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番外編 イルーダ王国編
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この国で暮らしだして数ヶ月が経った。
全く知り合いがいなかった生活から今はご近所さんとも仲良くなった。
隣の家にはまだ小さな女の子と赤ちゃんがいるご夫婦。
頼まれて二人の子供の面倒を見ることもある。
小さな子どもに縁などなかったわたしが今ではオムツもかえられるし、ミルクも作って飲ませてあげることができる。
女の子は3歳でアリスちゃん、とっても可愛い女の子でお話も上手。
「アイシャちゃん、おままごとしよう?」
そう言ってわたしがお母さん役をして、赤ちゃんのバードくんがそのまま赤ちゃん役、アリスちゃんはお姉さん役で毎回おままごとが始まる。
「ママ、きょうもパパはおしごと?」
「ママがさびしがってかわいそうだからずっといっしょにいてあげる」
「バードがないているわ、ママはいそがしいからアリスがおむつかえるね?」
「ママ、おなかすいた、ごはんたべたいわ」
「もう、ママがしっかりしないからバードがねむらないわ、バードねてちょうだい、うるさいわ」
など次から次へと出てくるセリフにわたしは笑いを堪えながら、アリスちゃんとおままごとをした。
わたしの人生でこんな穏やかで楽しい日々を送れるなんて思わなかった。
そして、近所にはおじいちゃん夫婦も住んでいて、その二人はたまに夕方から遊びに来て、一緒に食事をすることもある。
「アイシャちゃん、パイを焼いたのよ」
「これね、たくさん野菜が採れたから持ってきたわ」
家庭菜園をしているおばあちゃんがたくさん野菜が採れるとおすそ分けを持ってやってくる。
料理もまだまだレパートリーが少ないわたしのためにシチューを作ってくれたり、パンの焼き方を教えてくれたりと、色々と世話を焼いてくれる。
ご近所さんのおかげでわたしは昼間一人でいても寂しくない。
誰かしら声をかけてくれていつも賑やかに暮らしている。
キリアン様は、昼間は仕事で出掛けてしまう。彼の仕事は、お医者様。
癒しの魔法と医療技術で人々の病気を治している。
わたしもキリアン様に教えてもらい、週に2日ほどは教会で医者に診てもらえない貧しい人の病気を治療させてもらっている。
ある日家に帰ろうとした時、家から慌てて女の子を抱えた女性とぶつかってしまった。
その女性がアリスちゃんのお母さんでリズさんだった。
「ごめんなさい、急いでいて。怪我はなかった?」
リズさんは青い顔をしてぐったりしているアリスちゃんを抱えて震えていた。
「その女の子はどうしたんですか?」
「突然ぐったりして、呼吸がおかしいんです」
「わたし、癒しの魔法が使えます。家の中に入ってもいいですか?」
わたしは無理やり家の中に入って、アリスちゃんの診察をした。
「間違えて何か口に入れたのではないですか?」
「……あ、まさか」
リズさんがキッチンへ行くと、戻ってきて震えていた。
「コップに入れていた、除草剤を間違えて飲んでしまったかも…少し量が減っています」
除草剤……子どもにとっては一口でも毒になってしまう。わたしはすぐに口に指を入れて吐かせた。
アリスちゃんはゴホゴホと苦しそうに胃の中のものを吐いた。
そしてたくさんの水を飲ませてまた吐かせた。
ある程度したところで、ぐったりしているアリスちゃんにわたしは癒しの魔法をかけた。
すると、穏やかな顔になって眠りについた。
「たぶんもう大丈夫だと思います。わたしは隣の家に住んでいるアイシャと言います。いつでもいいのでまた体調が急変したら声をかけてください」
「ありがとうございます、お隣に引っ越してきたのは知っていました。挨拶もしていなくてすみません。本当に助かりました」
「いいえ、お隣の方は子どもが生まれて実家に帰っていると聞いていたんです。これからよろしくお願いします」
そんなことがあって、わたしはリズさんと仲良くなってアリスちゃんと友達になった。
近所のおじいちゃん夫婦は、わたしが昼間夕食の準備でパンを焼こうとしていた時に、
「あーーー!」
と、叫んでいると、
「大丈夫?」
と慌ててわたしの家の前を通りがかったおじいちゃん夫婦がわたしの家に突然入ってきたのがキッカケだった。
