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75話 再会編
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「お祖父様はわたしを、わたしの心を救ってくれました。今度はわたしがお祖父様の大事な娘を助ける番です。わたしがどこまでできるかわかりませんが少しでもよくなればいいと思っています」
ーーお母様……絶対に助けるから……死なないで。
わたしはお母様が怖い。でも、死んで欲しくなんてない。
わたしは学園を転校した。北の領地は王都から馬車で14日程かかる遠い場所。
治療に何度も通うには難しい。
幼い頃に何度か訪れたことはある。
自然豊かではあるが冬になると寒さが厳しい。
でも北の領地には美味しい魚がたくさんん獲れるし、農作物もこの場所でしか作れないものもある。
だから田舎ではあるが領民達の生活は豊かな場所でもある。
人々は穏やかで温かく迎えてくれる。
メリッサとロウトは今回もついて来てくれた。
さすがにミケランは寒い場所なので悩んだが、置いていけば捻くれて部屋中の壁や柱を爪でガリガリしたり、おしっこを至る所でしたりして嫌がらせをするので、やはり連れて行くことにした。
14日間の長旅はとても疲れた。
お母様が王都に戻って来て治療できないのもこの場所があまりにも遠いのも一つの理由だろうと思った。
そして、お祖母様の屋敷の前に立ち、わたしはこれからここに居る全ての人の前で前世のアイシャのフリをしなければいけない。
お父様はお祖母様だけには伝えたと言っていた。
でも使用人達にはどこで漏れるかわからないので、わたしはアイシャだけどアイシャではない。
なので、ただの客として扱うように伝えてもらっている。
屋敷に入ると記憶にある侍女長がわたしを懐かしそうに見ていた。
わたしは、初めて会った人のように
「初めまして、アイシャと申します。この度はしばらくこちらにご厄介になります」
頭を深々と下げて挨拶をした。
「…アイシャ様……」
言葉をなくした侍女長はわたしを呆然と見つめ、悲しそうに顔を顰めた。
「本当にわたし達をお忘れなのですね」
ーーごめんなさい。本当は全てを覚えているのに。幼い頃、抱っこしてくれたこと、一緒にお菓子を作ったこと、森の散策に行ってみんなで昼食をとったこと。
笑い合ったあの懐かしい日々をわたしはなかったことにしている。
それでも……わたしはお母様の前で「娘」ではいられない。わたしは前世のアイシャとして振る舞うと決めたのだから。
「ここはとても自然が多くて良い所みたいですね、学校の手続きをしてくださってありがとう。出来れば明日から学校にも通いたいのですが、大丈夫かしら?」
「はい、全て手続きは済んでおります。制服も用意しておりますので」
「ありがとう、ハイド様のお母様のカレン夫人にご挨拶をしたいのですが、いらっしゃいますか?」
侍女長はもう顔には出さずに笑顔で客として迎えてくれた。
「はい、奥様のところへご案内致します」
ーーーー
お祖母様のところへ案内されるとすぐに人払いをされて二人っきりになった。
「アイシャ、わざわざすまないわね」
「お祖母様……わたしの我儘を聞いて貰ってありがとうございます」
「何を……貴女の両親は、アイシャを傷つけてばかりで……もうリサには会いたくはないだろうに……ハイドが貴女を頼って……ごめんなさいね」
「お母様の具合は?」
「……末期の悪性腫瘍だと言われたわ。なのに本人はもう治療は要らないと言って死を待っているだけなの」
「どうして?助かる道はあるのに…」
「リサはね……娘の貴女に嫉妬をしていたの。自分よりも優れた魔法の才能、魔力、そして魔力を持つ者にとって一番憧れる無属性。アイシャはリサを軽く超える才能を持っているのね、リサも初めは単純に娘の才能に喜んでいたけど……リサが優秀とこの国で讃えられていたからこそ、その嫉妬は抑えていても本人も気がつかないうちに増長していったみたいなの。
私達のように普通の魔力ならそんなことは思わなかったのだろうけど、リサはずっとこの国でトップでい続けたから、本人も気がついたらもう止められなかったみたい……
ここに来た時のリサは心が壊れていたの、自分が娘を不幸にしたことにやっと気がついて、もう取り返しがつかないとわかったから……そして…病気がわかっても誰にも言わずにいたの……わたし達が気がついた時には病気は手遅れになっていたのよ」
「お母様がわたしに嫉妬?」
「才能がある者は、自分より上の人に嫉妬をし、歪んでしまう。それを自分では気づいてすらいない……リサは、ここでわたしと話をずっとして過ごしたの、アイシャの生まれた時のこと、初めて母乳を飲ませた日の幸せだった思い、寝返りを打った時の喜び、アイシャが初めて歩いた日のこと、「おかあさま」と呼んでくれた日のこと、ターナが生まれてアイシャがお姉ちゃんになった日のアイシャの嬉しそうな顔。
リサはやっと思い出したのよ、アイシャを育ててどんなに幸せだったか、愛していたか………いまさら遅いのにね、やり直せないのに……
だからリサはもう自分が壊したことを、もう戻れないことをわかって…病気を受け入れたのだと思うの」
「お母様がわたしを愛していた?
