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お父様、わたしを高く買ってくれる人のところへお嫁に行きます。

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わたしの様子があまりにもおかしかったのだろう。

先生はすぐにお父様を呼んでくれた。


「お父様、わたしお家へ帰りたいです。ここには居たくありません、恐い、帰りたい」

わたしはわんわん泣き出した。

子どものように声をあげて、お父様の胸の中で泣き続けた。

「何かあったのですか?」
お父様が看護師さんに尋ねた。

「王太子殿下と側近の方がお忍びでお見舞いに来られました。それからセスティさんの様子がおかしくなりました」

「あー、流石に殿下は止められないものね」

先生は頭を抱えていた。

わたしがどうしてこんな状態になったのかすぐに察したのだ。

「すぐに退院させましょう。しばらくは自宅療養でなんとか体を治していきましょう」

わたしの体はまだ完全ではない。


それでも無理を言って退院させてもらった。

病院にいるとまたいつ現れるかわからない殿下達に恐怖を感じながら過ごすのは、わたしの心を壊しかねないと判断したのだ。

「お父様、我儘言ってごめんなさい」
お父様は震えが止まらない青い顔をしたわたしを抱きしめて、

「セスティ、君の心はこんなに傷ついていたんだね、心配しないで、わたしがそばに居るから」

わたしはホッとしてそのまま眠ってしまった。


目が覚めるといつものわたしの部屋のベッドで寝ていた。

「セスティ様目が覚めてよかった」
アイシンがわたしの顔を覗き込むように見て、

「やっとセスティ様に会えた。ずっと心配していました」
と言ってくれた。

やっぱりこの家に帰ってきてよかった。

みんなの顔を見ればホッとする。

それからは自宅で少しずつ食事の量を増やしていった。
体重も緩やかだけど少しずつ増やすことができた。

ひと月かかりなんとか普段の生活をすることが出来るようになった。

「お父様、そしてみんな迷惑をおかけしてすみませんでした」
みんなにお礼を言って、今日から仕事に復帰することになった。


職場のみんなは、休んで迷惑をかけたにも関わらず嫌な顔をせず受け入れてくれた。

イリーンさんは相変わらず厳しく指導してくれるけどたくさんの量を回さないでくれた。

わたしもなんとかこなせそうな量を的確に回してくれるので感謝している。

殿下達がわたしの前に現れことは今のところなかった。




落ち着いた時間が戻ってきた時に、わたしに話が持ち上がった。

それはお父様に婚約の打診が何件か来ていると言うのだ。

考えたらわたしももうすぐ19歳。

この国の女性は大体18歳から22歳くらいの間に結婚するのが当たり前だ。

わたしは婚約解消してから2年が経っている。

今まではお父様も引きこもりであまり良くない噂しかない我が家に婚約の話など来なかったが、最近お父様も働き出したし、わたしの悪い噂も事実ではなかったことが誤解していた人たちも知ることになり、わたしの縁談が舞い込んできたのだ。

「お父様、わたしはわたしを一番高く買ってくれた人のところにお嫁に行きます」

「そんな……セスティは物ではないんだ。愛する人と幸せになって欲しい」

「お父様、わたしはもう人を愛することはありません。そんな恋心などずっと前に無くなってしまいました。
もう二度と人を愛することはありません。
男爵家ではありますが、貴族令嬢としての義務として一番支度金を高く払ってくれる人のところにお嫁に行きます、誰でもいいですわ」

「セスティ様?お嫁に行ってしまうの?」
アイシンが寂しそうに聞いてきた。

「すぐにではないから大丈夫よ」

グレイは
「僕はセスティ様のお嫁に行く場所について行ってもいいですか?セスティ様が寂しがらないように、美味しいお茶を入れて差し上げたいんです」

「グレイありがとう。嬉しいわ」
「じゃあ、アイシンもセスティ様が寂しくないように着いていきます!」

「二人がいなくなったら、わたしが寂しいよ」

「旦那様は大丈夫です!」
アイシンが笑顔で答えた。

「何故だい?」
お父様が不思議そうに聞くと

「また道で私たちみたいなのを拾ってくればいいと思います」

「うーん、そんな簡単に子どもは落ちていないよ」

「え?ええ?そうなんですか?」

うん、アイシン、人はそんなにオチテハイマセンヨ。

こうしてとりあえずお父様が選んでくれることになった。

わたしは面倒なので誰でもいいと言ったので、本当に婚約を正式に行う日まで相手の名前も顔も知らずにいた。

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