わたしはパンをまる焦げにして、家の中から焦げた匂いとオーブンを開けて出てきた煙が充満していた。さらにわたしの叫び声に二人が驚いて入ってきた。
わたしの炭になったパンの残骸を見ておばあちゃんは大笑いをしていた。
おじいちゃんは呆気に取られていた。
それからおばあちゃんがパンの焼き方を丁寧に教えてくれた。
いろんなパンの焼き方を教えてくれていつの間にか仲良くなり、一緒に食事を摂ることも増えた。
キリアン様はわたしが近所の人と仲良くなったことをとても喜んでくれた。
「アイシャが幸せに笑ってくれているのが俺も嬉しいよ」
わたしは今とても幸せ。
アリスちゃんやバードくんを見ていると、わたしも早く赤ちゃんが欲しいと思うようになった。
でも……キリアン様はわたし達の子供を望んでいないようだった。
はっきりと嫌だとは言わないけどやんわりと話を逸らす。
だからわたしも子どもが欲しいと言えなくて……どうして?と聞きたいけど聞けないでいた。
そんなある日、わたしがアリスちゃんとバードくんとお庭で遊んでいると知らない男の人が我が家を訪ねてきた。
「すみません、キリアン殿の家はこちらだと聞いたのですが」
わたしが子供達と遊んでいたので、驚いた様子だった。
「あ、もしかしてキリアン様のお知り合いですか?この子達はキリアン様の子供ではありませんよ。隣のお家の子供達なんです」
わたしは、男の人に笑顔で話しかけた。
たぶん、キリアン様にこんな大きな子がいるとは思わずに驚いたのだろう。一応言い訳をしたのだけど、男の人はクスッと笑うと
「流石に結婚したばかりなのにこんな大きな子がいたので驚きました。貴女はキリアン殿の奥方かな?」
わたしは慌てて立ってスカートについている汚れを叩いて挨拶をした。
「キリアンの妻のアイシャと申します」
「わたしは……「よかったら中に入りませんか?」
わたしは二人を連れて家に入った。
「どうぞ、座っていてください」
「アイシャちゃん、バードとここであそんでていい?」
アリスちゃんはラグの上に座ってバードくんを相手に遊んでくれた。
わたしはバードくんのミルクを作り、アリスちゃんにはジュースを入れて渡すと、アリスちゃんは慣れたものでバードくんにミルクを飲ませてくれた。
それから、お茶の用意をしてわたしが焼いたクッキーをアリスちゃんにもあげてから、お客様にお出しした。
「ああ、ありがとう」
男性は子供達の姿を見つめてにこりと微笑んでいた。
「子供は可愛いね」
「ふふ、そうですね、キリアン様がお仕事に行っている昼間は二人がわたしの相手をしてくれるんです」
「では、こちらの国に来ても寂しくないんだね」
「はい、ご近所の方達にはとてもお世話になっているんです、それにキリアン様も早く仕事を終わらせて帰ってきてくれます」
「そうか……幸せなんだね」
「はい、わたしはキリアン様にたくさん幸せをもらっています。彼のおかげでわたしはどんなに苦しくても乗り越えることができました」
「君はわたしのことを何も聞かないんだね」
「聞かなくてもわかります。たまにお時間がある時に遊びに来て下さい。キリアン様がいる時にはまだ無理かもしれませんがわたし一人の時ならいつでもお相手できますので」
「わたしが誰かわかっているのかい?」
「キリアン様のお父様ですよね?」
「そうか……名乗らなくてもわかるものなんだね」
「貴方の纏っている魔力がキリアン様と同じなのです。お顔を変えていても纏っている魔力は変えることが出来ません」
「さすが、強い魔力を持ち魔力に愛された娘だね」
「キリアン様や貴方には敵いません」
「君は公爵令嬢だったね、前世も今世も」
「はい」
「だからわたしのことも怖くないのだろうね、さすが王族の血が流れた娘だ」
「全てご存知なのですね」
「自分の息子の嫁だからね、しっかり調べたよ」
「わたしもキリアン様もこの国では平民として細々と暮らしております。この幸せをずっと守って暮らしたい、そう思っています。キリアン様のお義父様、平民としてたまに遊びに来てもらえると嬉しいです」
「………キリアンはわたしがここにくることを良しとしないだろう」
「そうかもしれません、今日来られたこともわかると思います、でもわたしがお義父様にお会いすることを止めることはないと思います」
「わかった、今日は美味しいお菓子とお茶、ご馳走になった、次は何か子供達にお土産を持って会いにこよう」