……わたしはお母様に愛されたかった。でもお母様はわたしをみていなかったんです。わたしを見る目はとても……怖かった…ターナを見るようにわたしのことも見て欲しいと何度も心の中で願って……いい子でいれば……明るくしていれば……我儘言わなければ……わたしはなんとかわたしにも微笑んで欲しかった。
でもお母様は作り笑いしかわたしにはしなかった……」
「……全て、リサとハイドのせいなの。
ターナも親の姿を見て育ったからアイシャに対してバカにしようと蔑もうと何も言われないとわかっていたのだと思うの。ターナをあんな子に育てたのもあの二人のせいでもあると思うのよ。
もちろんターナの我儘で自己中心的な性格は元々ではあるのかもしれないけどね」
お祖母様は苦笑いをしていた。
「お祖母様、わたしはお祖母様のことも屋敷ではカレン夫人と呼ばせてもらいますね」
「……わかったわ、ではアイシャ……いえアイシャさん、リサに会っていただけるかしら?」
「もちろんです、カレン夫人」
ーーお母様……絶対に助けるから……死なないで。
わたしはお母様が怖い。でも、死んで欲しくなんてない。
わたしは学園を転校した。北の領地は王都から馬車で14日程かかる遠い場所。
治療に何度も通うには難しい。
幼い頃に何度か訪れたことはある。
自然豊かではあるが冬になると寒さが厳しい。
でも北の領地には美味しい魚がたくさんん獲れるし、農作物もこの場所でしか作れないものもある。
だから田舎ではあるが領民達の生活は豊かな場所でもある。
人々は穏やかで温かく迎えてくれる。
メリッサとロウトは今回もついて来てくれた。
さすがにミケランは寒い場所なので悩んだが、置いていけば捻くれて部屋中の壁や柱を爪でガリガリしたり、おしっこを至る所でしたりして嫌がらせをするので、やはり連れて行くことにした。
14日間の長旅はとても疲れた。
お母様が王都に戻って来て治療できないのもこの場所があまりにも遠いのも一つの理由だろうと思った。
そして、お祖母様の屋敷の前に立ち、わたしはこれからここに居る全ての人の前で前世のアイシャのフリをしなければいけない。
お父様はお祖母様だけには伝えたと言っていた。
でも使用人達にはどこで漏れるかわからないので、わたしはアイシャだけどアイシャではない。
なので、ただの客として扱うように伝えてもらっている。
屋敷に入ると記憶にある侍女長がわたしを懐かしそうに見ていた。
わたしは、初めて会った人のように
「初めまして、アイシャと申します。この度はしばらくこちらにご厄介になります」
頭を深々と下げて挨拶をした。
「…アイシャ様……」
言葉をなくした侍女長はわたしを呆然と見つめ、悲しそうに顔を顰めた。
「本当にわたし達をお忘れなのですね」
ーーごめんなさい。本当は全てを覚えているのに。幼い頃、抱っこしてくれたこと、一緒にお菓子を作ったこと、森の散策に行ってみんなで昼食をとったこと。
笑い合ったあの懐かしい日々をわたしはなかったことにしている。
それでも……わたしはお母様の前で「娘」ではいられない。わたしは前世のアイシャとして振る舞うと決めたのだから。
「ここはとても自然が多くて良い所みたいですね、学校の手続きをしてくださってありがとう。出来れば明日から学校にも通いたいのですが、大丈夫かしら?」
「はい、全て手続きは済んでおります。制服も用意しておりますので」
「ありがとう、ハイド様のお母様のカレン夫人にご挨拶をしたいのですが、いらっしゃいますか?」
