【完結】浮気などしません、愛しているのは貴方だけです

たろ

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2章  ある騎士の物語

第3話

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しばらく待っていると団長からの伝言で王宮にある団長の私室に来るように言われた。

団長は王宮にバストイレ付きで客間と寝室と執務室がある部屋を持っている。
屋敷に帰ることもあるが週の半分はここで寝泊まりしているらしい。

俺とアンディは団長の私室の客間に通された。
初めて入ったこの部屋は豪華で座り心地の良いソファが置かれている。
俺たちが普段飲めない高級な茶葉を使った紅茶を出された。

目の前に座っているのはあの女の兄である皇太子殿下だった。
団長は全てを殿下に話されたそうだ。
殿下にはもちろん前回の記憶も夢もない。

信じる訳がないはずなのに俺たちの顔を見て頭を下げてこられた。
「叔父上に話は聞いた。父と母、そして妹のセシリアがすまなかった。セシリアは今でもかなりの問題を犯しているんだ。騎士達は知らない話だが、学園でも何人かの女の子が同じ目にあっているんだ」

「え?」
俺は信じられなかった。
それならどうして罪に問うことが出来ないのか?何をしたのか知っているんだろう?

俺は不敬になるのでグッと我慢した。
俺に地位や権力があれば守ることが出来るのに、何の力もないことが悔しくてたまらない。
「父上が全て握りつぶしているんだ」
殿下は暗い顔をしていた。

「僕はもうセシリアは北の塔に入れて幽閉するべきだと思っている。一生外へは出さない方がいいと思っているんだがまだ両親はあの子を庇ってしまうんだ」

団長は言った。
「王族を簡単に罰することはこの国の根幹を揺るがしかねない、だがセシリアは今の時点でもやりすぎた。さらに未来では人としてしてはいけない、言ってはいけないことまでしている。俺はセシリアを幽閉だけで終わらせてはいけないと思う。何か恩赦でもあれば簡単に出てきてしまう。あれはもう捨てるしかない」

「……捨てる……聞いた話では前回は隣国に持参金を倍にして渡してセシリアを抱きつくさせてウィルに復讐として殺させたと聞いた」
殿下はなんとも言えない顔をして言ったのだった。

俺はその時にあの女に言われた言葉を話した。

「ふふ。あれね、男達は確かにあの女を犯したわ。でもね中には出していないの。避妊薬も男達は飲ませておいたの、だから妊娠は貴方の子じゃない?それを苦にして死んだのなら貴方の子を殺したのは貴方の恋人ってことよね、そして貴方が妊娠させたんだからそれを苦に死んだのは貴方の所為よ」

そして、暴行されてあの女が俺に言った言葉も話した。

「わたしが見た時はこんな汚い姿になっていたのよ。誰か知らないけどウィル、医務室に連れて行きなさい、こんな汚くて触るのも嫌でしょうけど可哀想だものね、ああ、汚いわ、男に犯されて。何人の男としたのかしら?ふふふ」

俺は前回の時のことは忘れない。

殿下も団長も考え込んでいた。

俺は危険だがアンナに話して協力を求めてあの女を追い詰めて証拠を握り罰を与えたいと訴えた。

殿下はかなり考え込んでいたが「わかった」と言って影を数人貸してくれることになった。
さらにあの女の影を交代させてこちらの手の者(影)をあの女に付けることにした。
これは全て殿下が協力してくれるから出来ることだった。

そしてアンナには全ては話さずに王女に執着されていてアンナ自身が危険なこと、王女が罪を犯しているので殿下と団長と話し合い証拠を探してをしていること、それに伴いアンナに影と護衛をつけているがもしもの時は必ず助けに行くので待っていて欲しいと頼んだ。

アンナは初めは怯えていたが俺が必ず守るからと何度も訴えてなんとか説得できた。

内心は怖いはずだ。でも俺たちの未来を守るためには今はこれが最善なのだと思っている。あの最悪な過去からは何があっても回避してアンナを守らなければいけない。守るために危険な目に合わせる矛盾に己の力の無さを呪い、それでもあの女を破滅させるためにこの矛盾に目を瞑るしかない。

団長はあの女の動きを細かく見張り少しでも怪しい動きをしたら証拠として集めている。
アンディは俺と共に護衛騎士としてあの女に出来るだけ付いて見張っている。

最悪の日まで後残り2週間。






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