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17話
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お祖父様のところに来て1週間が過ぎた。
体調も落ち着いてきたので、学園に通うことになった。
ロウトが護衛としていつも通りついて来てくれる。
もちろん歩きではなく馬車で通う。
歩くにはお祖父様の屋敷からは遠いのでさすがに断念した。
「ロウト、馬車は楽でいいでしょう?」
「はい、アイシャ様に付き合って歩くとくたびれますからね」
「ねえ、お祖父様はわたしに何も聞かないの……屋敷を出て来た理由も怪我したことも……わたしが魔法の練習をしたくてここに来たと本気で思っているのかしら?」
「………そんな訳ないでしょう」
ロウトが鼻で笑った。
わたしはムッとしながら
「お祖父様はわたしが聞かれたくないことをわかっているのね……」
「アイシャ様、カイザ様なら話せるのではないですか?」
「何を?」
「お嬢様の今の状況です。殿下のことやターナ様のこと……そして魘されている夢の話……」
「え?夢の話?」
「そうです、何度か馬車の中でアイシャ様が魘されているのをみました。その度に真っ青な顔をして目を覚まして震えています、さすがに気がつきますよ」
「……うん、決心がついたら話すわ。でもまだ言葉にするのが怖いの……ロウトいつも見守ってくれてありがとう」
「それがわたしの仕事ですから」
ロウトは頭をぽりぽり掻きながら、窓の方を見た。
ロウトはぶっきらぼうだけどとても優しい。
歳の離れたお兄様みたいな人だ。
◇ ◇ ◇
「アイシャ!久しぶり!」
友達である伯爵令嬢のスピナがわたしに抱きついて来た。
「ほんと、心配していたのよ?連絡も取れなかったし」
その横でわたしに怒っているのが、侯爵令嬢のアリアだ。
「二人とも心配かけてごめんなさい。退院してしばらくお祖父様の屋敷で過ごすことになったの」
「……ふうん、あの馬鹿な妹の所為かしら?」
アリアは侯爵令嬢なのに少し口が悪いところがある。わたしは苦笑いをしながら、
「そんなことないわ、お祖父様のところで魔法の練習をしているの」
と、言い訳をすると
「アイシャの屋敷は魔法の練習をできないほど狭い屋敷なのね」
と、態とに言ってきた。
「そうなの……だからお祖父様の屋敷にしばらく住むことになったの」
「今度は何を言われたの?白状しなさい!あの馬鹿妹、ほんと、アイシャのことを虐めやがって!わたしが怒鳴り込んで行ってもいいかしら?」
「アリア……ちょっと怖い顔しているわ」
スピナが本気で顔が引き攣っていた。
「たいしたことではないの……でも退院したばかりで体力もないし、心まで疲れてしまいそうだったから、逃げ出しちゃったの」
「そっかぁ、逃げ出す時は次はわたしの家に来てちようだい。お母様はアイシャが来るととても機嫌が良いの。お小言が減るからわたしも嬉しいわ」
アリアが思い出して、「ハァー」と溜息をついていた。
アリアのお母様はとても優しくてわたしは可愛がってもらっている。
でもアリアには少し厳しい。
それはアリアが大事だから言ってくれている。
わたしからしたら羨ましい。
わたしのお母様はいつも忙しくてわたしのことをあまりみてくれていない。
わたしが何を思っているのか、どんなふうに生活しているのか、わたしの友達のことだって知らないと思う。
食事の時の会話は、ターナが中心だ。
わたしは明るくニコニコしていれば家族はそれでいいと思っているみたい。
わたしのことに関心を示すことはない。
「ねえ、ゆっくりしていると授業が始まってしまうわ、急ぎましょう」
スピナが腕時計をチラリと見てわたし達を促してくれた。
学園生活もお祖父様の屋敷での生活も静かに穏やかに過ぎていった。
もうターナ達家族のことで悩まないでいいのならこのままお祖父様のところにいるのもいいかも……なんて思って過ごしていたある日……
わたしの穏やかな時間はまた壊れてしまった。
体調も落ち着いてきたので、学園に通うことになった。
ロウトが護衛としていつも通りついて来てくれる。
もちろん歩きではなく馬車で通う。
歩くにはお祖父様の屋敷からは遠いのでさすがに断念した。
「ロウト、馬車は楽でいいでしょう?」
「はい、アイシャ様に付き合って歩くとくたびれますからね」
「ねえ、お祖父様はわたしに何も聞かないの……屋敷を出て来た理由も怪我したことも……わたしが魔法の練習をしたくてここに来たと本気で思っているのかしら?」
「………そんな訳ないでしょう」
ロウトが鼻で笑った。
わたしはムッとしながら
「お祖父様はわたしが聞かれたくないことをわかっているのね……」
「アイシャ様、カイザ様なら話せるのではないですか?」
「何を?」
「お嬢様の今の状況です。殿下のことやターナ様のこと……そして魘されている夢の話……」
「え?夢の話?」
「そうです、何度か馬車の中でアイシャ様が魘されているのをみました。その度に真っ青な顔をして目を覚まして震えています、さすがに気がつきますよ」
「……うん、決心がついたら話すわ。でもまだ言葉にするのが怖いの……ロウトいつも見守ってくれてありがとう」
「それがわたしの仕事ですから」
ロウトは頭をぽりぽり掻きながら、窓の方を見た。
ロウトはぶっきらぼうだけどとても優しい。
歳の離れたお兄様みたいな人だ。
◇ ◇ ◇
「アイシャ!久しぶり!」
友達である伯爵令嬢のスピナがわたしに抱きついて来た。
「ほんと、心配していたのよ?連絡も取れなかったし」
その横でわたしに怒っているのが、侯爵令嬢のアリアだ。
「二人とも心配かけてごめんなさい。退院してしばらくお祖父様の屋敷で過ごすことになったの」
「……ふうん、あの馬鹿な妹の所為かしら?」
アリアは侯爵令嬢なのに少し口が悪いところがある。わたしは苦笑いをしながら、
「そんなことないわ、お祖父様のところで魔法の練習をしているの」
と、言い訳をすると
「アイシャの屋敷は魔法の練習をできないほど狭い屋敷なのね」
と、態とに言ってきた。
「そうなの……だからお祖父様の屋敷にしばらく住むことになったの」
「今度は何を言われたの?白状しなさい!あの馬鹿妹、ほんと、アイシャのことを虐めやがって!わたしが怒鳴り込んで行ってもいいかしら?」
「アリア……ちょっと怖い顔しているわ」
スピナが本気で顔が引き攣っていた。
「たいしたことではないの……でも退院したばかりで体力もないし、心まで疲れてしまいそうだったから、逃げ出しちゃったの」
「そっかぁ、逃げ出す時は次はわたしの家に来てちようだい。お母様はアイシャが来るととても機嫌が良いの。お小言が減るからわたしも嬉しいわ」
アリアが思い出して、「ハァー」と溜息をついていた。
アリアのお母様はとても優しくてわたしは可愛がってもらっている。
でもアリアには少し厳しい。
それはアリアが大事だから言ってくれている。
わたしからしたら羨ましい。
わたしのお母様はいつも忙しくてわたしのことをあまりみてくれていない。
わたしが何を思っているのか、どんなふうに生活しているのか、わたしの友達のことだって知らないと思う。
食事の時の会話は、ターナが中心だ。
わたしは明るくニコニコしていれば家族はそれでいいと思っているみたい。
わたしのことに関心を示すことはない。
「ねえ、ゆっくりしていると授業が始まってしまうわ、急ぎましょう」
スピナが腕時計をチラリと見てわたし達を促してくれた。
学園生活もお祖父様の屋敷での生活も静かに穏やかに過ぎていった。
もうターナ達家族のことで悩まないでいいのならこのままお祖父様のところにいるのもいいかも……なんて思って過ごしていたある日……
わたしの穏やかな時間はまた壊れてしまった。
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