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2章 ある騎士の物語
第2話
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アンディが部屋に入ってきた。
彼は俺と団長を見て何故呼ばれたのか不思議そうにしていた。
俺は近衛騎士ではあるが特に役職はついていない。
だから団長と二人っきりでいるのは違和感があるのだろう。
「アンディ、今から話すことは他言無用だ。わかったな」
「はい!」
アンディは敬礼をして団長の話に耳を傾けた。
そして俺が伝えた話を全て団長が経験したかのようにアンディに話した。
するとアンディはさっきの団長と同じようなことを言い出した。
「団長、わたしも最近今の話と同じ夢を見るのです。自分がセシリア様付きの騎士になり恋人であるヴィオラが狙われて会えなくなるんです。そしてセシリア様はウィル殿の恋人と同じめにあわせるとわたしを脅したんです、夢だと言うのにとても苛立ち胸がモヤモヤしていたんです。これはどう言うことなんでしょう?」
「良くわからないんだが、多分我々は過去に戻ったんだと思う。だから三人がそれぞれ夢の中での記憶が同じなんだと思うんだ。と言うことはこれから起こり得ることなんだ。それもウィルの恋人が攫われて酷い目に合うのは後数週間後だ。日にちも時間も攫われた場所も全て覚えている。何とか助け出したい、ただ助けるだけではなくてセシリアを罪に問わなければ次はアンディが狙われる」
「絶対に阻止します」
「待ってください、証拠がなければ罪に問うことが出来ません。アンナを攫って犯すところをセシリア様は見ているんです、ですからギリギリの所で捕まえて証人と証拠を取るひつようがあります。罪に問わなければ陛下と皇后様が握り潰します」
「失敗すれば君の恋人は前回と同じ目に合うんだ!そんな危険な賭けは出来ない」
「賭けでもしなければあの女を始末することは出来ません。二人とも夢とは言えあの女のしたことを分かっているなら野放しにはできないでしょう!それに陛下と皇后様はあの女が本当にやったことをわからせない限りすぐにあの女を庇われて何もなかったかのようにしていまいます」
団長は黙って聞いてから
「わかった、少しここで待っていろ、いや、しばらく待っていろ、わかったな」
と言うと急いで何処かへ行ってしまった。
俺とアンディは二人で話をした。
おたがいの恋人を守るためだ。
俺はアンナといずれ分かる俺の子どものためにも何があっても今度こそ守ると誓っている。
そしてアンナを暴行した男たちのことも思い出していた。
男たちはセシリア様に雇われたのだが、あの女がそんな破落戸を知るわけがない。誰かが紹介なり手筈を整えたはずなのだが全く証拠がなかった。誰がやったのかわからない。
だからこそ罪に問うことが出来なかった。
ただ前回の時、アンナは王宮にある離宮の使用人用の控え室に攫われて暴行にあった。
日にちは8月8日の昼間1時過ぎだった。女官として働いているアンナは昼食を終えて仕事に戻ろうと廊下を歩いている時に男たちに攫われた。
そして離宮の使用人用の控え室で暴行にあった。その後俺はあの女に離宮に呼ばれてぼろぼろの服でぐったりと倒れて気絶しているアンナを見つけた。
後ろであの女は笑っていたのだ。
「わたしが見た時はこんな汚い姿になっていたのよ。誰か知らないけどウィル、医務室に連れて行きなさい、こんな汚くて触るのも嫌でしょうけど可哀想だものね、ああ、汚いわ、男に犯されて。何人の男としたのかしら?ふふふ」
俺は立ち上がりあの女を殴り殺そうとした。
仲間の騎士が「止めろ!」と言って取り押さえられなければ絶対に殴り殺していた。
俺はアンナに服をかけて誰にもこの姿を見せないように抱きかかえて医務室に連れて行った。
