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39話
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二人の会話を聞いていると、カイザ様が入ってきた。
「リサ、もういい。お前など呼ばなければよかった。帰れ!」
カイザ様は物凄い剣幕でリサ様を部屋から追い出した。
そしてハイド様に向き直ると、頭を下げられた。
「ハイド、リサがすまない。あそこまで愚かな娘だと思っていなかった。自分が常にトップを走ってきたプライドがあそこまで心を歪ませていたんだな」
「こちらこそすみませんでした。リサがアイシャに対して嫉妬心を持っていたなんて気がつきませんでした。それにターナもアイシャに対して嫉妬心を持っていて、アイシャに対する態度はかなり酷いものでした。リサが調べたと言っていたのは、ターナのお気に入りの者達だけで、真実を語る者はいないのはわかっているくせに、そんな人達からだけ話を聞いていました。
リサ本人は無意識にターナに都合が悪い者達には聞かないようにしていたと思われます」
「……侍女長にはアイシャのことはお前達に伝えるなと口止めしていた。本気で娘達のことを思うなら真実をきちんと見つけられるはずだ、そう思ったのにリサには見えていなかったようだ」
カイザ様は少し疲れているように見えた。
実の娘の態度にかなりショックを受けているようだった。
「わたしも育て方を間違えてしまった……アイシャ達にはすまんことをした」
カイザ様がポツリと言った言葉を聞いて俺は思わず大きな声を出してしまった。
「そんなことありません!アイシャ様はここに来てからやっと心から笑えるようになりました!怖い夢にうなされることも無くなりました!アイシャ様は今は心が疲れて寝ているだけです。少し休んでいるだけです!必ずまたいつもの明るいアイシャ様が戻ってきます!カイザ様はいつものようにアイシャ様のおそばでアイシャ様を見守ってください。
アイシャ様はカイザ様をとても慕っております!」
しまった!
と思ったけど俺は抑えられなかった。
カイザ様は苦笑いをしながら言った。
「ロウト、ありがとう」
そして俺の言葉を聞いたハイド様は逆に落ち込んでいた。
「アイシャは私たち家族の前では無理して明るくしていたのか……悪い夢に魘されていたなんて気が付かなかった。やっと心から笑えるようになった……なんてわたしは父親失格だな」
「ハイド様、申し訳ありません」
俺は言ったことを後悔などしていない。
でも彼は公爵様で俺はただの護衛騎士でしかない。
あんな発言をしていい立場ではない。
俺はもうこれ以上何も言わないように後ろに控えてじっとしていた。
「ハイド、リサは傲慢で自尊心が強い。だが、それでも弱いものを慈しむ優しい心を待っていると思っていた。なのに自分の娘に対してあれ程愚かな態度を取れるなんて……」
カイザ様はハイド様に謝罪をしていた。
出て行った時のリサ様はプライドが許さないのか叫んでいた。
「お父様、アイシャはわたしの娘よ!どうしてお父様に命令されなければいけないの?」
感情剥き出しのリサ様のお顔は美しさも消えて恐ろしかった。
ハイド様は時間が許す限りアイシャ様のそばに寄り添った。
俺たちはその間、遠慮して部屋から出た。
二人で過ごす時間、アイシャ様は幸せだろう。
次は目覚めてからあの自然に笑っているアイシャ様をぜひハイド様に見てほしい。
リサ様はカイザ様に部屋を追い出されたあと、客室にいた。
「お父様に話があったの」
と突然言い出した。
「なんだ、少しは反省したのか?」
「え?何を?違うわ。
ロウトとメリッサを屋敷に返して欲しいのよ。
アイシャは意識がないし誰が世話をしても分からないでしょう?二人はターナに付いてもらうつもりなの」
「お前は何を言ってるんだ?」
「二人はうちの使用人よ。何をしようとお父様に指図される覚えはないわ。二人とも帰る支度をさっさとしなさい!」
俺とメリッサには反抗することはできない。
唇をギュッと噤むしかなかった。
メリッサは悔しさで固まり怒りにプルプル震えていた。
カイザ様はリサ様を見て大きな溜息を吐いた。
「アイシャから二人を奪ったらその自尊心は満足するのか?アイシャが悲しむ姿は楽しいか?」
「お父様こそ何を言ってるの?わたしはターナが可哀想だったの。ターナがね………」
『あの二人をわたしにください!
お姉様はお母様がいない時、わたしにとても冷たいんです!
話しかけても無視するし、わたしが怪我のこと心配して話しかけたらわたしのことを馬鹿にして笑ったんです!
酷いです!
お姉様は魔法もたくさん出来て、お勉強も優秀だからわたしを見下しているんです』
「ターナは涙をいっぱいためて泣き出したの、だから約束したのよ、二人をつけてあげると」
「くだらん、ターナはどんどん嘘つきになっていってるな」
「嘘つき?あんなに悲しそうに泣いたのよ?」
「アイシャの話は信じられなくてターナの話は信じるんだな」
「アイシャの話って……作り話でしょう?それに話を逸らさないで!二人とも帰るわよ」
「それは残念ながらできない。ハイドが二人の雇用を解約しているんだ。だからわたしが再雇用しているんだ」
え?
俺とメリッサはカイザ様の顔を見て呆気に取られていた。
「そんな話聞いていないわ!」
「夫婦のくせにそんな話も出来ていなかったのか?」
「し、失礼だわ!きちんといつも話しているわよ!」
「ほお、そうか、しかし二人のことは聞いていなかったのか。アイシャが倒れてからすぐにこちらから話を持って行ったらハイドはすぐに動いてくれた」
(俺たち本人抜きで主人が変わっていたのか……)
もちろんリサ様の前で質問などしなかった。
カイザ様のおかげでアイシャ様から離れずに済んだのだ。
でもあとでカイザ様に一言物申してもいいかな……なんて思いつつ、怖くてとても言えないなと心の中で溜息を吐いた。
リサ様は真っ赤な顔でカイザ様に食ってかかっていた。
それをカイザ様は軽くあしらっていた。
うん、カイザ様の勝ちだな。
「リサ、もういい。お前など呼ばなければよかった。帰れ!」
カイザ様は物凄い剣幕でリサ様を部屋から追い出した。
そしてハイド様に向き直ると、頭を下げられた。
「ハイド、リサがすまない。あそこまで愚かな娘だと思っていなかった。自分が常にトップを走ってきたプライドがあそこまで心を歪ませていたんだな」
「こちらこそすみませんでした。リサがアイシャに対して嫉妬心を持っていたなんて気がつきませんでした。それにターナもアイシャに対して嫉妬心を持っていて、アイシャに対する態度はかなり酷いものでした。リサが調べたと言っていたのは、ターナのお気に入りの者達だけで、真実を語る者はいないのはわかっているくせに、そんな人達からだけ話を聞いていました。
リサ本人は無意識にターナに都合が悪い者達には聞かないようにしていたと思われます」
「……侍女長にはアイシャのことはお前達に伝えるなと口止めしていた。本気で娘達のことを思うなら真実をきちんと見つけられるはずだ、そう思ったのにリサには見えていなかったようだ」
カイザ様は少し疲れているように見えた。
実の娘の態度にかなりショックを受けているようだった。
「わたしも育て方を間違えてしまった……アイシャ達にはすまんことをした」
カイザ様がポツリと言った言葉を聞いて俺は思わず大きな声を出してしまった。
「そんなことありません!アイシャ様はここに来てからやっと心から笑えるようになりました!怖い夢にうなされることも無くなりました!アイシャ様は今は心が疲れて寝ているだけです。少し休んでいるだけです!必ずまたいつもの明るいアイシャ様が戻ってきます!カイザ様はいつものようにアイシャ様のおそばでアイシャ様を見守ってください。
アイシャ様はカイザ様をとても慕っております!」
しまった!
