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継母は僕が守るの

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「早く傷の手当てをしないと」

「二人とも大丈夫よ、ラファが少し手当てをしてくれたのよ、痛みは随分減って楽になったの」

わたしが大丈夫だと言うのに三人は信用してくれない。すぐにソファに座らされて、服を脱がされた。

まあ、ここには男の人はセルマ君だけだからいいのだけど、ちょっと恥ずかしい…

「なんて酷いの」
リイナは半泣きになりながらわたしが作った傷を治す塗り薬を塗ってくれた。

ミナは、ポロポロと涙を流していた。
「もうやめてください、私達を庇った所為でこんな酷い目にあって、私たちの方が見ていて辛いです、ごめんなさいアイリス様、痛かったですね」

アナは何も出来ずただ呆然と立ち尽くしていたことに罪悪感を感じていたみたいで、

「何もできなくてごめんなさい」
わんわん泣いてしまった。

「みんな、わたしなら大丈夫よ、薬師なんだから薬ですぐに治っちゃうわ」

それからまたいつものようにわたしは熱を出して寝込んでしまった。

背中の傷は、ラファが半分は治してくれたし、傷薬で傷も治ったのだけど、精神的なものなのか、体がまだ完全ではなかったからなのか、熱を出してしまった。


薬師だからって自分の体をずっと丈夫にできるわけではないんだわ。
なんてぼんやり考えながらもまだうつらうつらとしていた。

「アイリス……すまなかった、ルイーズのやつが君にこんな酷いことをして」

どこか遠くから知らない声が聞こえてきた。

なのにとても懐かしい声。

誰?

目を開けて確認したいのに、瞼が重たくて開けることが出来ない。


「ままにしゃわるな、えい!」

「こら!やめろ」

セルマ君?

うん?ラファ?

ラファの気配がしない。

『ラファ?どこ?』
わたしがどんなに呼んでも返事は返ってこなかった。

そしてそのまま意識を手放してしまった。







目が覚めると、わたしの目の前にはやはりセルマ君。

セルマ君のお尻がわたしの顔に当たってとても生温かい。

セルマ君はとても気持ちよさそうにわたしの顔にお尻を向けて蹲って寝ていた。

「ふふ、今日もセルマ君の寝相はとっても可愛いわね」

わたしの背中の痛みは取れていた。

『ラファ?ラファが治してくれたの?』

わたしはラファの気配を探した。

なのに気配を感じない。

何度もラファを呼んだ。

するとラファはシュンとしてわたしの顔の近くにく現れた。

『アイリスごめんね。完全に治してあげられなかった。守ってあげられなかった』

ラファまで泣き出した。

『ラファ、泣かないで。貴女が守ってくれたからあれ以上酷い目に遭わなかったの。それに我慢してくれてありがとう、もしラファが怒りを爆発していたら周りの人達にも何かしらの被害に遭っていたと思うの。それにラファも力の使い過ぎで倒れていたと思うのよ』

『アイリスはわたしを嫌わない?好きでいてくれる?』

『もちろんよ。だってわたしの大切なお友達なのよ?』

『大切?』

『うん!リイナ達はわたしの家族。セルマ君は……可愛い息子?かな……そしてラファはわたしが心を許せる大切な友達』

わたしにも学生の時に友達は勿論いた。

今もお手紙でのお付き合いはある。

でも心から安心して話せる程仲の良い友達はいなかった。

貴族の友達関係は、打算と表面だけの付き合いがほとんどだ。
わたしのように平民と結婚すればみんな遠のいていく。
今もお手紙を出し合っているのは、二人だけだ。

その二人はわたしが平民になってもまだ心配してくれて、手紙をくれる。
でも二人はまだ学生。
わたしとは過ごす時間が違っている。

わたしの心の中がわかるラファは、わたしの頭を静かに撫でてくれた。

わたしにはまだみんなが居てくれるから寂しくはない。
でもたまに……本当にたまになんだけど……お母様のところに行きたい。

お母様のそばにずっといたい。

そんなことを考えていると寝ぼけたセルマ君が
「まぁま、しゅき、らいしゅき」
と言ってわたしの頬をスリスリしてくれた。

『ラファ、わたしが居なくなったらセルマ君は寂しいよね?』
わたしはセルマ君の寝顔を見つめて、涙が溢れた。

「……お母様……」

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