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旦那様とお母様。
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「俺は愛する家族も恋人もいないが、たまに会う女性はいる、それにアイリスと俺が恋愛するとは思えないんだ」
俺はシリアに俺では無理だと断っているのだが、あきらめてくれなかった。
「アイリスを守れる人がいないの…わたしが死なないで済むならあの子を無理矢理嫁がさなくてもいいの……わたしが守れるから……でも出来ない……お願い、貴方ならアイリスを守れる…あの子には突然の結婚で戸惑ってしまうと思う。それでも理由は言わずに娶って欲しい……お願い……貴方に迷惑をかける…の…わかっているわ、この先どうなるかわからない……でも貴方なら王族から…は守ってくれると思うの……」
「何を根拠に?」
「……知ってるから……シャルマの弟は…本当は隣国の隠された王弟だって……」
「何故それを知っている?」
俺は驚いた。
俺の父上は、確かに隣国のワルシャイナ王国の前国王だ。
その昔、父上ががこの国に訪問していた時に、身分を隠して市政で過ごした時、母と知り合い恋に落ち、俺を産んだ。
母は姉のシャルマを産み、夫を亡くして一人で娘を守り生きていた。
レストランで働く母と、毎日食事に来ていた父上が仲良くなり愛し合い俺が産まれた。
もちろん父上がこの国にいたのは4ヶ月ほどだった。
だから俺が産まれたことも知らずに国へ帰った。
母は父上がワルシャイナ王国の国王だとは知らなかった。
ただ、お金持ちの貴族だとは思っていて突然姿を現さなくなった父上のことも仕方がないことだと思って諦めていたらしい。
だが俺が産まれて数年後、父上は俺たちを迎えに来てくれた。
母を愛妾として迎えるために。
だが母はそれを拒んだ。
父上にとって血の繋がらない姉のシャルマを置いていかないといけなかったからだ。
そして俺たち親子は三人で静かにこの国で暮らした。
俺がロバート商会を立ち上げて外国とのパイプを持てたのも父上が影から力添えをしてくれたからだ。
もちろん頼んでなどいないので、勝手にだが。
おかげで商会は成功してそれなりに財力も知名度もあり、その名が知れ渡ることになった。
「シャルマはそんな大事なことまで貴女に教えているのか?」
俺は姉の言動に腹を立て不機嫌になった。
「わたし……がアイリスのことでずっと悩んで…いたから…あの子は…このままでは…この国にいいようにされてしまう……あの子には後ろ盾の強力な力が必要なの、それを見兼ねて…シャルマがもしもの時は、……と、話してくれた……もちろん…貴方に甘える…つもり…はなか…った…わたしが殺される……とわかる…まで……は…」
シリアは、俺を見ているはずなのに、遠くを見ているような目になっていた。
「……おね…が…い…アイリス…を………」
シリアはそこで話すのをやめた。
いや、話せなくなった。
俺に話すのが精一杯だったのだろう。
そのまま、帰らぬ人となった。
俺はこの人のお願いをもう断ることはできなくなってしまった。
俺はすぐにシャルマに会いに行き、シリアが死んだこと、俺にアイリスを託されたことを話した。
「シリアに会いにいくわ」
姉は泣き腫らしながらも気丈に俺に微笑んだ。
「ロバート、貴方はどうせ誰のことも娶るつもりはないのでしょう?だったらアイリスを形だけでも妻にしなさい!
この国の王達からあの子を守って。
アイリスの両親は……シリア達はあの王達から殺されたの、シリアを守るはずの精霊はたぶんアイリスを守っていたんだと思う、だからシリアは守られずに亡くなったの」
「……俺にその覚悟をしろと言うのか?」
「貴方しかいない……貴方がアイリスを娶れば、精霊の力は強くなると言っていたわ、それにアイリスは二つの精霊に愛された加護の使い手。王達はシリアが死ねばすぐにアイリスを囲い込んでしまう、義父であるパーマン伯爵に早く話をつけて!」
俺は追い立てられるようにパーマン伯爵に会いに行かされた。
先触れから10日後。
まだ喪も明けていないのに、俺はなんでこんな非常識なことをしにいかなければいけないのか……
渋々行った伯爵家には、何故か新しい伯爵夫人と幸せに暮らしている伯爵と家族がいた。
「失礼だが伯爵、アイリス様はどちらに?」
俺が彼女の姿を探すと、伯爵は困り果てた顔をしていた。
「あの子は一人で自室にいます」
「まだ奥様が亡くなられたばかりなのにもう新しい家族を迎え入れるなんて…常識を疑いますね」
俺はこの伯爵を睨みつけるように言った。
「……わたしが愛する家族は今の妻と息子と娘です。アイリスは……あれは……一緒にはいられません」
伯爵は少し怯えていた。
何故だ?
