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33話 エレン夫人
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わたしの名前はエレン・プラザ。
外国のとある貴族の未亡人で、今はルビラ王国にいる親戚のガイスラー侯爵の元に身を寄せている。
外国のとある貴族の未亡人……
素敵なセリフよね。
ふふふ、わたしがルビラ王国に逃げてきたのはたまたまだった。
ちょっとした罪で収容所の鉱山で重労働をさせられることになった。
ちょっと好きなものを買って過ごして、ちょっと気に入らない少女に意地悪をしただけなのに。
罪に問われてわたしの全てを奪われた。
そして夫に離縁され、強制労働をさせられた。
そんな力仕事もしたことがないわたしが出来るわけもなく……疲れたと言って休んだり、病気だと言って仕事をしない日も多かった。
あんなにいつもお手入れされた髪の毛も手や足も、カサカサになり、化粧すら出来ない日々はわたしの姿を変えていった。……見るも無残だった。
これがわたし?
鏡を見るのも嫌になる。
綺麗なドレスや宝石は取り上げられ、飾りもない平民以下の質素な服を着せられた。
耐えることなんて出来ない。
わたしを支持してくれていた他国の貴族達はまだ今もわたしをなんとか助けようとしてくれた。
彼らからの指示で数人が囚人になりすまし入り込んでいた。
少しずつ時間をかけて監視の者達にバレないように脱出計画を立てた。
そして鉱山事故を起こした。
鉱山の入り口に火薬を忍ばせて爆発を起こし落盤事故を起こしたのだ。
その喧騒の中で、わたし達は逃走した。
計画通り森の中に隠れていた仲間達と合流して脱出用の馬に乗り一気に森を駆け抜けた。
ある程度走ると別の馬が用意してあり、新しい馬に乗り換える。それを何度か繰り返して他国へと逃げ切った。
そこでわたしの新しい名前、エレン・プラザという名前と亡きプラザ侯爵の妻でという立場を得ることに成功した。
そして、支援してもらったルビラ王国のガイラー侯爵の親戚として今は彼の屋敷でお世話になっている。
どうして彼らがわたしに力を貸してくれたかって?
ふふふ、伊達に贅沢していたわけではないわ。
わたしの隠し財産をこのルビラ王国のある場所に隠していたの。
それに協力してくれていたのがガイラー侯爵なの。
彼らはわたしの財産目当てで、わたしを助けたの。
もちろんあんな生活なんかもう二度としたくないわたしは謝礼をチラつかせて、わたしを救い出してもらったの。
ふふふふふ、世の中はお金よ、お金さえあればどんな人だってわたしの前で跪くのよ!
今のわたしは以前の姿とは違う。
髪の色を変えて、鼻を高くして目元も一重から二重に変えた。
以前はぽっちゃりしていた体のラインも、収容所での貧そな生活のおかげで、引き締まった。
過去のわたしを知るものはもういない。
以前の知り合いもわたしに気がつく者はいないだろう。
わたしはまた自由を取り戻した。
ガイラー侯爵からの紹介でルビラ王国の王妃とも顔見知りになった。
お茶会に呼ばれるようになり、わたしは良き友人として彼女の信頼を得ることが出来た。
そして、王太子であるクリス殿下の教育係の一人として彼の近くにいることを許された。
クリス殿下は扱いやすい。
殿下はある女の子が大好きすぎて拗らせているらしい。
王妃が苦笑しながら話してくれた。
わたしは偶然殿下の好きな女の子に会う機会があった。
母親に連れられて、お茶会の席に来ていたのだ。
王妃が
「あの子がクリスの好きな女の子なのよ」
と、そっと教えてくれた。
まさか……わたしが一番気に入らない、見ているだけでイライラするアイシャが目の前にいたのだ。
アイシャの子どもの頃そっくり。
それも、あの憎たらしいリサの娘?
これはこの国で聞いたことがある転生だと思った。
アイシャは死んでこの国で転生したのだと思った。
ああ、また、退屈な人生から離れられる。
わたしはニヤッと微笑んだ。
ああ、わくわくが止まらない。
前回のように王子妃教育という名の体罰ではなく、見えないところでじわじわとアイシャの心を蝕んで行こう。
あからさまにわたしが出てやれば、また罪に問われる。
わたしは影でアイシャが苦しむ姿を見て楽しむことにしよう。
一度はアイシャのせいでドン底まで落ちた。
でも今度は絶対に失敗はしないわ。
誰にもわからないようにみんなをコントロールするの。
そしてアイシャが悲しみ苦しむの。
ああ、なんて甘い誘惑なのかしら、考えただけで溶けてしまいそう。
それからはわたしの楽しみのために、殿下を少しずつ少しずつ洗脳していった。
わたしの言葉が正しいと。
わたしのいうことを聞いていれば大丈夫なのだと。
王子としての心得を教えて彼の興味のある他国の話を聞かせた。
彼からの質問も的確に答えた。
そうして、彼の中信頼のおけるでエレン夫人という確固たるものを作り上げて、わたしは操ることに成功した。
アイシャに意地悪を言って悲しませるのは王子。
少しずつ少しずつアイシャの心を壊していくの。
暗い影をじわじわと侵食させて心を壊していく。
新しいおもちゃも見つけた。
リサの娘のターナ。
この子の底意地の悪さ、性格のキツさがとても好ましい。
我儘で貪欲。
素晴らしい子を見つけた。
殿下に紹介してもらい仲良くなった。
殿下とターナ、どちらもアイシャに焦がれて拗らせている。
わたしの大切なおもちゃ達。
さあ、二人を使ってアイシャを壊していこう。
そう思ったのに……
カイザがわたしの邪魔をするの。
イライラするわ。
外国のとある貴族の未亡人で、今はルビラ王国にいる親戚のガイスラー侯爵の元に身を寄せている。
外国のとある貴族の未亡人……
素敵なセリフよね。
ふふふ、わたしがルビラ王国に逃げてきたのはたまたまだった。
ちょっとした罪で収容所の鉱山で重労働をさせられることになった。
ちょっと好きなものを買って過ごして、ちょっと気に入らない少女に意地悪をしただけなのに。
罪に問われてわたしの全てを奪われた。
そして夫に離縁され、強制労働をさせられた。
そんな力仕事もしたことがないわたしが出来るわけもなく……疲れたと言って休んだり、病気だと言って仕事をしない日も多かった。
あんなにいつもお手入れされた髪の毛も手や足も、カサカサになり、化粧すら出来ない日々はわたしの姿を変えていった。……見るも無残だった。
これがわたし?