アンナが意識を取り戻したと聞いて会いに行ったら中に入るのを止められた。
「いやあー!来ないで!やめてぇー!助けて、いや、助けて!」
泣きながら叫んでいた。
叫びながら大泣きして暴れていた。
辛かっただろうとか大丈夫だとか俺が言える立場ではない。俺の所為で彼女は酷い目にあった。何人もの男に犯されたのだ。
俺は部屋の外で壁を叩いた。どんなに血が出ても痛くなどない。こんな痛みアンナに比べたら大したことはない。俺が素直にあの女の傀儡になっていれば良かったんだ。アンナと別れていればアンナはこんな辛い思いをしなくてよかったんだ。
俺はアンナに合わせる顔がなかった。
それでもあの女は俺を護衛騎士としてそばに置く。
俺はもう無理だと団長に訴えたが証拠がないから陛下が全て握りつぶしたと言っている。
本人の証言があるのに気がふれている女の証言など当てにならないと却下された。
本人のあの女が、自分が犯されているところを見ていたと言うのに却下するなんておかしいだろう。それも俺が近衛騎士を辞めようとしたら、俺の実家と彼女の実家の男爵家がどうなってもいいのかと今度は脅してきた。
辞めることも死ぬこともこの女を罪に問うことも殺すことも出来ない。
俺は耐えた。耐えるしかなかった。
周りのことなんか気にしないで殺したいのに俺の幼い弟たちまで巻き添えになることを考えると何も出来ない。
辛くて寝れなくて死にたくてもうどうでも良くなった。
そんな時アンナが誰の子かわからないのに妊娠してしまった。それを知った彼女は実家で首を吊り自殺した。
俺は耐えられなくなりあの女を殺そうと王宮に来た。あの女の部屋へ押し入ろうと周りの騎士たちを殴り飛ばした。そして入ろうとした時に団長達に押さえ込まれた。
「ダメだ。今はダメだ」
「我慢しろ、今殺したらお前の親族にまで迷惑をかける」
「絶対復讐出来る時が来る、それまで待て」
俺はそのまま牢に入れられた。
今回は、彼女を絶対に助ける。そしてあの女を抹殺してやる。
彼は俺と団長を見て何故呼ばれたのか不思議そうにしていた。
俺は近衛騎士ではあるが特に役職はついていない。
だから団長と二人っきりでいるのは違和感があるのだろう。
「アンディ、今から話すことは他言無用だ。わかったな」
「はい!」
アンディは敬礼をして団長の話に耳を傾けた。
そして俺が伝えた話を全て団長が経験したかのようにアンディに話した。
するとアンディはさっきの団長と同じようなことを言い出した。
「団長、わたしも最近今の話と同じ夢を見るのです。自分がセシリア様付きの騎士になり恋人であるヴィオラが狙われて会えなくなるんです。そしてセシリア様はウィル殿の恋人と同じめにあわせるとわたしを脅したんです、夢だと言うのにとても苛立ち胸がモヤモヤしていたんです。これはどう言うことなんでしょう?」
「良くわからないんだが、多分我々は過去に戻ったんだと思う。だから三人がそれぞれ夢の中での記憶が同じなんだと思うんだ。と言うことはこれから起こり得ることなんだ。それもウィルの恋人が攫われて酷い目に合うのは後数週間後だ。日にちも時間も攫われた場所も全て覚えている。何とか助け出したい、ただ助けるだけではなくてセシリアを罪に問わなければ次はアンディが狙われる」
「絶対に阻止します」
「待ってください、証拠がなければ罪に問うことが出来ません。アンナを攫って犯すところをセシリア様は見ているんです、ですからギリギリの所で捕まえて証人と証拠を取るひつようがあります。罪に問わなければ陛下と皇后様が握り潰します」
「失敗すれば君の恋人は前回と同じ目に合うんだ!そんな危険な賭けは出来ない」
「賭けでもしなければあの女を始末することは出来ません。二人とも夢とは言えあの女のしたことを分かっているなら野放しにはできないでしょう!それに陛下と皇后様はあの女が本当にやったことをわからせない限りすぐにあの女を庇われて何もなかったかのようにしていまいます」
