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第10話
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~ある騎士の独り言~
俺は騎士団を辞めた。
彼女は俺の所為で死んだ。
王女セシリアが俺を気に入ったのに、俺は彼女に靡かなかった。
俺には愛する恋人がいた。結婚を控えていた。
なのに彼女は王女の差し金で数人の男に無理やり強姦された。それだけでも彼女の精神はおかしくなっていて部屋から出られず泣き続ける毎日だったのに誰の子かわからない奴の子を妊娠した。
妊娠がわかった日、彼女は首を吊って死んだ。
俺はすぐに王女に会いに行った。
王女は言った。
「あら?わたしは何もしていないわ。貴方がわたしの言うことを聞かないのって独り言を言っただけよ。貴方の彼女、何人にも抱かれて気持ちよさそうだったわ、ふふふ」
俺はこの女を殺そうとした。
なのに仲間たちが俺を止めた。
みんなで俺を押さえつけた。
「ダメだ。今はダメだ」
「我慢しろ、今殺したらお前の親族にまで迷惑をかける」
「絶対復讐出来る時が来る、それまで待て」
俺はそのまま牢に入れられた。
牢の中にいると仲間たちが差し入れと言って隣の国の地図や王宮の見取り図、街の中を詳しく書いた本などとにかく隣の国の情報になるものを差し入れされた。
「これ全部頭に入れておけ」
団長が一言だけ言うと去って行った。
牢の中では栄養満点の食事が出され、鍛錬のための木刀も渡された。
その意味がわかったのは俺が牢から出てからだった。
王女は隣の国に嫁がされることになった。
それまでは幽閉されている。
この国を出てあの女を殺るための準備を牢でしていたのだ。
団長は姪が可愛くて庇っていたのだと思っていたが、証拠がなく罰せられなくて証拠を探していたらしい。
その間に俺が馬鹿なことをすれば犬死になるからと心配して牢に入れてくれた。
それも復讐するために準備もしてくれた。
俺は牢から出て、すぐにこの国を出た。
知らない奴らはこの国を見限っただけの男だと思っているだろう。
俺は団長の紹介で隣の国の騎士になり復讐の準備をした。
◇ ◇ ◇
~団長の独り言~
セシリアがしたことは人として女としてあり得ないことだった。
しかし王族を処罰するのは難しい。
国自体が揺らいでしまうかもしれない。
だから、隣の国へ嫁がせあの男に復讐させる。
隣の国の国王には全て話てある。国王はセシリアを好きなだけ抱き潰した後ならいらないから好きにしていいと承諾を得ている。
支度金も倍のお金を渡している。
口止め料だ。我が国さえ出て終えばもう死のうと生きようと関係ない。
姉上もセシリアのことは諦めたようだ。さすがに関係ない女性を辱めそれを見ていたと聞いてショックを受けていた。
姉上は皇后としてはもう不要だ。セシリアと一緒に幽閉して、セシリアが居なくなってもそのままにして出さないことにした。
陛下には退位してもらい王太子殿下に陛下になってもらうことが決まっている。
元陛下は側室達と離宮に押し込めて一生そこの中だけで暮らしてもらう。権力は全て剥奪する。
子は産まれないように避妊薬を毎日全員に飲ませることが決まっている。
無駄な争いを避けるためだ。
そしてわたしは団長を辞する。
◇ ◇ ◇
~セシリアの独り言~
やっと塔から出られたわ。
暗いし狭いしほんと最悪。
わたしは隣の国の国王の妻になるの。
わたしに傅く者がさらに増えるのよ!なんて素敵なの!
