【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
上 下
22 / 97

22話

しおりを挟む
わたしはしばらく学園を休むことになった。

多少は癒しで治してもらったが、完全に体が戻るのに時間がかかった。

それに精神的にも参ってしまった。

もうあんな事はないとお祖父様が言ってくれた。
でも、また他の人が?

とか、あの王子が絡んできたら?

とか考えると、やはり恐怖が先に出てしまう。

ふと考える。

わたしが怪我をしたと聞いてもお父様もお母様も会いには来てくれないのね……

もし今抱きしめてくれたら、頭を撫でてくれたらそれだけで心が救われるのに……

ううん、そんなこと考えてはいけない。

魔法を自分のものにして制御ができるようになればお父様もお母様もわたしを褒めてくれるかもしれない。

そうすればわたしもレオンバルド家の一員になれるかもしれない。

そういえば最近あの怖い夢を見ることが減ってきた。

お祖父様の家は何故か温かくてホッとする。

自分の家にいる時は息苦しくて、居場所がなくて、それでも自分の居場所を作るのに必死で、笑って明るいアイシャを演じていた。

今は自然に笑える。
わざわざ笑顔を作らなくても、楽しい時に笑い、つまんない時はつまんない顔、疲れた時には疲れた顔をしても平気になった。

元気になったら学園の医務室に行って、わたしを助けてくれた人の名前を尋ねて、お礼を言わなくっちゃ。

お腹の痛みはかなり酷かった。
あのままだと腹部損傷を起こして大量出血や腹腔内出血のほか、腹膜炎、骨折などが生じる可能性があり、命の危険にさらされることもあったらしい。

それを医務室に連れて行ってくれて、そこでお腹の怪我をほとんど治療してくれたと聞いた。

かなり高度な癒しの魔法と医療知識を持っている人なのだと思う。

わたしもお母様のような癒しの魔法を使えるようになりたくて、医療の勉強をこっそりしている。
だから知識だけなら少しはあるが、魔法を使うにはかなり繊細な制御と動きが求められる。
だから、わたしは制御が出来るようになるのに必死なのだ。

自分の属性が分からない。
ならばお母様の光属性があるかもしれない。

お母様の子どもかわからないけど……それでもまだ可能性は捨てていない。

わたしを助けてくれた人にお礼を言い、もし少しでも時間があるなら、わたしにも癒しの魔法を教えてくれないかなとほんの少しだけ期待をしている。

お祖父様曰く、15歳くらいの男の子だったらしい。

大人の人でないなら仲良くなって教えてもらえる可能性あるかも。



「アイシャ様、起きていたんですか?」

メリッサがわたしの顔を覗き込んだ。

「うん、少し体が楽になってきたの……ベッドから出てお庭を散歩したいの」

「駄目です!お医者様からのお許しを頂くまでは!」

「でも退屈だわ。それに少しずつ体も動かさないと日常生活に戻る時逆に疲れてしまうわ」

「そうですが……カイザ様から許可をもらえるか聞いてきますのでお待ちください」

「メリッサ、大好き!」

メリッサはなんだかんだ言ってわたしの我儘を聞いてくれる。
もう四日もベッドで寝ているとストレスで頭がおかしくなっちゃう。

わたしはベッドから見える窓の外をじっと眺めた。

昼間の外の青空がとても綺麗だ。

少し肌寒くなってはきたが、昼間ならちょうどいい気温で散歩にはもってこいだと思う。




「カイザ様から許可がおりました」

メリッサは車椅子を用意してくれて、ロウトが抱っこして車椅子に乗せてくれた。
本当は一人で歩きたかったが、久しぶりにベッドから出て立ちあがろうとしたが、フラフラして歩くのは無理だった。
だからわかっていたのだろう。
わたしはさっさと車椅子に乗せられた。