侍女長はもう顔には出さずに笑顔で客として迎えてくれた。
「はい、奥様のところへご案内致します」
ーーーー
お祖母様のところへ案内されるとすぐに人払いをされて二人っきりになった。
「アイシャ、わざわざすまないわね」
「お祖母様……わたしの我儘を聞いて貰ってありがとうございます」
「何を……貴女の両親は、アイシャを傷つけてばかりで……もうリサには会いたくはないだろうに……ハイドが貴女を頼って……ごめんなさいね」
「お母様の具合は?」
「……末期の悪性腫瘍だと言われたわ。なのに本人はもう治療は要らないと言って死を待っているだけなの」
「どうして?助かる道はあるのに…」
「リサはね……娘の貴女に嫉妬をしていたの。自分よりも優れた魔法の才能、魔力、そして魔力を持つ者にとって一番憧れる無属性。アイシャはリサを軽く超える才能を持っているのね、リサも初めは単純に娘の才能に喜んでいたけど……リサが優秀とこの国で讃えられていたからこそ、その嫉妬は抑えていても本人も気がつかないうちに増長していったみたいなの。
私達のように普通の魔力ならそんなことは思わなかったのだろうけど、リサはずっとこの国でトップでい続けたから、本人も気がついたらもう止められなかったみたい……
ここに来た時のリサは心が壊れていたの、自分が娘を不幸にしたことにやっと気がついて、もう取り返しがつかないとわかったから……そして…病気がわかっても誰にも言わずにいたの……わたし達が気がついた時には病気は手遅れになっていたのよ」
「お母様がわたしに嫉妬?」
「才能がある者は、自分より上の人に嫉妬をし、歪んでしまう。それを自分では気づいてすらいない……リサは、ここでわたしと話をずっとして過ごしたの、アイシャの生まれた時のこと、初めて母乳を飲ませた日の幸せだった思い、寝返りを打った時の喜び、アイシャが初めて歩いた日のこと、「おかあさま」と呼んでくれた日のこと、ターナが生まれてアイシャがお姉ちゃんになった日のアイシャの嬉しそうな顔。
リサはやっと思い出したのよ、アイシャを育ててどんなに幸せだったか、愛していたか………いまさら遅いのにね、やり直せないのに……
だからリサはもう自分が壊したことを、もう戻れないことをわかって…病気を受け入れたのだと思うの」
「お母様がわたしを愛していた?
……わたしはお母様に愛されたかった。でもお母様はわたしをみていなかったんです。わたしを見る目はとても……怖かった…ターナを見るようにわたしのことも見て欲しいと何度も心の中で願って……いい子でいれば……明るくしていれば……我儘言わなければ……わたしはなんとかわたしにも微笑んで欲しかった。
でもお母様は作り笑いしかわたしにはしなかった……」
「……全て、リサとハイドのせいなの。
ターナも親の姿を見て育ったからアイシャに対してバカにしようと蔑もうと何も言われないとわかっていたのだと思うの。ターナをあんな子に育てたのもあの二人のせいでもあると思うのよ。
もちろんターナの我儘で自己中心的な性格は元々ではあるのかもしれないけどね」
お祖母様は苦笑いをしていた。
「お祖母様、わたしはお祖母様のことも屋敷ではカレン夫人と呼ばせてもらいますね」
「……わかったわ、ではアイシャ……いえアイシャさん、リサに会っていただけるかしら?」
「もちろんです、カレン夫人」
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