11 / 21
第11話
しおりを挟む
俺はヴィオラと結婚した。
初夜はお互い初めてで笑い話にしかならないが素敵な夜だった……と思うしかないよなぁ…………シュン……
「ヴィオラ、愛しているよ」
俺は毎朝、毎晩欠かさずに言っている。
何故かって……
手紙が届いた。
「セシリアを殺した。俺は彼女の復讐を果たしたがお腹の子は俺の子だった。知らずに死なせてしまった。王女が男達に避妊させていたから俺の子どもだと言った。俺は二人の元へ行って幸せになる。俺たちのような不幸な者を絶対に作るな。幸せになれ」
殴り書きできた手紙を俺は読んだ。
一晩中泣き続けた。
三人に会いに二人で墓参りに行った。
俺たちも、こうなっていたかもしれない。
二人で頭を下げて祈った。
「空の向こうでどうか三人で幸せに暮らしてください」
だから、俺はヴィオラが鬱陶しいと言っても毎日「愛している」と言っている。
元王女の死は事故死とされ、密葬で隣の国で執り行われたらしい。我が国ではあまり話題に上がらなかった。
まあ、あまり人気のない人だったんでみんな興味もない。
俺は彼らが天国で幸せでいることを願うだけだ。
◇ ◇ ◇
「おとちゃま、だっこぉ」
2歳の娘のマリンはヴィオラに似ていてとても可愛い。
「じぃじのところにおいで」
「じぃじ、しゅきぃ」
クソ親父は何かと用事を作っては我が家に来る。
そして愛しのマリンを抱っこしようとする。
「お父様は?」
「おとちゃま、しゅき!」
「おとちゃまのところにおいで!」
「あーい」
俺が勝った!
俺はクソ親父を見て、ほくそ笑んだ。
「じぃじと今からケーキを食べよう」
「じぃじ、いくぅ」
マリンは俺から離れてクソ親父のところに行こうとした。
「マリン、おとちゃまと高い高いして遊ぼう」
「ちゃかいちゃかい?」
「うん、高い高い」
「ちゅるぅ」
「二人ともいい加減にしなさい!」
ヴィオラが鬼のように仁王立ちしていた。
「おにぃ、おにぃ」
マリンがヴィオラを指差して言ったので、
「もう、変なこと教えないで!」
何も教えていないのに怒られた。
ヴィオラはマリンを抱っこしてさっさと邸に帰って行った。
俺とクソ親父は二人でぽつんとなった。仕方ないのですごすごと邸に帰った。
俺は可愛い娘と愛するヴィオラの三人で平和に暮らしている。
ただし、クソ親父が毎回現れて邪魔をするのがムカつく。
今日は久しぶりに、団長が来た。
「団長、お久しぶりです」
「俺はもう団長ではないと言っただろう。ただの近所のおじちゃんだ」
「だぁん、だっこぉ」
「おじちゃんと遊ぶか」
「うん、だっこぉ、ちゃかいちゃかい、ちて」
団長は騎士団を辞めて息子に公爵当主を譲り今は若い騎士達の育成に取り組んでいる。
自分が出来る詫びはこれくらいしかないからと、邸に若い子達を住まわせて厳しく指導をしている。
俺は初め団長のことを姪に甘いだけの馬鹿な男だと思っていた。
まさか、騎士を守るために牢に入れ、復讐出来る様に影で手筈を整えていたなんて知らなかった。
俺はまだまだ人を見る目がないとつくづく思った。
俺の家にはクソ親父を始め元団長や元騎士達が集まってみんなで騒ぎながらも楽しく過ごしている。
俺は何があっても浮気はしないと決めて過ごしてきた。今も愛しているのはヴィオラだけ……ではなくてヴィオラとマリンだけだ。
「二人を愛している」
「とうちゃま、まぁも、あいちてぇりゅ」
おしまい
◆ ◆ ◆
読んでいただきありがとうございました。
なんとなく思いついた話しを書いたのですが、牢に入った騎士と彼女の事が書いていて切なくて(;_;)
すみません、二人を幸せにしてあげれなくて、でも向こうの世界で三人で幸せに暮らしていると思います。
うん、絶対に。
初夜はお互い初めてで笑い話にしかならないが素敵な夜だった……と思うしかないよなぁ…………シュン……