鏡を見るのも嫌になる。
綺麗なドレスや宝石は取り上げられ、飾りもない平民以下の質素な服を着せられた。
耐えることなんて出来ない。
わたしを支持してくれていた他国の貴族達はまだ今もわたしをなんとか助けようとしてくれた。
彼らからの指示で数人が囚人になりすまし入り込んでいた。
少しずつ時間をかけて監視の者達にバレないように脱出計画を立てた。
そして鉱山事故を起こした。
鉱山の入り口に火薬を忍ばせて爆発を起こし落盤事故を起こしたのだ。
その喧騒の中で、わたし達は逃走した。
計画通り森の中に隠れていた仲間達と合流して脱出用の馬に乗り一気に森を駆け抜けた。
ある程度走ると別の馬が用意してあり、新しい馬に乗り換える。それを何度か繰り返して他国へと逃げ切った。
そこでわたしの新しい名前、エレン・プラザという名前と亡きプラザ侯爵の妻でという立場を得ることに成功した。
そして、支援してもらったルビラ王国のガイラー侯爵の親戚として今は彼の屋敷でお世話になっている。
どうして彼らがわたしに力を貸してくれたかって?
ふふふ、伊達に贅沢していたわけではないわ。
わたしの隠し財産をこのルビラ王国のある場所に隠していたの。
それに協力してくれていたのがガイラー侯爵なの。
彼らはわたしの財産目当てで、わたしを助けたの。
もちろんあんな生活なんかもう二度としたくないわたしは謝礼をチラつかせて、わたしを救い出してもらったの。
ふふふふふ、世の中はお金よ、お金さえあればどんな人だってわたしの前で跪くのよ!
今のわたしは以前の姿とは違う。
髪の色を変えて、鼻を高くして目元も一重から二重に変えた。
以前はぽっちゃりしていた体のラインも、収容所での貧そな生活のおかげで、引き締まった。
過去のわたしを知るものはもういない。
以前の知り合いもわたしに気がつく者はいないだろう。
わたしはまた自由を取り戻した。
ガイラー侯爵からの紹介でルビラ王国の王妃とも顔見知りになった。
お茶会に呼ばれるようになり、わたしは良き友人として彼女の信頼を得ることが出来た。
そして、王太子であるクリス殿下の教育係の一人として彼の近くにいることを許された。
クリス殿下は扱いやすい。
殿下はある女の子が大好きすぎて拗らせているらしい。
王妃が苦笑しながら話してくれた。
わたしは偶然殿下の好きな女の子に会う機会があった。
母親に連れられて、お茶会の席に来ていたのだ。
王妃が
「あの子がクリスの好きな女の子なのよ」
と、そっと教えてくれた。
まさか……わたしが一番気に入らない、見ているだけでイライラするアイシャが目の前にいたのだ。
アイシャの子どもの頃そっくり。
それも、あの憎たらしいリサの娘?
これはこの国で聞いたことがある転生だと思った。
アイシャは死んでこの国で転生したのだと思った。
ああ、また、退屈な人生から離れられる。
わたしはニヤッと微笑んだ。
ああ、わくわくが止まらない。
前回のように王子妃教育という名の体罰ではなく、見えないところでじわじわとアイシャの心を蝕んで行こう。
あからさまにわたしが出てやれば、また罪に問われる。
わたしは影でアイシャが苦しむ姿を見て楽しむことにしよう。
一度はアイシャのせいでドン底まで落ちた。
でも今度は絶対に失敗はしないわ。
誰にもわからないようにみんなをコントロールするの。
そしてアイシャが悲しみ苦しむの。
ああ、なんて甘い誘惑なのかしら、考えただけで溶けてしまいそう。
それからはわたしの楽しみのために、殿下を少しずつ少しずつ洗脳していった。
わたしの言葉が正しいと。
わたしのいうことを聞いていれば大丈夫なのだと。
王子としての心得を教えて彼の興味のある他国の話を聞かせた。
彼からの質問も的確に答えた。
そうして、彼の中信頼のおけるでエレン夫人という確固たるものを作り上げて、わたしは操ることに成功した。
アイシャに意地悪を言って悲しませるのは王子。
少しずつ少しずつアイシャの心を壊していくの。
暗い影をじわじわと侵食させて心を壊していく。
新しいおもちゃも見つけた。
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この子の底意地の悪さ、性格のキツさがとても好ましい。
我儘で貪欲。
素晴らしい子を見つけた。
殿下に紹介してもらい仲良くなった。
殿下とターナ、どちらもアイシャに焦がれて拗らせている。
わたしの大切なおもちゃ達。
さあ、二人を使ってアイシャを壊していこう。
そう思ったのに……
カイザがわたしの邪魔をするの。
イライラするわ。
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