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……アイリスを守る。
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「シリアの美しさはアイリスに受け継がれている……さらにユージン殿下にも似ていらっしゃる。国王が謁見すればまた昔の悪夢のような事態が起こりかねない」
ロバートはあってはならない、阻止せねばと固く誓った。
パルバンは、王太子殿下のことを話し出した。
「あの事件で一番悲しんだのは弟を亡くされた王太子殿下だった。あのお方に話をしてみようかと思っている」
「どうしようと言うのですか?」
「国王ももう60歳を過ぎていらっしゃる。そろそろ代替わりをしなければ……いや、遅すぎたくらいだ」
「そうですね、王太子殿下も40歳を過ぎましたね、国王は引退して新しい風が必要ですね」
「もう少し我々が早く動いていればシリア様が亡くなられることもなかった。もうあの国王についていく者はあまりいない。名ばかりの国王だ、実質王太子殿下が政務を行っているんだ」
「では、わたしはワルシャイナ王国にしばらく行こうと思います。
兄に会ってきます、この国の、王太子殿下への支援を頼んで参ります」
「ロバート、そう言ってもらえると助かる。我が国よりも力のあるワルシャイナ王国の後ろ盾があれば、国王を引き摺り下ろすのも楽になる」
「その間、アイリスはわたし達が絶対に守ろう、そしてアイリスが気にしていたセルマやリイナ達だったかな?
我が侯爵家で預かろう」
「助かります、アイリスを誘き寄せるために、利用されるかもしれないと心配していました。今はラファが守ってはくれていますが、みんなが一ヶ所に集まってくれればラファも守りやすいですから」
『ラファ、アイリスに合わせる顔がない』
『今頑張らなければいつ頑張るんだ!ラファ、アイリスを今度は絶対に守ってやってくれ』
『ラファ、アイリスを守る、約束する』
「パルバン様、ラファもそちらの屋敷に行って一緒に守ってくれるそうです」
「わかった。アイリスには国王のことは話せないが、セルマ達がくることは伝えよう」
「ところでアイリスは母親の死の真相を知っているのか?」
パルバンが聞くと、ロバートは
「伝えていません、あの子は母親をなんとか助けようと必死でした。あの姿を見ていたわたしは、国王のことは話せませんでした。ただ父親の死のことは伝えました。まあ、そのあと家を出て行かれましたので本人がどう思っているかはわかりません」
「両親を祖父に殺されるなんて……あの国王は殺人の罪で裁いてやる」
ロバートは思い出し、怒りを露わにしていた。
◇ ◇ ◇
「アイリス、君が作った傷薬は騎士達の間で瞬く間に評判になってしまったよ」
パルバン様の言葉にわたしは嬉しくて
「ほんとですか?あの薬草はとても珍しいものです。もっと増やしてたくさん作ってみんなに配らなくっちゃ」
「アイリス、体は一つなんだから無理は駄目だよ。だから君は倒れてしまうんだ、精霊もいけないことをしたと思うが、君も頑張りすぎだ」
パルバン様に怒られた。
そう、わたしは夢中になると寝食を忘れて没頭してしまう。
ラファだけの所為ではない。
わたし自身もすぐに自分を追い込んでしまう。
もし、精霊が死にかけていると聞いたらわたしは自分の命のことなんか考えないで、加護の力を無理やり使い切っていたと思う。
「君に話さないといけないことがあると言ったよね。まだもう少し問題があって全て話せないんだが、今日の昼から君の大切な人たちがこの屋敷に来ることになっているんだ」
「わたしの大切な人達?」
「そうだ、君が家を出る時に残してきた人達だよ」
「え?セルマ君?………ですか?」
「そうだ、ただ、みんなが来てからしばらくはこの屋敷の外に出ないで欲しい。
君の守りを強固にしておきたいんだ」
「それは話さないといけないけど、話せないと言っていた問題の一つですか?」
「よくわかるね、君が外に出ると問題がさらに大変なことになる。セルマ君達の命にも関わるかもしれない、だからみんなこの屋敷で大人しくしていて欲しい」
「わたしがこの屋敷で過ごすことがみんなのためになるのなら、もうしばらくこちらでお世話になりたいと思います、よろしくお願いします」
わたしはパルバン様のことを信用してこの屋敷に留まることにした。
そして、お昼を過ぎた頃、リイナとミナ、アナに連れられてセルマ君がやってきた。
「まぁま、だっこぉ」
セルマ君はわたしを見るなり、リイナの手を振り払いわたしの元へ走ってきた。
「セルマ君!」
わたしはセルマ君を抱きしめて謝った。
「置いて行ってごめんなさい。すっごく寂しかったです」
「まま、もう いない、はない?」
「うん、もう黙っていなくならない、ごめんなさい」
わたしはとめどなく涙が溢れてきた。
「アイリス様、本当ですよ!黙って出て行くなんて!行く時は私たち四人も一緒に連れて行って下さい!みんなであの馬鹿な男達置いて出て行きますから!」
リイナがわたしを見て怒っていた。
なのにみんな目に涙が浮かんでいた。
「ごめんなさい、あ、あの時は頭がいっぱいでとにかく出ていかなきゃって思ってしまったの。もう二度としません」
わたしは四人にひたすら謝った。
ロバートはあってはならない、阻止せねばと固く誓った。
パルバンは、王太子殿下のことを話し出した。
「あの事件で一番悲しんだのは弟を亡くされた王太子殿下だった。あのお方に話をしてみようかと思っている」
「どうしようと言うのですか?」
「国王ももう60歳を過ぎていらっしゃる。そろそろ代替わりをしなければ……いや、遅すぎたくらいだ」
「そうですね、王太子殿下も40歳を過ぎましたね、国王は引退して新しい風が必要ですね」
「もう少し我々が早く動いていればシリア様が亡くなられることもなかった。もうあの国王についていく者はあまりいない。名ばかりの国王だ、実質王太子殿下が政務を行っているんだ」
「では、わたしはワルシャイナ王国にしばらく行こうと思います。
兄に会ってきます、この国の、王太子殿下への支援を頼んで参ります」
「ロバート、そう言ってもらえると助かる。我が国よりも力のあるワルシャイナ王国の後ろ盾があれば、国王を引き摺り下ろすのも楽になる」
「その間、アイリスはわたし達が絶対に守ろう、そしてアイリスが気にしていたセルマやリイナ達だったかな?