いくら血が繋がらなくても娘として暮らして来たのではないか?
俺はシリアに俺では無理だと断っているのだが、あきらめてくれなかった。
「アイリスを守れる人がいないの…わたしが死なないで済むならあの子を無理矢理嫁がさなくてもいいの……わたしが守れるから……でも出来ない……お願い、貴方ならアイリスを守れる…あの子には突然の結婚で戸惑ってしまうと思う。それでも理由は言わずに娶って欲しい……お願い……貴方に迷惑をかける…の…わかっているわ、この先どうなるかわからない……でも貴方なら王族から…は守ってくれると思うの……」
「何を根拠に?」
「……知ってるから……シャルマの弟は…本当は隣国の隠された王弟だって……」
「何故それを知っている?」
俺は驚いた。
俺の父上は、確かに隣国のワルシャイナ王国の前国王だ。
その昔、父上ががこの国に訪問していた時に、身分を隠して市政で過ごした時、母と知り合い恋に落ち、俺を産んだ。
母は姉のシャルマを産み、夫を亡くして一人で娘を守り生きていた。
レストランで働く母と、毎日食事に来ていた父上が仲良くなり愛し合い俺が産まれた。
もちろん父上がこの国にいたのは4ヶ月ほどだった。
だから俺が産まれたことも知らずに国へ帰った。
母は父上がワルシャイナ王国の国王だとは知らなかった。
ただ、お金持ちの貴族だとは思っていて突然姿を現さなくなった父上のことも仕方がないことだと思って諦めていたらしい。
だが俺が産まれて数年後、父上は俺たちを迎えに来てくれた。
母を愛妾として迎えるために。
だが母はそれを拒んだ。
父上にとって血の繋がらない姉のシャルマを置いていかないといけなかったからだ。
そして俺たち親子は三人で静かにこの国で暮らした。
俺がロバート商会を立ち上げて外国とのパイプを持てたのも父上が影から力添えをしてくれたからだ。
もちろん頼んでなどいないので、勝手にだが。
おかげで商会は成功してそれなりに財力も知名度もあり、その名が知れ渡ることになった。
「シャルマはそんな大事なことまで貴女に教えているのか?」
俺は姉の言動に腹を立て不機嫌になった。
「わたし……がアイリスのことでずっと悩んで…いたから…あの子は…このままでは…この国にいいようにされてしまう……あの子には後ろ盾の強力な力が必要なの、それを見兼ねて…シャルマがもしもの時は、……と、話してくれた……もちろん…貴方に甘える…つもり…はなか…った…わたしが殺される……とわかる…まで……は…」
シリアは、俺を見ているはずなのに、遠くを見ているような目になっていた。
「……おね…が…い…アイリス…を………」
シリアはそこで話すのをやめた。
いや、話せなくなった。
俺に話すのが精一杯だったのだろう。
そのまま、帰らぬ人となった。
俺はこの人のお願いをもう断ることはできなくなってしまった。
俺はすぐにシャルマに会いに行き、シリアが死んだこと、俺にアイリスを託されたことを話した。
「シリアに会いにいくわ」
姉は泣き腫らしながらも気丈に俺に微笑んだ。
「ロバート、貴方はどうせ誰のことも娶るつもりはないのでしょう?だったらアイリスを形だけでも妻にしなさい!
この国の王達からあの子を守って。
アイリスの両親は……シリア達はあの王達から殺されたの、シリアを守るはずの精霊はたぶんアイリスを守っていたんだと思う、だからシリアは守られずに亡くなったの」
「……俺にその覚悟をしろと言うのか?」
「貴方しかいない……貴方がアイリスを娶れば、精霊の力は強くなると言っていたわ、それにアイリスは二つの精霊に愛された加護の使い手。王達はシリアが死ねばすぐにアイリスを囲い込んでしまう、義父であるパーマン伯爵に早く話をつけて!」
俺は追い立てられるようにパーマン伯爵に会いに行かされた。
先触れから10日後。
まだ喪も明けていないのに、俺はなんでこんな非常識なことをしにいかなければいけないのか……
渋々行った伯爵家には、何故か新しい伯爵夫人と幸せに暮らしている伯爵と家族がいた。
「失礼だが伯爵、アイリス様はどちらに?」
俺が彼女の姿を探すと、伯爵は困り果てた顔をしていた。
「あの子は一人で自室にいます」
「まだ奥様が亡くなられたばかりなのにもう新しい家族を迎え入れるなんて…常識を疑いますね」
俺はこの伯爵を睨みつけるように言った。
「……わたしが愛する家族は今の妻と息子と娘です。アイリスは……あれは……一緒にはいられません」
伯爵は少し怯えていた。
何故だ?
いくら血が繋がらなくても娘として暮らして来たのではないか?
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