15 / 21
2章 ある騎士の物語
第4話
しおりを挟む
「ねえ、ウィル。今夜はわたしの部屋で護衛してね」
「申し訳ございません。護衛騎士は部屋の外でするという決まりがあります」
「そんな決まりなんて気にしないで、ウィルはいつもわたしの側に居てちょうだい」
「セシリア、いい加減に護衛達を困らせるな」
団長があの女を諌めてくれた。
団長は時折こちらに来ては様子を伺って助けてくれるようになった。
あの女は小さく「チッ」と舌打ちをして
「叔父様はどうしてわたしに意地悪をするの?ウィルはわたしのことが大好きなのよ、わたしも彼が好きよ。わたし達の邪魔をしないで」
悲しそうな顔で団長を見ているが儚げには見えないし強欲ないやらしい女にしか見えない。
団長は溜息を吐きながらも刺激しないように気を使いながら王女に言った。
「ウィルは今から昨日の報告書を提出してもらわなければいけないんだ。ウィル、早くしろ!」
「申し訳ありません、急ぎます」
俺は慌てて団長の執務室へ向かった。
「ウィル、セシリアに接触している怪しい奴は今のところ影から報告を受けていない。ただセシリアはお前の恋人を邪魔だ、なんとか排除したいと護衛騎士や侍女、会う文官や学園など周りのいる者達に呟いているらしい、それを聞いてご機嫌取りで動いたものがいるのではと思っている、ただ、セシリアが自ら頼んでいるようには見えない」
俺は今アンナを襲った男達を探している。早く分かれば手の打ちようもある。
だが誰が裏にいるのか分からない。
あの女が誰かに命令している様子が見当たらない。
俺は焦っていた。
前回襲われた時も結局犯人はわからなかった。
あの女は、襲われた時の話はしても誰が犯人かは一切話さなかった。あんなに口が軽いのに何故ボロを出さないのか。
俺はあの女が言った言葉を思い出す。
「ふふ。あれね、男達は確かにあの女を犯したわ。でもね中には出していないの。避妊薬も男達は飲ませておいたの、だから妊娠は貴方の子じゃない?それを苦にして死んだのなら貴方の子を殺したのは貴方の恋人ってことよね、そして貴方が妊娠させたんだからそれを苦に死んだのは貴方の所為よ」
思い出すだけで腑が煮え繰り返りそうになる。
アンディが夢で見たと言った言葉を思い出す。
「別に意味などないわ。わたしが気に入らない女性がどうにかなったらいいのになって心の中で願うと何故かその女性が不幸になるの、何故かしら?」
その言葉はアンディへの挑発なのかと思っていたが
違うのか。
本当にあの女がぶつぶつ言っていることを実行した奴がいるのか。俺は何か見落としている気がしてならなかった。
そしてまたあの女のところへ行き護衛をした。
あの女が部屋から出て来ないので今のところ安心して外で立っていることができる。
今日はハックと二人で護衛をしている。
「なあ、ウィル。あんた、セシリア様と寝たのか?」
「はあ?何を言ってるんだ。そんなことあり得ない」
「いいよなぁ、セシリア様のお気に入りなんてさ。顔が良くて剣術が優れて王宮で人気のあるアンナ嬢と婚約までしてる、その上王女様のお気に入り、羨ましいよ」
「だったらお前が俺の代わりになるか?アンナはやらないがセシリア様のお気に入りに成ればいい」
「成れるものなら成りたいよ」
ハックは鼻で笑った。
ハックの笑い方に何か引っかかるものがあったが俺はそのまま護衛としての仕事をしていた。
「申し訳ございません。護衛騎士は部屋の外でするという決まりがあります」
「そんな決まりなんて気にしないで、ウィルはいつもわたしの側に居てちょうだい」
「セシリア、いい加減に護衛達を困らせるな」
団長があの女を諌めてくれた。
団長は時折こちらに来ては様子を伺って助けてくれるようになった。
あの女は小さく「チッ」と舌打ちをして
「叔父様はどうしてわたしに意地悪をするの?ウィルはわたしのことが大好きなのよ、わたしも彼が好きよ。わたし達の邪魔をしないで」
悲しそうな顔で団長を見ているが儚げには見えないし強欲ないやらしい女にしか見えない。
団長は溜息を吐きながらも刺激しないように気を使いながら王女に言った。
「ウィルは今から昨日の報告書を提出してもらわなければいけないんだ。ウィル、早くしろ!」
「申し訳ありません、急ぎます」
俺は慌てて団長の執務室へ向かった。
「ウィル、セシリアに接触している怪しい奴は今のところ影から報告を受けていない。ただセシリアはお前の恋人を邪魔だ、なんとか排除したいと護衛騎士や侍女、会う文官や学園など周りのいる者達に呟いているらしい、それを聞いてご機嫌取りで動いたものがいるのではと思っている、ただ、セシリアが自ら頼んでいるようには見えない」
俺は今アンナを襲った男達を探している。早く分かれば手の打ちようもある。
だが誰が裏にいるのか分からない。
あの女が誰かに命令している様子が見当たらない。
俺は焦っていた。
前回襲われた時も結局犯人はわからなかった。
あの女は、襲われた時の話はしても誰が犯人かは一切話さなかった。あんなに口が軽いのに何故ボロを出さないのか。
俺はあの女が言った言葉を思い出す。
「ふふ。あれね、男達は確かにあの女を犯したわ。でもね中には出していないの。避妊薬も男達は飲ませておいたの、だから妊娠は貴方の子じゃない?それを苦にして死んだのなら貴方の子を殺したのは貴方の恋人ってことよね、そして貴方が妊娠させたんだからそれを苦に死んだのは貴方の所為よ」
思い出すだけで腑が煮え繰り返りそうになる。
アンディが夢で見たと言った言葉を思い出す。
「別に意味などないわ。わたしが気に入らない女性がどうにかなったらいいのになって心の中で願うと何故かその女性が不幸になるの、何故かしら?」
その言葉はアンディへの挑発なのかと思っていたが
違うのか。
本当にあの女がぶつぶつ言っていることを実行した奴がいるのか。俺は何か見落としている気がしてならなかった。
そしてまたあの女のところへ行き護衛をした。
あの女が部屋から出て来ないので今のところ安心して外で立っていることができる。
今日はハックと二人で護衛をしている。
「なあ、ウィル。あんた、セシリア様と寝たのか?」
「はあ?何を言ってるんだ。そんなことあり得ない」
「いいよなぁ、セシリア様のお気に入りなんてさ。顔が良くて剣術が優れて王宮で人気のあるアンナ嬢と婚約までしてる、その上王女様のお気に入り、羨ましいよ」
「だったらお前が俺の代わりになるか?アンナはやらないがセシリア様のお気に入りに成ればいい」
「成れるものなら成りたいよ」
ハックは鼻で笑った。
ハックの笑い方に何か引っかかるものがあったが俺はそのまま護衛としての仕事をしていた。
46
お気に入りに追加
2,382
あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる