【完結】わたしはお飾りの妻らしい。  〜16歳で継母になりました〜

たろ

文字の大きさ
上 下
10 / 53

継母は今

しおりを挟む
体がずっと重たかったのになぜか今は軽い。

ここはどこ?

わたしは見たことがない白くて明るくて温かい、でも何もない場所で寝ていた。

「アイリス、起きたの?」
優しい声。
とても懐かしい、またこの声が聞けるなんて……

わたしは寝ているはずなのに、涙が止まらなかった。

「アイリス?泣いているの?」

わたしの頭を優しく撫でる手。
これは……

「お母様?お母様なの?」

わたしは急いで起き上がると、そこに優しく微笑むお母様がいた。

「お母様!会いたかったの、わたし、助けてあげられなかった……でもでもね、生きててほしかった、なんとか助けようとしたけど出来なくてごめんなさい」

わたしはお母様に抱きついてわんわん泣いた。

声をあげて大きな声で泣いた。

「お母様、わたしもお母様のそばに居たい。ここでずっとお母様と暮らしたい」

「アイリス、貴女を待っている人がいるわ、ずっとずっと起きるのを待っている人たちがいるわ」

「でもでもね、お母様、お父様はわたしが嫌いなの、新しいお母様も異母弟、妹もわたしのことが嫌いなの。旦那様になったロバート様には恋人がいるの、わたしは必要がないの、わたしには何もない……お母様のそばに居させて、お願い、お願いします」
わたしは泣きながらお母様に訴えた。

お母様に会いたかった、本当はずっとずっと辛かった。

家族に無視されて、ロバート様にも無視されて、セルマ君は可愛いし大好きだけど、隠し子がいたことはショックだった。

学園を辞めさせられてお友達に会えなくなったことだって本当は寂しくて辛かった。

薬だって恋人のために黙って持って行ったロバート様に本当は怒っていたの。

どうして?

わたしは死ぬまで我慢しなければいけないのならもう死にたい。

精霊の加護なんて要らない。

こんなの持っていたって幸せになんてなれない!

わたしはお母様に泣きながら心の中に溜まっていたものを全て吐き出した。

お母様は悲しそうにわたしの頭を黙って撫でてくれた。

わたしはいっぱいいっぱい泣いた。
この一年、ずっと辛かった。

でも笑顔でいないと心が壊れてしまうと思い、必死で笑って過ごした。

お母様は
「ごめんね、アイリス。そばに居てあげられなくて。でも貴女はこれから大変なことがあっても幸せになれる、大丈夫よ。お父様は……不器用な方なの……いつか分かり合える時が来るといいなと思うの」

「お母様はお父様が浮気していたのに……どうして?許せるの?」

「………わたしと彼には恋愛の愛情はないの。信頼と言う関係なのよ……詳しく説明する暇はないの…わたしはもうここに居られない………愛している……見守っ……」

お母様の姿が消えて行く。

「お母様!お母様!置いて行かないで!わたしもそっちに行きたい!生きたくないの!」

わたしの声はお母様には届かなかった……………

……………

「………ア…リ………」

遠くからわたしのことを呼んでいる気がする……

「……………ま………ま………て!」

誰?わたしを呼んでいるのは誰?

わたしはみんなに捨てられた要らない子。

わたしのことを呼んでくれる人なんていない。

わたしはこのままずっとここで過ごしたいの。



『アイリス、時間だよ、そろそろ目覚めなさい』

知らない女の子がわたしを何度も起こす。

『起きたくない、このまま居させて!』

『駄目だよ、みんなが待っているから!わたしは貴女のそばでずっと見守っているから、お母様の代わりに、だから起きて!』

『貴女は誰?』

『わたしは緑の精霊。貴女が生まれた時からずっと一緒。だから一人じゃないの』

『ずっと一緒に居てくれたの?』

『うん、今までアイリスの力が弱くて話せなかったの。これからは話せると思う、だから一人じゃない、貴女のお母様の分も一緒にいるから泣かないで』

『お母様の分も?お母様……もう会えない……』

『会えないけどお母様もずっと見守ってくれているよ』

『……わたしは生きないといけないの?………生きたくない…』

わたしは泣きながら精霊に聞いた。

精霊は少し困った顔をして、でもわたしに言った。

『甘えないで!みんな待ってるわ!』

わたしは、仕方なく重い瞼をそっと開けた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたと別れて、この子を生みました

キムラましゅろう
恋愛
約二年前、ジュリアは恋人だったクリスと別れた後、たった一人で息子のリューイを生んで育てていた。 クリスとは二度と会わないように生まれ育った王都を捨て地方でドリア屋を営んでいたジュリアだが、偶然にも最愛の息子リューイの父親であるクリスと再会してしまう。 自分にそっくりのリューイを見て、自分の息子ではないかというクリスにジュリアは言い放つ。 この子は私一人で生んだ私一人の子だと。 ジュリアとクリスの過去に何があったのか。 子は鎹となり得るのか。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 ⚠️ご注意⚠️ 作者は元サヤハピエン主義です。 え?コイツと元サヤ……?と思われた方は回れ右をよろしくお願い申し上げます。 誤字脱字、最初に謝っておきます。 申し訳ございませぬ< (_"_) >ペコリ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

もう一度あなたと?

キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として 働くわたしに、ある日王命が下った。 かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、 ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。 「え?もう一度あなたと?」 国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への 救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。 だって魅了に掛けられなくても、 あの人はわたしになんて興味はなかったもの。 しかもわたしは聞いてしまった。 とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。 OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。 どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。 完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。 生暖かい目で見ていただけると幸いです。 小説家になろうさんの方でも投稿しています。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

【完結】私を忘れてしまった貴方に、憎まれています

高瀬船
恋愛
夜会会場で突然意識を失うように倒れてしまった自分の旦那であるアーヴィング様を急いで邸へ連れて戻った。 そうして、医者の診察が終わり、体に異常は無い、と言われて安心したのも束の間。 最愛の旦那様は、目が覚めると綺麗さっぱりと私の事を忘れてしまっており、私と結婚した事も、お互い愛を育んだ事を忘れ。 何故か、私を憎しみの籠った瞳で見つめるのです。 優しかったアーヴィング様が、突然見知らぬ男性になってしまったかのようで、冷たくあしらわれ、憎まれ、私の心は日が経つにつれて疲弊して行く一方となってしまったのです。

処理中です...