と思ったけど俺は抑えられなかった。
カイザ様は苦笑いをしながら言った。
「ロウト、ありがとう」
そして俺の言葉を聞いたハイド様は逆に落ち込んでいた。
「アイシャは私たち家族の前では無理して明るくしていたのか……悪い夢に魘されていたなんて気が付かなかった。やっと心から笑えるようになった……なんてわたしは父親失格だな」
「ハイド様、申し訳ありません」
俺は言ったことを後悔などしていない。
でも彼は公爵様で俺はただの護衛騎士でしかない。
あんな発言をしていい立場ではない。
俺はもうこれ以上何も言わないように後ろに控えてじっとしていた。
「ハイド、リサは傲慢で自尊心が強い。だが、それでも弱いものを慈しむ優しい心を待っていると思っていた。なのに自分の娘に対してあれ程愚かな態度を取れるなんて……」
カイザ様はハイド様に謝罪をしていた。
出て行った時のリサ様はプライドが許さないのか叫んでいた。
「お父様、アイシャはわたしの娘よ!どうしてお父様に命令されなければいけないの?」
感情剥き出しのリサ様のお顔は美しさも消えて恐ろしかった。
ハイド様は時間が許す限りアイシャ様のそばに寄り添った。
俺たちはその間、遠慮して部屋から出た。
二人で過ごす時間、アイシャ様は幸せだろう。
次は目覚めてからあの自然に笑っているアイシャ様をぜひハイド様に見てほしい。
リサ様はカイザ様に部屋を追い出されたあと、客室にいた。
「お父様に話があったの」
と突然言い出した。
「なんだ、少しは反省したのか?」
「え?何を?違うわ。
ロウトとメリッサを屋敷に返して欲しいのよ。
アイシャは意識がないし誰が世話をしても分からないでしょう?二人はターナに付いてもらうつもりなの」
「お前は何を言ってるんだ?」
「二人はうちの使用人よ。何をしようとお父様に指図される覚えはないわ。二人とも帰る支度をさっさとしなさい!」
俺とメリッサには反抗することはできない。
唇をギュッと噤むしかなかった。
メリッサは悔しさで固まり怒りにプルプル震えていた。
カイザ様はリサ様を見て大きな溜息を吐いた。
「アイシャから二人を奪ったらその自尊心は満足するのか?アイシャが悲しむ姿は楽しいか?」
「お父様こそ何を言ってるの?わたしはターナが可哀想だったの。ターナがね………」
『あの二人をわたしにください!
お姉様はお母様がいない時、わたしにとても冷たいんです!
話しかけても無視するし、わたしが怪我のこと心配して話しかけたらわたしのことを馬鹿にして笑ったんです!
酷いです!
お姉様は魔法もたくさん出来て、お勉強も優秀だからわたしを見下しているんです』
「ターナは涙をいっぱいためて泣き出したの、だから約束したのよ、二人をつけてあげると」
「くだらん、ターナはどんどん嘘つきになっていってるな」
「嘘つき?あんなに悲しそうに泣いたのよ?」
「アイシャの話は信じられなくてターナの話は信じるんだな」
「アイシャの話って……作り話でしょう?それに話を逸らさないで!二人とも帰るわよ」
「それは残念ながらできない。ハイドが二人の雇用を解約しているんだ。だからわたしが再雇用しているんだ」
え?
俺とメリッサはカイザ様の顔を見て呆気に取られていた。
「そんな話聞いていないわ!」
「夫婦のくせにそんな話も出来ていなかったのか?」
「し、失礼だわ!きちんといつも話しているわよ!」
「ほお、そうか、しかし二人のことは聞いていなかったのか。アイシャが倒れてからすぐにこちらから話を持って行ったらハイドはすぐに動いてくれた」
(俺たち本人抜きで主人が変わっていたのか……)
もちろんリサ様の前で質問などしなかった。
カイザ様のおかげでアイシャ様から離れずに済んだのだ。
でもあとでカイザ様に一言物申してもいいかな……なんて思いつつ、怖くてとても言えないなと心の中で溜息を吐いた。
リサ様は真っ赤な顔でカイザ様に食ってかかっていた。
それをカイザ様は軽くあしらっていた。
うん、カイザ様の勝ちだな。
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