またわたし好みの男達をそばに置いて楽しまなきゃ。
わたしは隣の国へ行った。
パレードも花嫁衣装もない。
城に着くとすぐに部屋に入れられて国王に裸にされてそのまま抱かれた。
身に纏う物は何もない。
裸で過ごさないといけないの。
入浴も自分でしないと誰も手伝ってくれない。
侍女も護衛騎士もいない。
王は朝昼晩関係なく突然現れてわたしを抱いて去っていく。
優しいキスも愛撫もしてくれない。乱暴に抱かれるだけ。
「わたし服を着たいの」
「すぐに抱けるように服はいらない、お前は俺のペットだ」
わたしは国に帰りたい。こんな所は嫌。誰も助けてくれない。話し相手もいない。
毎日無理やり抱かれて終われば去っていくだけ。
わたしは身も心もボロボロになっていった。
数ヶ月後、国王は来なくなった。
なのにわたしは裸のまま。
シーツに包まり寝ていると、わたしのそばに誰かが来た。
「だあれ?」
そこにいたのはわたしのお気に入りの騎士だった。
「久しぶりね」
わたしは嬉しくて微笑んだ。
「貴方にこんな所で会えるなんて嬉しいわ。ねえ、服を持ってきてくれないかしら、わたしいい加減にこんな格好でいたくないわ」
彼は黙っていた。
「ねえ、何か言いなさいよ!」
「貴方は自分がしたことを反省しようと思わないのか」
「わたしが反省?何も悪いことなんてしていないわ」
「貴方がわたしの婚約者を殺したんだ!」
「何言ってるの?わたしは何もしていないわ」
「貴方が俺の恋人を辱めるように指示した。それを貴方は見ていた。そして妊娠させられ死んだんだ」
「ふふ。あれね、男達は確かにあの女を犯したわ。でもね中には出していないの。避妊薬も男達は飲ませておいたの、だから妊娠は貴方の子じゃない?それを苦にして死んだのなら貴方の子を殺したのは貴方の恋人ってことよね、そして貴方が妊娠させたんだからそれを苦に死んだのは貴方の所為よ」
わたしは笑った後お腹がとても温かくなった。
そして口の中から赤い液が出てきた。
これは何?血?
お腹を手で触ると何かヌルッとした温かな物が手についた。
これは何?血?
「い、いた、い……助け……て」
「お前に生きる価値はない」
「………………………………」
◇ ◇ ◇
俺は恋人の墓の前に立っている。
俺の子どもと恋人に会いに今から行く。
遅くなってごめん、向こうで三人で幸せになろう。
俺は騎士団を辞めた。
彼女は俺の所為で死んだ。
王女セシリアが俺を気に入ったのに、俺は彼女に靡かなかった。
俺には愛する恋人がいた。結婚を控えていた。
なのに彼女は王女の差し金で数人の男に無理やり強姦された。それだけでも彼女の精神はおかしくなっていて部屋から出られず泣き続ける毎日だったのに誰の子かわからない奴の子を妊娠した。
妊娠がわかった日、彼女は首を吊って死んだ。
俺はすぐに王女に会いに行った。
王女は言った。
「あら?わたしは何もしていないわ。貴方がわたしの言うことを聞かないのって独り言を言っただけよ。貴方の彼女、何人にも抱かれて気持ちよさそうだったわ、ふふふ」
俺はこの女を殺そうとした。
なのに仲間たちが俺を止めた。
みんなで俺を押さえつけた。
「ダメだ。今はダメだ」
「我慢しろ、今殺したらお前の親族にまで迷惑をかける」
「絶対復讐出来る時が来る、それまで待て」
俺はそのまま牢に入れられた。
牢の中にいると仲間たちが差し入れと言って隣の国の地図や王宮の見取り図、街の中を詳しく書いた本などとにかく隣の国の情報になるものを差し入れされた。
「これ全部頭に入れておけ」
団長が一言だけ言うと去って行った。
牢の中では栄養満点の食事が出され、鍛錬のための木刀も渡された。
その意味がわかったのは俺が牢から出てからだった。
王女は隣の国に嫁がされることになった。
それまでは幽閉されている。
この国を出てあの女を殺るための準備を牢でしていたのだ。
団長は姪が可愛くて庇っていたのだと思っていたが、証拠がなく罰せられなくて証拠を探していたらしい。
その間に俺が馬鹿なことをすれば犬死になるからと心配して牢に入れてくれた。
