抱きしめて謝った。
「置いて行ってごめんなさい。すっごく寂しかったです」

「まま、もう いない、はない?」

「うん、もう黙っていなくならない、ごめんなさい」

わたしはとめどなく涙が溢れてきた。

「アイリス様、本当ですよ!黙って出て行くなんて!行く時は私たち四人も一緒に連れて行って下さい!みんなであの馬鹿な男達置いて出て行きますから!」

リイナがわたしを見て怒っていた。

なのにみんな目に涙が浮かんでいた。


「ごめんなさい、あ、あの時は頭がいっぱいでとにかく出ていかなきゃって思ってしまったの。もう二度としません」
わたしは四人にひたすら謝った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

処理中です...