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40話  ジンジャー編

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アラン様と知り合ってから、わたしはいつも彼を目で追ってしまう。

両親やお兄様に劣等感を感じてお父様の言葉に傷ついている時、彼の言葉に救われた。

彼が何かをしてくれた訳ではない。

なのに何故なんだろう。




いつもアラン様の周りには人がいる。

もちろん騎士仲間や友人。

アラン様は大して愛想がいい訳でもないのに彼に惹かれて人が寄ってくる。

わたしは王宮内の図書館によく本を読みにきている。

最初はアラン様に会えるとかそんな目的ではなくて、この図書館にしかない蔵書も多く、本好きには楽しい場所として通った。

大好きなエイミー様も司書として働いていて、わたしにオススメの本を色々と紹介してくれる。

最近は陛下ともお知り合いになって、今まで知らなかった我が国の歴史などを詳しく話してくれるので会うのがとても楽しい。

でも最近は図書館に来る理由が変わった。
アラン様が護衛として陛下に付いていることが多いので密かに会えることを楽しみにしている。

アラン様と話せる訳でもないけど、姿を見れるだけで幸せだった。

なのに入ってきたアラン様の噂話にわたしは胸が痛くて、辛くて、どうしていいか分からなくなってしまった。

浮かない顔をしていたわたしを見て陛下は「何かあったの?」と聞いてきた。

わたしはアラン様をチラッと見て、「何もないです」と答えた。

すると陛下は、「ちょっと待ってて」と言うとアラン様を、陛下が手を振り、ここに来いと呼んだ。


「何かご用でしょうか?」

「ジンジャー嬢が話したい事があるそうだ」

「かしこまりました、では後日、時間がある時にでも……失礼致します」

アラン様はそう言うとさっさと去ろうとした。

陛下の前から去ろうとすると
「アラン待て、そんなに直ぐ立ち去らなくてもいいだろう。お前は今から休憩だ」

「チッ」
アラン様が舌打ちすると陛下はジロッとアラン様を見て

「わたしは帰るから、ではまた後で」
と言って陛下は去って行った。


アラン様は仕方がなさそうに言った。

「俺に用とは何でしょう?」

わたしは、俯いてしまった。
何を言えばいいのかしら?

「特に話したい事があったわけではないのです」
必死で言葉を探した。

「でしたら俺は休憩になったので、失礼します」


「……あ、あの……最近わたしのことを……避けてはいませんか?」

アラン様は嫌な顔をした。

「特に貴女と関わる用事がありませんのでお会いすることも話すこともないだけです」

確かにそうだけど……

「……そうですよね……ごめんなさい。
最近メイ・ボガード様とお付き合いをされていると噂で聞きました。それなのにわたしが話しかけたら駄目でしたね」

「え?メイと俺が付き合っている?」

「はい、メイ・ボガード様が怪我をされてアラン様が血相を変えて会いにいかれたと、皆様が話されていました」

わたしはメイ・ボガード様とアラン様のことが気になって仕方がなかった。

「なのに……アラン様はイーゼ・ジリニア様とお見合いをされたと聞きました」

わたしは二人の噂を聞いてとっても辛くて、気になって仕方がない……この気持ちをどうしていいのか分からなかった。

「俺が二股をかけていると?もし、そうだとしても君には全く関係ないし、俺にそれを聞く必要はないよね?」

わたしは聞いてはいけないことを聞いたのだと分かっていた。
だってアラン様の彼女でもないし、そんなに仲が良い訳でもない。
何度か助けていただいただけで、特別親しい訳でもない。

「………す、すみません、気になってしまって……」

わたしは目に涙がたまって下を向いてしまった。

「失礼する」

アラン様の冷たい一言にわたしは固まってしまった。

図書館にはわたしとアラン様の話を聞き耳立てて聞いている人が多かった。

「あの子、アラン様の知り合いかしら?」

「あんな風に聞いたら怒るのもわかるわ、まるで浮気でもしているみたいに言われてアラン様、可哀想よ」

わたしが言った言葉はやはり駄目だったんだと……周りの人のヒソヒソ話で感じた。

でも我慢できなかった。

アラン様が誰か一人に視線を向けている姿を考えると悲しくて辛かった。

これが恋だと自覚してから、ずっと落ち込んでいた。

陛下にボソッと話したら、「アランに直接聞いてみたら?」と機会を与えてくれた。

なのにあんな聞き方しかできなくて……

怒らせてしまった。

わたしはしばらく呆然としていた。





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