とりあえず部屋から脱出して久々の外の空気を吸えたので気分だけでも違った。





◇ ◇ ◇

アイシャが学園で女子生徒達に怪我を負わさられた聞いて急ぎ学園の医務室に向かった。

そこには何故かキリアンがいた。

「カイザ様、たまたま学園に用事があって来て、帰りに女の子が倒れているので助けようとしたらアイシャでした。アイシャはお腹をかなり蹴られていました。急ぎ処置が必要なので、僕が癒しの魔法をかけました。アイシャの負担にならないギリギリまでかけたのですが、完全に治す事は出来ませんでした。
あとはカイド様が少しずつ治してあげてください」

わたしはアイシャの真っ青な顔を見てからまたキリアンの方に振り返った。

「キリアン、助けてくれてありがとう。腹部外傷を起こしていたみたいだな。何故アイシャがこんな酷い目に遭うんだ」

「アイシャに暴力を振るった女の子達五人は魔法で縛りあげて動けないようにしてその場に放置しています。アイシャはまた不幸なことが続いているみたいですね……カイザ様、守るとの約束忘れないでください。リサ様は忘れているのか……それとも本人は守っていたつもりなのか……僕にはわかりませんが、今のリサ様は母親失格ですね」

キリアンの鋭い一言にわたしは何も言い返せなかった。

とにかく女の子達を捕まえて事情を聞くしかない。

わたしはアイシャが目覚める前に去っていくキリアンに頭を下げるしかなかった。

娘のリサの気持ちがわからない。
だがリサ達には厳しい姿勢で接し、アイシャのことを今一度見つめ直し考えてもらうつもりだ。
それが悪い結果になろうと、わたしはアイシャを守る。

だが、アイシャはわたしに気を使い何も尋ねないが、ロウトとメリッサには両親のことをたまに聞いているらしい。

アイシャを屋敷に連れ帰る前に女子生徒達のいるところへ向かった。

彼女達は魔法で縛り上げられて土の上に座り込み動けないように五人が一纏めにされていた。

わたしを見ると慌てて

「た、助けてください」

「知らない人がわたし達をこんな風に縛ったんです」

などと、自分達がいかにも被害者だと言わんばかりにわたしに助けを求めてきた。

わたしはついて来た護衛騎士達にそのまま王宮にある牢に連れていくように命令した。

騒ぐ口を魔法で黙らせて、女子生徒達は真っ赤な顔をして口をパクパクさせていたが、何も聞こえないので、騎士達は平然と連れて行った。

すぐに学園長に会い、女子生徒達の親に書状を書き、牢に入れたこと、このまましばらくは出てこれない、会うことも許されないことを伝えさせた。

もちろん学園長にもこの学園のトップとして責任がある事は伝えた。

わたしは静かに淡々とことを運んだ。

怒りが爆発してこのままでは学園なんか吹き飛ばしてしまうかもしれない。
我が可愛い孫を傷つけた女子生徒を本当は同じ目に合わせて、森にでも捨てて仕舞えばいいのだが、アイシャの前では優しいお祖父様でいたいから、我慢するしかなかった。

わたしが手を下さなくても、彼女達はもう貴族社会で生きていく事は二度とできない。

















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

【完結】婚約破棄されて処刑されたら時が戻りました!?~4度目の人生を生きる悪役令嬢は今度こそ幸せになりたい~

Rohdea
恋愛
愛する婚約者の心を奪った令嬢が許せなくて、嫌がらせを行っていた侯爵令嬢のフィオーラ。 その行いがバレてしまい、婚約者の王太子、レインヴァルトに婚約を破棄されてしまう。 そして、その後フィオーラは処刑され短い生涯に幕を閉じた── ──はずだった。 目を覚ますと何故か1年前に時が戻っていた! しかし、再びフィオーラは処刑されてしまい、さらに再び時が戻るも最期はやっぱり死を迎えてしまう。 そんな悪夢のような1年間のループを繰り返していたフィオーラの4度目の人生の始まりはそれまでと違っていた。 もしかしたら、今度こそ幸せになれる人生が送れるのでは? その手始めとして、まず殿下に婚約解消を持ちかける事にしたのだがーー…… 4度目の人生を生きるフィオーラは、今度こそ幸せを掴めるのか。 そして時戻りに隠された秘密とは……

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~

黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※ すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...