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15話
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「アイシャは転生者なんだ。今のアイシャが生まれる1年半前、アイシャという女の子は14歳と言う若さで心臓病で亡くなったんだ。あの子は助かるはずだった。だが、助かる道を拒否して死ぬことを選んだんだ。死んで楽になりたいと……わたしとリサは知人に頼まれてアイシャの治療のために彼女に会いに行って、たまたま彼女が倒れているところを助けて最後を看取ったんだ」
「……アイシャ様が転生者……我が国でもあまりおりませんが、聞いたことはあります。でもアイシャ様本人は自覚がありませんよね?記憶をなくしているのでしょうか?」
メリッサの問いに
「たぶん記憶がないままでいるのだと思う。だがいつ思い出すかわからない。もし思い出せばあの子の心は今よりもひどい状態になるか壊れてしまいまた死を選ぶかもしれない」
「以前のアイシャ様は何かお辛いことがあったのでしょうか?」
「アイシャはある国の王太子の婚約者だった。そして公爵令嬢だったのに、両親から見捨てられ使用人達に使用人以下の生活をさせられて虐待されていたんだ。そして王子妃教育という名の虐待を王妃自ら行っていた。
屋敷では鞭で叩かれてまともな食事もさせてもらえず、馬車に乗ることも許されず罵られて生きてきたんだ。
『金食い虫』自分は生きている価値がないと言っていた。そして何度も助かるんだと言ったのに生きることを拒否した。楽になりたい……と14歳の少女は自ら死を選んだんだ」
「ひ、酷い……アイシャ様はそんな辛い日々を過ごした子なんですね」
メリッサは泣き崩れてしまった。
ロウトは黙って話を聞き続けた。
「アイシャの葬儀の後、決まっていたリサとハイドが結婚してすぐに妊娠した。リサもわたしも不思議に確信したんだ、お腹にはアイシャがいると。生まれてみればやはりアイシャの生前のまま、ブロンドの髪にグリーンの瞳だった。
わたしもリサも喜んだよ。今度こそアイシャを幸せにしてやろうと二人で話し合ったんだ」
「だったら何故リサ様はアイシャ様があんなに辛い思いをしているのに知らん顔できるのですか?」
「リサはアイシャを愛している。だがな、自分に似たターナ、甘え上手で可愛らしいターナに自分でも気がつかない無意識のうちに気持ちが傾いてしまっているんだと思う」
「どうして?同じ子供なのに……」
「ハイドはどちらかを贔屓したりはしていない。だが仕事が忙しくある意味無関心だ。自分に余裕がある時は子供達を可愛がるが忙しくなればそこに気持ちがいかない。
だから今のアイシャとターナの関係にも話しは聞いてもピンと来ていない。アイシャの心が自分達から離れてしまったらやっと娘達の大切さに気がつくのかもしれないな。
まあ、典型的な貴族の父親像だな、ハイドは」
「……アイシャ様をわたし達は見守るしかないのでしょうか?」
ロウトは怒りを我慢しながら私に問いかけた。
「わたしはまず今現在のアイシャのことを知りたい。怪我の理由をロウトは知っているのだろう?」
「………理由をお伝えすることはアイシャ様を守ることになりますか?アイシャ様にとって不利になることは避けたいのです」
「わたしは何があってもアイシャの味方だ。それでは不足か?」
「………わかりました、アイシャ様は王立図書館で殿下にたまたまお会いになりました」
「『おい、アイシャ!お前何こんなところにいるんだ?』
アイシャ様は殿下の言葉を無視して本を読み続けたました。
『ったく、何無視しているんだ。アイシャのくせに!』
アイシャ様の読んでいる本を取り上げると
『へえ、『遺伝における魔法学』ふうん』
ニヤッと笑った王子。
『返してくださいませんか?』
『気にしてたんだ?お前が誰の子か?』
殿下の意地悪な言葉を聞き流してアイシャ様は王子の顔を一度も見ないままその場を立ち去る事にした。
『その本の返却よろしくお願いします。では失礼いたします』
『お、お前!誰に向かって言ってるんだ!』
分厚く硬い表紙の本をアイシャ様の顔に向かって投げつけてきた。
バコッ!