我が侯爵家で預かろう」
「助かります、アイリスを誘き寄せるために、利用されるかもしれないと心配していました。今はラファが守ってはくれていますが、みんなが一ヶ所に集まってくれればラファも守りやすいですから」
『ラファ、アイリスに合わせる顔がない』
『今頑張らなければいつ頑張るんだ!ラファ、アイリスを今度は絶対に守ってやってくれ』
『ラファ、アイリスを守る、約束する』
「パルバン様、ラファもそちらの屋敷に行って一緒に守ってくれるそうです」
「わかった。アイリスには国王のことは話せないが、セルマ達がくることは伝えよう」
「ところでアイリスは母親の死の真相を知っているのか?」
パルバンが聞くと、ロバートは
「伝えていません、あの子は母親をなんとか助けようと必死でした。あの姿を見ていたわたしは、国王のことは話せませんでした。ただ父親の死のことは伝えました。まあ、そのあと家を出て行かれましたので本人がどう思っているかはわかりません」
「両親を祖父に殺されるなんて……あの国王は殺人の罪で裁いてやる」
ロバートは思い出し、怒りを露わにしていた。
◇ ◇ ◇
「アイリス、君が作った傷薬は騎士達の間で瞬く間に評判になってしまったよ」
パルバン様の言葉にわたしは嬉しくて
「ほんとですか?あの薬草はとても珍しいものです。もっと増やしてたくさん作ってみんなに配らなくっちゃ」
「アイリス、体は一つなんだから無理は駄目だよ。だから君は倒れてしまうんだ、精霊もいけないことをしたと思うが、君も頑張りすぎだ」
パルバン様に怒られた。
そう、わたしは夢中になると寝食を忘れて没頭してしまう。
ラファだけの所為ではない。
わたし自身もすぐに自分を追い込んでしまう。
もし、精霊が死にかけていると聞いたらわたしは自分の命のことなんか考えないで、加護の力を無理やり使い切っていたと思う。
「君に話さないといけないことがあると言ったよね。まだもう少し問題があって全て話せないんだが、今日の昼から君の大切な人たちがこの屋敷に来ることになっているんだ」
「わたしの大切な人達?」
「そうだ、君が家を出る時に残してきた人達だよ」
「え?セルマ君?………ですか?」
「そうだ、ただ、みんなが来てからしばらくはこの屋敷の外に出ないで欲しい。
君の守りを強固にしておきたいんだ」
「それは話さないといけないけど、話せないと言っていた問題の一つですか?」
「よくわかるね、君が外に出ると問題がさらに大変なことになる。セルマ君達の命にも関わるかもしれない、だからみんなこの屋敷で大人しくしていて欲しい」
「わたしがこの屋敷で過ごすことがみんなのためになるのなら、もうしばらくこちらでお世話になりたいと思います、よろしくお願いします」
わたしはパルバン様のことを信用してこの屋敷に留まることにした。
そして、お昼を過ぎた頃、リイナとミナ、アナに連れられてセルマ君がやってきた。
「まぁま、だっこぉ」
セルマ君はわたしを見るなり、リイナの手を振り払いわたしの元へ走ってきた。
「セルマ君!」
わたしはセルマ君を抱きしめて謝った。
「置いて行ってごめんなさい。すっごく寂しかったです」
「まま、もう いない、はない?」
「うん、もう黙っていなくならない、ごめんなさい」
わたしはとめどなく涙が溢れてきた。
「アイリス様、本当ですよ!黙って出て行くなんて!行く時は私たち四人も一緒に連れて行って下さい!みんなであの馬鹿な男達置いて出て行きますから!」
リイナがわたしを見て怒っていた。
なのにみんな目に涙が浮かんでいた。
「ごめんなさい、あ、あの時は頭がいっぱいでとにかく出ていかなきゃって思ってしまったの。もう二度としません」
わたしは四人にひたすら謝った。
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