「ぜひお待ちしております」
ーーー次のお話は、2、3日後になります
全く知り合いがいなかった生活から今はご近所さんとも仲良くなった。
隣の家にはまだ小さな女の子と赤ちゃんがいるご夫婦。
頼まれて二人の子供の面倒を見ることもある。
小さな子どもに縁などなかったわたしが今ではオムツもかえられるし、ミルクも作って飲ませてあげることができる。
女の子は3歳でアリスちゃん、とっても可愛い女の子でお話も上手。
「アイシャちゃん、おままごとしよう?」
そう言ってわたしがお母さん役をして、赤ちゃんのバードくんがそのまま赤ちゃん役、アリスちゃんはお姉さん役で毎回おままごとが始まる。
「ママ、きょうもパパはおしごと?」
「ママがさびしがってかわいそうだからずっといっしょにいてあげる」
「バードがないているわ、ママはいそがしいからアリスがおむつかえるね?」
「ママ、おなかすいた、ごはんたべたいわ」
「もう、ママがしっかりしないからバードがねむらないわ、バードねてちょうだい、うるさいわ」
など次から次へと出てくるセリフにわたしは笑いを堪えながら、アリスちゃんとおままごとをした。
わたしの人生でこんな穏やかで楽しい日々を送れるなんて思わなかった。
そして、近所にはおじいちゃん夫婦も住んでいて、その二人はたまに夕方から遊びに来て、一緒に食事をすることもある。
「アイシャちゃん、パイを焼いたのよ」
「これね、たくさん野菜が採れたから持ってきたわ」
家庭菜園をしているおばあちゃんがたくさん野菜が採れるとおすそ分けを持ってやってくる。
料理もまだまだレパートリーが少ないわたしのためにシチューを作ってくれたり、パンの焼き方を教えてくれたりと、色々と世話を焼いてくれる。
ご近所さんのおかげでわたしは昼間一人でいても寂しくない。
誰かしら声をかけてくれていつも賑やかに暮らしている。
キリアン様は、昼間は仕事で出掛けてしまう。彼の仕事は、お医者様。
癒しの魔法と医療技術で人々の病気を治している。
わたしもキリアン様に教えてもらい、週に2日ほどは教会で医者に診てもらえない貧しい人の病気を治療させてもらっている。
ある日家に帰ろうとした時、家から慌てて女の子を抱えた女性とぶつかってしまった。
その女性がアリスちゃんのお母さんでリズさんだった。
「ごめんなさい、急いでいて。怪我はなかった?」
リズさんは青い顔をしてぐったりしているアリスちゃんを抱えて震えていた。
「その女の子はどうしたんですか?」
「突然ぐったりして、呼吸がおかしいんです」
「わたし、癒しの魔法が使えます。家の中に入ってもいいですか?」
わたしは無理やり家の中に入って、アリスちゃんの診察をした。
「間違えて何か口に入れたのではないですか?」
「……あ、まさか」
リズさんがキッチンへ行くと、戻ってきて震えていた。
「コップに入れていた、除草剤を間違えて飲んでしまったかも…少し量が減っています」
除草剤……子どもにとっては一口でも毒になってしまう。わたしはすぐに口に指を入れて吐かせた。
アリスちゃんはゴホゴホと苦しそうに胃の中のものを吐いた。
そしてたくさんの水を飲ませてまた吐かせた。
ある程度したところで、ぐったりしているアリスちゃんにわたしは癒しの魔法をかけた。
すると、穏やかな顔になって眠りについた。
「たぶんもう大丈夫だと思います。わたしは隣の家に住んでいるアイシャと言います。いつでもいいのでまた体調が急変したら声をかけてください」
「ありがとうございます、お隣に引っ越してきたのは知っていました。挨拶もしていなくてすみません。本当に助かりました」
「いいえ、お隣の方は子どもが生まれて実家に帰っていると聞いていたんです。これからよろしくお願いします」
そんなことがあって、わたしはリズさんと仲良くなってアリスちゃんと友達になった。
近所のおじいちゃん夫婦は、わたしが昼間夕食の準備でパンを焼こうとしていた時に、
「あーーー!」
と、叫んでいると、
「大丈夫?」
と慌ててわたしの家の前を通りがかったおじいちゃん夫婦がわたしの家に突然入ってきたのがキッカケだった。
わたしはパンをまる焦げにして、家の中から焦げた匂いとオーブンを開けて出てきた煙が充満していた。さらにわたしの叫び声に二人が驚いて入ってきた。
わたしの炭になったパンの残骸を見ておばあちゃんは大笑いをしていた。
