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66話
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キリアン様に傷を負わせてからわたしは部屋にこもるようになった。
学園には通っている。
アリアともスピナとも仲よく過ごしている。
ロウトの弟のヴィズ達もいつもわたしに声をかけてくれる。
学園では明るいアイシャでいられる。
だけど、お祖父様の家に帰ると、メリッサやロウト、他の使用人達とどんなに楽しく過ごしてもわたしは孤独だと感じる。
求めては行けない、家族の温かさを求めてしまう。
「……お父様に会いたい、お兄様に会いたい」
わたしと融合したアイシャ。
その記憶に残るバナッシユ国で過ごした幸せな日々。
思い出すと涙が出てくる。
「会いたい」
お祖父様はわたしを大切にしてくれる。
でも心にぽっかりと空いた大きな穴は、どんどん広がっていった。
◇ ◇ ◇
「アイシャ様が最近無理して笑っているの」
メリッサがロウトに相談をしていた。
「ああ分かってる。だが俺たちではどうしようもない」
キリアン様の一件からアイシャ様の顔から笑顔が消えた。
いや、無理して笑っているのだ。
「俺たちに出来ることはただ見守ることだけだ」
「分かってる、でも、せめてキリアン様にだけでも相談できないかしら?」
使用人でしかない自分達が、どこまで話をできるのだろう。
自分達のいる立ち位置はあまりにも力がなさすぎる。
それでも大切な主人のために二人はキリアン様に話すことにした。
今もアイシャ様の魔法の指導に顔を出しているキリアン様。
あの魔力の暴走から、アイシャ様は時々断るようになった。
それでも暴走してしまった魔力を制御できるようにとアイシャ様はなんとか頑張ってはいるようだ。
俺たちは屋敷に来られたキリアン様に話を聞いて欲しいとお願いをした。
「うん、アイシャの様子が気になっていたんだ」
アイシャ様の指導が終わってから三人で話すことが出来た。
キリアン様もやはりアイシャ様の酷い落ち込みを心配していた。
「アイシャは今どんな様子なの?」
「はい、部屋に篭ることが増えております」
メリッサが暗い顔をして答えた。
「学園では友達と楽しそうに過ごしているようですが無理して笑っているみたいです」
ロウトが答えた。
「……わたしがお部屋で仕事をしている時、アイシャ様が……眠っていらっしゃって……寝言を……
『お父様、お兄様』と……目から涙が溢れておりました」
「お父様、お兄様……それはバナッシユ国の?」
「はい、キリアン様もご存知だと思います。もう一人のアイシャ様の時、ご実家で過ごしていたアイシャ様は幸せそうに過ごしていました。あの時のことを思い出しているのではないでしょうか?」
「……アイシャはこの国に転生して、両親に捨てられたと感じているのかもしれないね、それにもうすぐ俺もバナッシユ国へ帰るんだ、そのことを聞いたアイシャは暴走してしまったんだ。アイシャにとってそばにいてくれた人がいなくなることはとても寂しく辛いことなんだと思う。
……アイシャを置いて帰るのは俺も心配なんだ、連れて帰ってしまいたいよ」
「お帰りになるのはいつ頃ですか?」
「あと2ヶ月くらいかな……俺もここに留学してきた身だからね、そろそろ帰らないといけないんだ、向こうから早く帰って来いってうるさいんだ」
「アイシャ様はまた寂しがりますね」
「俺もアイシャを連れて帰りたいよ、せめてアイシャが16歳の成人を迎えていれば彼女の意思でバナッシユ国へ行けるんだけどね」
「その時はわたし達もついて行きたいです」
「勝手にここで話を進めることはできないけど、そうなったらアイシャの暗い顔も少しは明るくなるかな?」
「わたし達はアイシャ様が幸せならどこまでもついて行きます。どうかキリアン様、考えてみてはいただけませんか?」
俺は本気でアイシャ様の行く先を心配していた。もちろん本人の意思を聞いたわけではない。それでもずっとそばに居る二人にはアイシャ様の気持ちが痛いほどわかるのだった。
学園には通っている。
アリアともスピナとも仲よく過ごしている。
ロウトの弟のヴィズ達もいつもわたしに声をかけてくれる。
学園では明るいアイシャでいられる。
だけど、お祖父様の家に帰ると、メリッサやロウト、他の使用人達とどんなに楽しく過ごしてもわたしは孤独だと感じる。
求めては行けない、家族の温かさを求めてしまう。
「……お父様に会いたい、お兄様に会いたい」
わたしと融合したアイシャ。
その記憶に残るバナッシユ国で過ごした幸せな日々。
思い出すと涙が出てくる。
「会いたい」
お祖父様はわたしを大切にしてくれる。
でも心にぽっかりと空いた大きな穴は、どんどん広がっていった。
◇ ◇ ◇
「アイシャ様が最近無理して笑っているの」
メリッサがロウトに相談をしていた。
「ああ分かってる。だが俺たちではどうしようもない」
キリアン様の一件からアイシャ様の顔から笑顔が消えた。
いや、無理して笑っているのだ。
「俺たちに出来ることはただ見守ることだけだ」
「分かってる、でも、せめてキリアン様にだけでも相談できないかしら?」
使用人でしかない自分達が、どこまで話をできるのだろう。
自分達のいる立ち位置はあまりにも力がなさすぎる。
それでも大切な主人のために二人はキリアン様に話すことにした。
今もアイシャ様の魔法の指導に顔を出しているキリアン様。
あの魔力の暴走から、アイシャ様は時々断るようになった。
それでも暴走してしまった魔力を制御できるようにとアイシャ様はなんとか頑張ってはいるようだ。
俺たちは屋敷に来られたキリアン様に話を聞いて欲しいとお願いをした。
「うん、アイシャの様子が気になっていたんだ」
アイシャ様の指導が終わってから三人で話すことが出来た。
キリアン様もやはりアイシャ様の酷い落ち込みを心配していた。
「アイシャは今どんな様子なの?」
「はい、部屋に篭ることが増えております」
メリッサが暗い顔をして答えた。
「学園では友達と楽しそうに過ごしているようですが無理して笑っているみたいです」
ロウトが答えた。
「……わたしがお部屋で仕事をしている時、アイシャ様が……眠っていらっしゃって……寝言を……
『お父様、お兄様』と……目から涙が溢れておりました」
「お父様、お兄様……それはバナッシユ国の?」
「はい、キリアン様もご存知だと思います。もう一人のアイシャ様の時、ご実家で過ごしていたアイシャ様は幸せそうに過ごしていました。あの時のことを思い出しているのではないでしょうか?」
「……アイシャはこの国に転生して、両親に捨てられたと感じているのかもしれないね、それにもうすぐ俺もバナッシユ国へ帰るんだ、そのことを聞いたアイシャは暴走してしまったんだ。アイシャにとってそばにいてくれた人がいなくなることはとても寂しく辛いことなんだと思う。
……アイシャを置いて帰るのは俺も心配なんだ、連れて帰ってしまいたいよ」
「お帰りになるのはいつ頃ですか?」
「あと2ヶ月くらいかな……俺もここに留学してきた身だからね、そろそろ帰らないといけないんだ、向こうから早く帰って来いってうるさいんだ」
「アイシャ様はまた寂しがりますね」
「俺もアイシャを連れて帰りたいよ、せめてアイシャが16歳の成人を迎えていれば彼女の意思でバナッシユ国へ行けるんだけどね」
「その時はわたし達もついて行きたいです」
「勝手にここで話を進めることはできないけど、そうなったらアイシャの暗い顔も少しは明るくなるかな?」
「わたし達はアイシャ様が幸せならどこまでもついて行きます。どうかキリアン様、考えてみてはいただけませんか?」
俺は本気でアイシャ様の行く先を心配していた。もちろん本人の意思を聞いたわけではない。それでもずっとそばに居る二人にはアイシャ様の気持ちが痛いほどわかるのだった。
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