【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
上 下
48 / 97

48話  キリアン編

しおりを挟む
ターナがやっとエレン夫人と接触した。

最近はエレン夫人が慎重に動いて中々尻尾を掴ませてくれなかった。

カイザ様が国王に息子のクリス殿下のことを苦言を申し出てから、クリス殿下は謹慎させられて学園に通う以外にはあまり人と接触していなかった。

エレン夫人も様子を伺い、クリス殿下の教育係の時間を減らしていた。

俺がエレン夫人が気になったのは、彼女の持つ異様な空気だった。

彼女の周りから闇が持つ重たい空気を感じた。

それはどこかで感じたものと同じだった。

しばらくはそれが何かわからず、王宮内ですれ違うことがあったり、遠くから見かけることがあってもモヤッと何かを感じるだけだった。

彼女の名前はエレン・プラザ。

外国のとある貴族の未亡人で、今はルビラ王国にいる親戚のガイスラー侯爵の元に身を寄せている。

外国のとある貴族の未亡人だと言われている。
でもどうしても気になった俺は彼女の過去を調べた。

すると親戚のガイスラー侯爵から辿ってもどこにもエレン・プラザという名前と亡きプラザ侯爵など存在しなかった。

おかしい。

彼女の所作はとても綺麗で高位貴族の持つ優雅さや華やかさを兼ね備えていた。

でも記憶にない顔。でもあの空気感はどこかで見覚えがあった。

調べれば調べるほど謎が深まる。
だけど、調べていくとガイスラー侯爵は、エレン夫人が身を寄せるようになってから事業で失敗して出来た借金がなくなり傾きかけていた侯爵家に勢が戻ってきていた。

そんな時、バナッシユ国のゴードン様から連絡が届いた。

前王妃が収容所での爆発事故で行方不明になり、逃亡している可能性があるらしいと伝えられた。
足取りを調べたらルビラ王国に潜入して暮らしているかもしれないと言うのだ。

前王妃が隠し財産をルビラ王国にかなり隠し持っていることがわかった。

ルビラ王国のある小さな家を買取、そこに老夫婦を住まわせて、地下にお金や財宝を溜め込んでいたらしいと今頃になってわかった。

ただその場所は誰にもわからない。
何故ならその場所に運んだ者は毎回帰ってこないからだ。
場所を隠匿するために、誰にもわからないように隠した。
その財産をちらつかせて前王妃は誰かに脱走を手助けさせたのではないかと国王であるジャン様は考えているようだ。

俺がいるこのルビラ王国、奇しくもアイシャのいるこの国に。

アイシャに対する神の意地悪なのか?それとも偶然?

俺は前王妃の顔を覚えていない。
小さすぎて記憶にない。
似顔絵で送られてきたが今の所そんな女性は見当たらなかった。
もちろんこの国全ての人を探したわけではないが、あの前王妃が見窄らしく市井で平民として生きていくわけはない。
ならば……

ふと思い出したのがエレン夫人だった。

過去がわからない。
身を寄せている侯爵が突然借金がなくなる。

エレン夫人は確かに似顔絵の姿とは違う。

髪の色を変えて、鼻を高くして目元も一重から二重に変え、ぽっちゃりしていた体のラインを引き締めれば……確かに前王妃に似ている。

エレン夫人が前王妃だと気づいても証拠がない。

ただクリス殿下に近づいて教育係をしていること、たまにターナにも会い何かしら話していることがわかった。
クリス殿下がアイシャに怪我を負わせ、取り巻き達もアイシャに怪我をさせた。
ターナのアイシャへの態度が酷くなったのもこの一年だと聞いた。