おじいちゃんは呆気に取られていた。
それからおばあちゃんがパンの焼き方を丁寧に教えてくれた。
いろんなパンの焼き方を教えてくれていつの間にか仲良くなり、一緒に食事を摂ることも増えた。
キリアン様はわたしが近所の人と仲良くなったことをとても喜んでくれた。
「アイシャが幸せに笑ってくれているのが俺も嬉しいよ」
わたしは今とても幸せ。
アリスちゃんやバードくんを見ていると、わたしも早く赤ちゃんが欲しいと思うようになった。
でも……キリアン様はわたし達の子供を望んでいないようだった。
はっきりと嫌だとは言わないけどやんわりと話を逸らす。
だからわたしも子どもが欲しいと言えなくて……どうして?と聞きたいけど聞けないでいた。
そんなある日、わたしがアリスちゃんとバードくんとお庭で遊んでいると知らない男の人が我が家を訪ねてきた。
「すみません、キリアン殿の家はこちらだと聞いたのですが」
わたしが子供達と遊んでいたので、驚いた様子だった。
「あ、もしかしてキリアン様のお知り合いですか?この子達はキリアン様の子供ではありませんよ。隣のお家の子供達なんです」
わたしは、男の人に笑顔で話しかけた。
たぶん、キリアン様にこんな大きな子がいるとは思わずに驚いたのだろう。一応言い訳をしたのだけど、男の人はクスッと笑うと
「流石に結婚したばかりなのにこんな大きな子がいたので驚きました。貴女はキリアン殿の奥方かな?」
わたしは慌てて立ってスカートについている汚れを叩いて挨拶をした。
「キリアンの妻のアイシャと申します」
「わたしは……「よかったら中に入りませんか?」
わたしは二人を連れて家に入った。
「どうぞ、座っていてください」
「アイシャちゃん、バードとここであそんでていい?」
アリスちゃんはラグの上に座ってバードくんを相手に遊んでくれた。
わたしはバードくんのミルクを作り、アリスちゃんにはジュースを入れて渡すと、アリスちゃんは慣れたものでバードくんにミルクを飲ませてくれた。
それから、お茶の用意をしてわたしが焼いたクッキーをアリスちゃんにもあげてから、お客様にお出しした。
「ああ、ありがとう」
男性は子供達の姿を見つめてにこりと微笑んでいた。
「子供は可愛いね」
「ふふ、そうですね、キリアン様がお仕事に行っている昼間は二人がわたしの相手をしてくれるんです」
「では、こちらの国に来ても寂しくないんだね」
「はい、ご近所の方達にはとてもお世話になっているんです、それにキリアン様も早く仕事を終わらせて帰ってきてくれます」
「そうか……幸せなんだね」
「はい、わたしはキリアン様にたくさん幸せをもらっています。彼のおかげでわたしはどんなに苦しくても乗り越えることができました」
「君はわたしのことを何も聞かないんだね」
「聞かなくてもわかります。たまにお時間がある時に遊びに来て下さい。キリアン様がいる時にはまだ無理かもしれませんがわたし一人の時ならいつでもお相手できますので」
「わたしが誰かわかっているのかい?」
「キリアン様のお父様ですよね?」
「そうか……名乗らなくてもわかるものなんだね」
「貴方の纏っている魔力がキリアン様と同じなのです。お顔を変えていても纏っている魔力は変えることが出来ません」
「さすが、強い魔力を持ち魔力に愛された娘だね」
「キリアン様や貴方には敵いません」
「君は公爵令嬢だったね、前世も今世も」
「はい」
「だからわたしのことも怖くないのだろうね、さすが王族の血が流れた娘だ」
「全てご存知なのですね」
「自分の息子の嫁だからね、しっかり調べたよ」
「わたしもキリアン様もこの国では平民として細々と暮らしております。この幸せをずっと守って暮らしたい、そう思っています。キリアン様のお義父様、平民としてたまに遊びに来てもらえると嬉しいです」
「………キリアンはわたしがここにくることを良しとしないだろう」
「そうかもしれません、今日来られたこともわかると思います、でもわたしがお義父様にお会いすることを止めることはないと思います」
「わかった、今日は美味しいお菓子とお茶、ご馳走になった、次は何か子供達にお土産を持って会いにこよう」
「ぜひお待ちしております」
ーーー次のお話は、2、3日後になります
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