それも復讐するために準備もしてくれた。
俺は牢から出て、すぐにこの国を出た。
知らない奴らはこの国を見限っただけの男だと思っているだろう。
俺は団長の紹介で隣の国の騎士になり復讐の準備をした。
◇ ◇ ◇
~団長の独り言~
セシリアがしたことは人として女としてあり得ないことだった。
しかし王族を処罰するのは難しい。
国自体が揺らいでしまうかもしれない。
だから、隣の国へ嫁がせあの男に復讐させる。
隣の国の国王には全て話てある。国王はセシリアを好きなだけ抱き潰した後ならいらないから好きにしていいと承諾を得ている。
支度金も倍のお金を渡している。
口止め料だ。我が国さえ出て終えばもう死のうと生きようと関係ない。
姉上もセシリアのことは諦めたようだ。さすがに関係ない女性を辱めそれを見ていたと聞いてショックを受けていた。
姉上は皇后としてはもう不要だ。セシリアと一緒に幽閉して、セシリアが居なくなってもそのままにして出さないことにした。
陛下には退位してもらい王太子殿下に陛下になってもらうことが決まっている。
元陛下は側室達と離宮に押し込めて一生そこの中だけで暮らしてもらう。権力は全て剥奪する。
子は産まれないように避妊薬を毎日全員に飲ませることが決まっている。
無駄な争いを避けるためだ。
そしてわたしは団長を辞する。
◇ ◇ ◇
~セシリアの独り言~
やっと塔から出られたわ。
暗いし狭いしほんと最悪。
わたしは隣の国の国王の妻になるの。
わたしに傅く者がさらに増えるのよ!なんて素敵なの!
またわたし好みの男達をそばに置いて楽しまなきゃ。
わたしは隣の国へ行った。
パレードも花嫁衣装もない。
城に着くとすぐに部屋に入れられて国王に裸にされてそのまま抱かれた。
身に纏う物は何もない。
裸で過ごさないといけないの。
入浴も自分でしないと誰も手伝ってくれない。
侍女も護衛騎士もいない。
王は朝昼晩関係なく突然現れてわたしを抱いて去っていく。
優しいキスも愛撫もしてくれない。乱暴に抱かれるだけ。
「わたし服を着たいの」
「すぐに抱けるように服はいらない、お前は俺のペットだ」
わたしは国に帰りたい。こんな所は嫌。誰も助けてくれない。話し相手もいない。
毎日無理やり抱かれて終われば去っていくだけ。
わたしは身も心もボロボロになっていった。
数ヶ月後、国王は来なくなった。
なのにわたしは裸のまま。
シーツに包まり寝ていると、わたしのそばに誰かが来た。
「だあれ?」
そこにいたのはわたしのお気に入りの騎士だった。
「久しぶりね」
わたしは嬉しくて微笑んだ。
「貴方にこんな所で会えるなんて嬉しいわ。ねえ、服を持ってきてくれないかしら、わたしいい加減にこんな格好でいたくないわ」
彼は黙っていた。
「ねえ、何か言いなさいよ!」
「貴方は自分がしたことを反省しようと思わないのか」
「わたしが反省?何も悪いことなんてしていないわ」
「貴方がわたしの婚約者を殺したんだ!」
「何言ってるの?わたしは何もしていないわ」
「貴方が俺の恋人を辱めるように指示した。それを貴方は見ていた。そして妊娠させられ死んだんだ」
「ふふ。あれね、男達は確かにあの女を犯したわ。でもね中には出していないの。避妊薬も男達は飲ませておいたの、だから妊娠は貴方の子じゃない?それを苦にして死んだのなら貴方の子を殺したのは貴方の恋人ってことよね、そして貴方が妊娠させたんだからそれを苦に死んだのは貴方の所為よ」
わたしは笑った後お腹がとても温かくなった。
そして口の中から赤い液が出てきた。
これは何?血?
お腹を手で触ると何かヌルッとした温かな物が手についた。
これは何?血?
「い、いた、い……助け……て」
「お前に生きる価値はない」
「………………………………」
◇ ◇ ◇
俺は恋人の墓の前に立っている。
俺の子どもと恋人に会いに今から行く。
遅くなってごめん、向こうで三人で幸せになろう。
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