いきなりだったので防御出来ずにアイシャ様の頭に本が当たった。
アイシャ様は激しい痛みにその場に蹲ってしまった。
わたしは王子のそばに寄ることは出来ずに遠くから見守っていましたがアイシャ様が蹲ったのを見て慌てて駆け寄り、医務室へ連れて行きました」
「怪我をさせたのは殿下だったのか……アレもまたアイシャのことが好きで素直になれずアイシャに意地悪を言って気を引こうとしている馬鹿だ。そんなことをすればさらにアイシャに嫌われると思わないんだからな。
全くちやほやされ甘やかされて育ったボンボンは傲慢な態度しか取れない。ターナも殿下も同じ馬鹿だな」
「殿下から謝罪があったとは耳に入っていない、もちろん殿下が怪我をさせたという話も聞こえていない……アレはアイシャが怪我して入院してもなんとも思っていないのか?それにリサ達は転んで怪我をしたと本気で思っているのか?」
わたしは、我が娘ながら呆れ返ってしまった。
どう見てもアイシャの怪我が転んで出来るわけがない。
あのクソガキ。
大事なアイシャに怪我をさせやがって。
「……アイシャ様が転生者……我が国でもあまりおりませんが、聞いたことはあります。でもアイシャ様本人は自覚がありませんよね?記憶をなくしているのでしょうか?」
メリッサの問いに
「たぶん記憶がないままでいるのだと思う。だがいつ思い出すかわからない。もし思い出せばあの子の心は今よりもひどい状態になるか壊れてしまいまた死を選ぶかもしれない」
「以前のアイシャ様は何かお辛いことがあったのでしょうか?」
「アイシャはある国の王太子の婚約者だった。そして公爵令嬢だったのに、両親から見捨てられ使用人達に使用人以下の生活をさせられて虐待されていたんだ。そして王子妃教育という名の虐待を王妃自ら行っていた。
屋敷では鞭で叩かれてまともな食事もさせてもらえず、馬車に乗ることも許されず罵られて生きてきたんだ。
『金食い虫』自分は生きている価値がないと言っていた。そして何度も助かるんだと言ったのに生きることを拒否した。楽になりたい……と14歳の少女は自ら死を選んだんだ」
「ひ、酷い……アイシャ様はそんな辛い日々を過ごした子なんですね」
メリッサは泣き崩れてしまった。
ロウトは黙って話を聞き続けた。
「アイシャの葬儀の後、決まっていたリサとハイドが結婚してすぐに妊娠した。リサもわたしも不思議に確信したんだ、お腹にはアイシャがいると。生まれてみればやはりアイシャの生前のまま、ブロンドの髪にグリーンの瞳だった。
わたしもリサも喜んだよ。今度こそアイシャを幸せにしてやろうと二人で話し合ったんだ」
「だったら何故リサ様はアイシャ様があんなに辛い思いをしているのに知らん顔できるのですか?」
「リサはアイシャを愛している。だがな、自分に似たターナ、甘え上手で可愛らしいターナに自分でも気がつかない無意識のうちに気持ちが傾いてしまっているんだと思う」
「どうして?同じ子供なのに……」
「ハイドはどちらかを贔屓したりはしていない。だが仕事が忙しくある意味無関心だ。自分に余裕がある時は子供達を可愛がるが忙しくなればそこに気持ちがいかない。
だから今のアイシャとターナの関係にも話しは聞いてもピンと来ていない。アイシャの心が自分達から離れてしまったらやっと娘達の大切さに気がつくのかもしれないな。
まあ、典型的な貴族の父親像だな、ハイドは」
「……アイシャ様をわたし達は見守るしかないのでしょうか?」
ロウトは怒りを我慢しながら私に問いかけた。
「わたしはまず今現在のアイシャのことを知りたい。怪我の理由をロウトは知っているのだろう?」
「………理由をお伝えすることはアイシャ様を守ることになりますか?アイシャ様にとって不利になることは避けたいのです」
「わたしは何があってもアイシャの味方だ。それでは不足か?」
「………わかりました、アイシャ様は王立図書館で殿下にたまたまお会いになりました」
「『おい、アイシャ!お前何こんなところにいるんだ?』
アイシャ様は殿下の言葉を無視して本を読み続けたました。
『ったく、何無視しているんだ。アイシャのくせに!』
アイシャ様の読んでいる本を取り上げると
『へえ、『遺伝における魔法学』ふうん』
ニヤッと笑った王子。
『返してくださいませんか?』
『気にしてたんだ?お前が誰の子か?』
殿下の意地悪な言葉を聞き流してアイシャ様は王子の顔を一度も見ないままその場を立ち去る事にした。
『その本の返却よろしくお願いします。では失礼いたします』
『お、お前!誰に向かって言ってるんだ!』
分厚く硬い表紙の本をアイシャ様の顔に向かって投げつけてきた。
バコッ!
いきなりだったので防御出来ずにアイシャ様の頭に本が当たった。
アイシャ様は激しい痛みにその場に蹲ってしまった。
わたしは王子のそばに寄ることは出来ずに遠くから見守っていましたがアイシャ様が蹲ったのを見て慌てて駆け寄り、医務室へ連れて行きました」
「怪我をさせたのは殿下だったのか……アレもまたアイシャのことが好きで素直になれずアイシャに意地悪を言って気を引こうとしている馬鹿だ。そんなことをすればさらにアイシャに嫌われると思わないんだからな。
全くちやほやされ甘やかされて育ったボンボンは傲慢な態度しか取れない。ターナも殿下も同じ馬鹿だな」
「殿下から謝罪があったとは耳に入っていない、もちろん殿下が怪我をさせたという話も聞こえていない……アレはアイシャが怪我して入院してもなんとも思っていないのか?それにリサ達は転んで怪我をしたと本気で思っているのか?」
わたしは、我が娘ながら呆れ返ってしまった。
どう見てもアイシャの怪我が転んで出来るわけがない。
あのクソガキ。
大事なアイシャに怪我をさせやがって。
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