「ヴィオラ、愛しているよ」
俺は毎朝、毎晩欠かさずに言っている。
何故かって……
手紙が届いた。
「セシリアを殺した。俺は彼女の復讐を果たしたがお腹の子は俺の子だった。知らずに死なせてしまった。王女が男達に避妊させていたから俺の子どもだと言った。俺は二人の元へ行って幸せになる。俺たちのような不幸な者を絶対に作るな。幸せになれ」
殴り書きできた手紙を俺は読んだ。
一晩中泣き続けた。
三人に会いに二人で墓参りに行った。
俺たちも、こうなっていたかもしれない。
二人で頭を下げて祈った。
「空の向こうでどうか三人で幸せに暮らしてください」
だから、俺はヴィオラが鬱陶しいと言っても毎日「愛している」と言っている。
元王女の死は事故死とされ、密葬で隣の国で執り行われたらしい。我が国ではあまり話題に上がらなかった。
まあ、あまり人気のない人だったんでみんな興味もない。
俺は彼らが天国で幸せでいることを願うだけだ。
◇ ◇ ◇
「おとちゃま、だっこぉ」
2歳の娘のマリンはヴィオラに似ていてとても可愛い。
「じぃじのところにおいで」
「じぃじ、しゅきぃ」
クソ親父は何かと用事を作っては我が家に来る。
そして愛しのマリンを抱っこしようとする。
「お父様は?」
「おとちゃま、しゅき!」
「おとちゃまのところにおいで!」
「あーい」
俺が勝った!
俺はクソ親父を見て、ほくそ笑んだ。
「じぃじと今からケーキを食べよう」
「じぃじ、いくぅ」
マリンは俺から離れてクソ親父のところに行こうとした。
「マリン、おとちゃまと高い高いして遊ぼう」
「ちゃかいちゃかい?」
「うん、高い高い」
「ちゅるぅ」
「二人ともいい加減にしなさい!」
ヴィオラが鬼のように仁王立ちしていた。
「おにぃ、おにぃ」
マリンがヴィオラを指差して言ったので、
「もう、変なこと教えないで!」
何も教えていないのに怒られた。
ヴィオラはマリンを抱っこしてさっさと邸に帰って行った。
俺とクソ親父は二人でぽつんとなった。仕方ないのですごすごと邸に帰った。
俺は可愛い娘と愛するヴィオラの三人で平和に暮らしている。
ただし、クソ親父が毎回現れて邪魔をするのがムカつく。
今日は久しぶりに、団長が来た。
「団長、お久しぶりです」
「俺はもう団長ではないと言っただろう。ただの近所のおじちゃんだ」
「だぁん、だっこぉ」
「おじちゃんと遊ぶか」
「うん、だっこぉ、ちゃかいちゃかい、ちて」
団長は騎士団を辞めて息子に公爵当主を譲り今は若い騎士達の育成に取り組んでいる。
自分が出来る詫びはこれくらいしかないからと、邸に若い子達を住まわせて厳しく指導をしている。
俺は初め団長のことを姪に甘いだけの馬鹿な男だと思っていた。
まさか、騎士を守るために牢に入れ、復讐出来る様に影で手筈を整えていたなんて知らなかった。
俺はまだまだ人を見る目がないとつくづく思った。
俺の家にはクソ親父を始め元団長や元騎士達が集まってみんなで騒ぎながらも楽しく過ごしている。
俺は何があっても浮気はしないと決めて過ごしてきた。今も愛しているのはヴィオラだけ……ではなくてヴィオラとマリンだけだ。
「二人を愛している」
「とうちゃま、まぁも、あいちてぇりゅ」
おしまい
◆ ◆ ◆
読んでいただきありがとうございました。
なんとなく思いついた話しを書いたのですが、牢に入った騎士と彼女の事が書いていて切なくて(;_;)
すみません、二人を幸せにしてあげれなくて、でも向こうの世界で三人で幸せに暮らしていると思います。
うん、絶対に。
83
お気に入りに追加
2,382
あなたにおすすめの小説


絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる