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旦那様の約束。
しおりを挟むシリアはもう動くことも出来なくなってベッドの上で死を待つだけになっていた。
シリアの呼び出しは、娘のアイリスのことだった。
話すのもきつそうだった。
それでも彼女は必死に俺に話しかけた。
「……ロバート…、助けてもらったのに…わたしはもうすぐ死ぬわ……貴方は知っ…ているわよね?わたしには「癒し」の力があること………人の心を落ち着かせたり治癒をする力……でもね、その力は自分には効かないの……」
「自分には効かない?だから体が弱っているのか?」
「……うん…娘にも加護があるのにも気づいている…わよね?」
「あの緑の光…あれは何かの加護だろ?」
「そう……緑の使い手、あの子はあらゆる植物をどんな場所でも育てる事が出来るの、それにわたしが死ねば「癒し」の加護もあの子に移るわ……」
「二つの加護持ち?そんな事があるのか?」
「わたしの精霊が、次はアイリスのそばにいると言ってるの。だから二つの精霊の加護を……あの子はとてもすごい加護を受けてしまう……精霊と話して、あの子が成人になったら「守り人」を決めないといけない………それに貴方が選ばれたわ………
ううん、わたしが精霊にお願いしたの」
「俺が貴方の娘の「守り人」?」
「……精霊も納得してくれたの……あの子を守れる力と財力がないと、あの子はこの国に利用されてしまう…パーマン伯爵は…爵位は低いけど王家との繋がりがあって、わたしを守ってくれた……彼には愛する人がいたのに…わたしとアイリスを守って…くれたの…アイリスはあの人の子ではないの…ある人の子ども……わたしを守るため……に殺された、それを知った伯爵がわたしを娶って……くれたの…」
「アイリスは誰の子供なんだ?」
「××× ×××」
「俺にどう守れと言うんだ?俺の仕事はこの国だけではない、他の国にも行くし、ずっとこの国にいるわけでもないから守れる訳がない」
「無理なお願いだとわかってる……でもロバートだからお願いできる…ううん、ロバートしかいない…お願い、あの子はこのままでは死ぬまで王家の傀儡として生きないといけない…籍だけでいいの、貴方が好きな人と結婚できなくなることは申し訳ないとは思ってる……でも、あの子を助けて欲しいの…」
「義父である伯爵は守ってはくれないのですか?」
「わたしとの契約は、わたしが死ぬまでなの……その後は多少はアイリスを見守ってはくれると思うけど、今までと同じではない…」
「契約?」
「そう……彼はわたしを守ってくれた…そのお礼に契約をしたの……わたしが生きている間は、「癒し」の力でパーマン伯爵家の安定を保証したの…アイリスはその契約が切れたら守って貰えない…
あの子にはまだ何も説明していないの…精霊が必要な時に説明をしてくれるの……」
シリアは必死で俺に説明を続けた。
「だからあの子に今は説明はできない…
貴方にしているのは精霊が貴方を選ぶ許可をくれたから、簡単な説明だけ出来ているの……
王家は婚姻をした加護持ちには手を出せない。
精霊が加護持ちとその相手を守ってくれるから…
でも、婚姻をしていなければ王家の誰かと無理やり結婚させていいように利用するかもしれない……
今までもそうして使い捨てにされた加護持ちの人達は沢山いるの…アイリスの父親は精霊に選んで貰えなかったから助からなかった。
彼は精霊の嫌いな家の出身だったから…」
「……俺は一生結婚する予定はないんだ、こんな仕事だ、家にいることは少ないし、適当に遊んでいるのが気が楽なんだ…それにあの子と俺では年も離れているし、恋愛にはならないし、無理だ」
「アイリスと結婚してもあの子にわからないところで、別の恋人を作っても精霊は貴方に酷いことはしないわ……ただ、伯爵のようにあまりわたしに近寄れなくなるかもしれない、精霊は認めた「守り人」のことも守ってはくれるけど、わたしが距離を置きたいと思っているからか彼は近寄れないの、精霊が拒否をするの」
「よくわからないんだが…」
「精霊が選んだ「守り人」のおかげでわたしは静かな人生を過ごせる……たまに依頼で加護の使い手として仕事もするけど、馬車馬のように働いて捨てられることはない…
でも「守り人」と必ず愛し合える……わけではない、相手には別……に家庭を待っていたり恋人がいる人も居る……
わたしは彼の…別の家庭に口出しはしない、彼に愛情ではなくて信頼と友情しかないから……
でも精霊は伯爵に対して少し不機嫌でパーマン伯爵に意地悪をするの…家に入れないようにしたり、来ると…まあ嫌がらせをしたり…」
「俺は愛する家族も恋人もいないが、たまに会う女性はいる、それにアイリスと俺が恋愛するとは思えないんだ」
俺はシリアに俺では無理だと断っているのだが、あきらめてくれなかった。
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