全てエレン夫人がこの国にやって来てクリス殿下に近づいてからなのだ。

何かあの前王妃が動いている気はするのだが、全く証拠は出てこない。
そんな話も聞こえてこない。

国王も王妃もエレン夫人の優秀さに関心と信頼を寄せている。
クリス殿下はエレン夫人から教わり出してかなり優秀な成績を収めていると聞いた。

情報だけなら集められるが実際にエレン夫人にお会いすることは15歳で留学して来ただけの俺では難しい。
まず会う理由すらない。
それにゴードン様の義孫でサラの孫だと分かれば、エレン夫人が不信感を持たれ、逃げられても困る。
アイシャに前世で辛い思いをさせた元凶だとゴードン様に聞いている。

「悪」でしかない前王妃。
あの闇を持つあの重たい空気は、幼い自分が会った時に感じた奥底に残っていた記憶。

だから、会ったこともないはずのエレン夫人が気になったのだ。

エレン夫人が前王妃だとどうやって確定させるか悩んでいた。

ガイスラー侯爵側から証拠を探すしかない。

今は何人かの俺の部下に動いてもらっている。
ゴードン様が留学時につけてくれた者達だ。

エレン夫人の方はカイザ様に話してみることにした。
この国で信用できるのはカイザ様と恩師であるイルマナ様だけだ。

カイザ様はかなり驚いていた。
前王妃のことはアイシャのこともあり事情を知っているし、性格も把握している。

「あの前王妃ならこの国でアイシャを見つければまた何かして来てもおかしくはない。ただ今回は自ら動かず子供達を操っていたのかもしれないな」

「俺もそう思います。それでも貴方の孫のターナは操られていても、それを言い訳には出来ません」

「……わかっている、ターナのあれは元からだ。リサの傲慢さや我儘、それをしっかり受け継いでいる」

「俺は証拠が欲しい。貴方の孫を利用しようと思っています」

「そ、それは……」

「別に命の危険に晒そうとは思っていません。でもターナは矯正しなければいけません。ちょうどエレン夫人は教育係として王家で信頼される人物です。ハイド様にそのことをカイザ様が軽く話されておけばハイド様はその気になるのではないですか?」

「わたしにハイドを操れと?」

「さぁ?そこまではわかりませんが、カイザ様ならハイド様を誘導するのは簡単なことでしょう?」

俺はそして
「リサ様は邪魔なのでハイド様の母上のところにしばらくやって閉じ込めておけばいいのではないですか?リサ様より激しい性格なのであのリサ様でも少しは辛い思いをするのでは?」

「ハイドの母上か……あの気性は物凄く怖いぞ。わたしでも手に負えない、女のくせに前公爵の夫を尻に敷いていたからな。確かにハイドがリサをもう一度なんとかしようとしても、リサは反発するだけだろう、ハイドの母上にしっかり教育されてからの方がハイドの言うことを聞くかもしれないな……
はあー、気が重いがハイドの母上にリサのことを話すか……それもハイドにそうさせるように仕向けるとしよう」

「お願いします。あの二人を変えない限りアイシャが今世で幸せになることはありません。たとえそれであの二人が壊れて消えても仕方がないですしね」

「……キリアン、あの二人はアレでもわたしの娘と孫なんだ……まぁ、わたしもわかっていて二人をそうさせるんだ。変わらないか……」

カイザ様は少し暗い顔をしたが、やはり公爵であり大魔法使いと言われているだけある。

血が繋がっているが、切り捨てる時はきっちり切り捨てる。

そして、ハイド様はでターナをエレン夫人に託し、リサ様を母上に託した。

さすがカイザ様。

ハイド様には悪いが、今まで家庭を顧みなかったんだ。
俺たちの策略に引っ掛けられても文句は言わせない。

カイザ様の「囁き」の魔法はもちろんあまり知られていない。
人を思うように動かすことは、一歩間違えれば国をも動かしかねない、混乱や戦乱を招く恐ろしい魔法だから。

これでエレン夫人をとっ捕まえてやる。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~

Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。 その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。 そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた── ──はずだった。 目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた! しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。 そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。 もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは? その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー…… 4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。 そして時戻りに隠された秘密とは……

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...