団長は黙って聞いてから
「わかった、少しここで待っていろ、いや、しばらく待っていろ、わかったな」
と言うと急いで何処かへ行ってしまった。
俺とアンディは二人で話をした。
おたがいの恋人を守るためだ。
俺はアンナといずれ分かる俺の子どものためにも何があっても今度こそ守ると誓っている。
そしてアンナを暴行した男たちのことも思い出していた。
男たちはセシリア様に雇われたのだが、あの女がそんな破落戸を知るわけがない。誰かが紹介なり手筈を整えたはずなのだが全く証拠がなかった。誰がやったのかわからない。
だからこそ罪に問うことが出来なかった。
ただ前回の時、アンナは王宮にある離宮の使用人用の控え室に攫われて暴行にあった。
日にちは8月8日の昼間1時過ぎだった。女官として働いているアンナは昼食を終えて仕事に戻ろうと廊下を歩いている時に男たちに攫われた。
そして離宮の使用人用の控え室で暴行にあった。その後俺はあの女に離宮に呼ばれてぼろぼろの服でぐったりと倒れて気絶しているアンナを見つけた。
後ろであの女は笑っていたのだ。
「わたしが見た時はこんな汚い姿になっていたのよ。誰か知らないけどウィル、医務室に連れて行きなさい、こんな汚くて触るのも嫌でしょうけど可哀想だものね、ああ、汚いわ、男に犯されて。何人の男としたのかしら?ふふふ」
俺は立ち上がりあの女を殴り殺そうとした。
仲間の騎士が「止めろ!」と言って取り押さえられなければ絶対に殴り殺していた。
俺はアンナに服をかけて誰にもこの姿を見せないように抱きかかえて医務室に連れて行った。
アンナが意識を取り戻したと聞いて会いに行ったら中に入るのを止められた。
「いやあー!来ないで!やめてぇー!助けて、いや、助けて!」
泣きながら叫んでいた。
叫びながら大泣きして暴れていた。
辛かっただろうとか大丈夫だとか俺が言える立場ではない。俺の所為で彼女は酷い目にあった。何人もの男に犯されたのだ。
俺は部屋の外で壁を叩いた。どんなに血が出ても痛くなどない。こんな痛みアンナに比べたら大したことはない。俺が素直にあの女の傀儡になっていれば良かったんだ。アンナと別れていればアンナはこんな辛い思いをしなくてよかったんだ。
俺はアンナに合わせる顔がなかった。
それでもあの女は俺を護衛騎士としてそばに置く。
俺はもう無理だと団長に訴えたが証拠がないから陛下が全て握りつぶしたと言っている。
本人の証言があるのに気がふれている女の証言など当てにならないと却下された。
本人のあの女が、自分が犯されているところを見ていたと言うのに却下するなんておかしいだろう。それも俺が近衛騎士を辞めようとしたら、俺の実家と彼女の実家の男爵家がどうなってもいいのかと今度は脅してきた。
辞めることも死ぬこともこの女を罪に問うことも殺すことも出来ない。
俺は耐えた。耐えるしかなかった。
周りのことなんか気にしないで殺したいのに俺の幼い弟たちまで巻き添えになることを考えると何も出来ない。
辛くて寝れなくて死にたくてもうどうでも良くなった。
そんな時アンナが誰の子かわからないのに妊娠してしまった。それを知った彼女は実家で首を吊り自殺した。
俺は耐えられなくなりあの女を殺そうと王宮に来た。あの女の部屋へ押し入ろうと周りの騎士たちを殴り飛ばした。そして入ろうとした時に団長達に押さえ込まれた。
「ダメだ。今はダメだ」
「我慢しろ、今殺したらお前の親族にまで迷惑をかける」
「絶対復讐出来る時が来る、それまで待て」
俺はそのまま牢に入れられた。
今回は、彼女を絶対に助ける。そしてあの女を抹殺してやる。
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