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第8話
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こうして俺は振られた。
セシリア様は予定通り、隣国の国王の10番目の側室として嫁いで行くことになった。
それまでは北の塔に幽閉される。
もう表に出ることはない。
彼女の所為で犠牲になって自殺した女性はもう戻ってはこない。だが犯罪を明るみにすることも出来ない王家は、両陛下が彼女の両親に直々に謝罪をしたらしい。
悲しみの気持ちはそんなことで済まされるわけがないのに。
騎士だった男は牢から出されて今はよその国へ行ってしまった。
この国を見限ったのだ。
俺も近衛騎士は辞めて伯爵位を継いで必死で執務をこなしている。
あの女の所為で俺はヴィオラを失ったが毎日ヴィオラに会いに行っている。
「ヴィオラ、俺はお前を愛している」
家の前で帰るのを待って愛を囁き続けて1ヶ月が過ぎた。
人はそれをストーカーと言うらしいが俺には関係ない。
ヴィオラは俺を見ると困ったように微笑んだ。
久しぶりの反応だ。
「アンディ貴方の気持ちは嬉しいわ、わたしが浮気だと誤解したこともごめんなさい、勘違いだと分かったわ。でも貴方のこともう信用出来ないの、愛せないわ」
俺は絶対に諦めない。
「ヴィオラ、俺は一度も浮気なんかしていない。それに俺は未だに童貞だ!女を知らない。初めては君だと決めている。お願いだ、信用して欲しい」
俺は恥も外聞も捨てて大きな声で叫んだ。
「アンディ!やめて!恥ずかしいわ」
俺はヴィオラに腕を掴まれ、久しぶりのヴィオラの家に入れてもらった。
彼女の部屋の甘い匂いにうっとりしていたら、
「アンディ、貴方恥ずかしいこと言わないで!嘘なんて吐かないで」
「嘘ではない。君とのキスが初めてだったし君としかキスをしたことはない。どんなに王女に迫られても部屋には入らなかったし一晩中一緒になんかいなかった。上司に命令されて仕方なく護衛していただけだ。あんな女絶対に愛せない」
「本当だったのね……団長様に謝られたわ。自分がアンディを強制的にセシリア様に就かせていたと聞いたわ。わたしを囮に使う提案をしたら絶対に嫌だと言って自分が囮になったと聞いたの。アンディ、わたしを守ってくれてありがとう」
「俺はずっとたヴィオラだけなんだ、愛しているんだ」
「アンディ、でもごめんなさい。もう貴方を愛せないわ。わたし達は終わったのよ」
「何故なんだ?好きな奴でもできたのか?」
「違うわ、わたし貴方に裏切られたと思って財務部を辞めて領地に戻ってお見合いをするの、相手も決まっているの」
「嫌だ!嫌だ!お見合いなんかさせない!するなら俺としよう!おれが君とお見合いをする。愛しているんだ」
「アンディ……今さらお父様にお断り出来ないわ」
「君は俺を諦められるんだ……」
俺は肩を落とした。どんなに言ってももう遅い。
俺がもっと早くあの女をどうにか出来ればよかったのに、後悔しても遅いんだ。やはりあの女殺すべきだった。
「アンディは本当にわたしを好きなの?」
「当たり前だ!君だけなんだ。振られても諦められない、どうすれば諦められるか教えて欲しいよ!」
俺は叫んでいた。
「俺はヴィオラの真面目で丁寧な仕事に最初好感を持った。それから毎日教えてもらっていたら会えない日が何故か物足りなくて寂しく感じたんだ。君が長く休んで会えなくなって、心配でたまらなくなった。気がつけば君に会いにいってたんだ。
それからは、君に会いたくて何かと理由をつけて会いにいった。やっと告白して恋人になったんだ。そして婚約までなんとか了承してもらったのに、あのクソ王女の所為で会えなくなったんだ!君への手紙も全部捨てられていたらしい。君に会うことも騎士団に邪魔された。君に会うと王女が嫉妬して君に危害を加えるからと言われた。実際に君には護衛と影が付いていて君を守ってくれていたんだ。俺は会いたいのに会えなくて我慢できなくて君の同僚に交換条件を出して君のことを教えてもらっていたんだ」
「交換条件?」
「俺の同僚の騎士が好きらしくてそいつのことを教えていたんだ」
「だったらどうして彼女を抱き寄せて歩いていたの?」
「それは、これ以上王女に狙われないようにだ。本当は彼女と接点を持たなければいいんだろうけど、ヴィオラのことをどうしても知りたかった。君に会えない間の君を知りたくて我慢できなかった。あれは顔を隠すために抱き寄せた振りをしていただけだ。実際は密着なんかしていない、後ろからそう見えるようにしていただけだ。俺はヴィオラだけにしか引っ付かない!」
「アンディ、わたしももう少し早くわかっていたら貴方と元に戻れていたのにね」
「今でも戻れるだろう」
「無理よ、お見合いをするの、たぶん結婚することになるわ」
「だめだ!俺としよう」
「ごめんなさい、父の領地が豪雨で災害が起きて立て直しにお金がかかるの。だから貴方ではダメなの」
「君は身売りをするのか?」
「そんな言い方酷いわ。わたしは領民を守りたいの」
「俺が守るよ。これでも伯爵になったんだ。それに騎士の退職金と慰労金でかなりのお金もある、大丈夫だから、結婚しよう」
俺はしつこく求婚した。
ヴィオラを愛しているんだ。
セシリア様は予定通り、隣国の国王の10番目の側室として嫁いで行くことになった。
それまでは北の塔に幽閉される。
もう表に出ることはない。
彼女の所為で犠牲になって自殺した女性はもう戻ってはこない。だが犯罪を明るみにすることも出来ない王家は、両陛下が彼女の両親に直々に謝罪をしたらしい。
悲しみの気持ちはそんなことで済まされるわけがないのに。
騎士だった男は牢から出されて今はよその国へ行ってしまった。
この国を見限ったのだ。
俺も近衛騎士は辞めて伯爵位を継いで必死で執務をこなしている。
あの女の所為で俺はヴィオラを失ったが毎日ヴィオラに会いに行っている。
「ヴィオラ、俺はお前を愛している」
家の前で帰るのを待って愛を囁き続けて1ヶ月が過ぎた。
人はそれをストーカーと言うらしいが俺には関係ない。
ヴィオラは俺を見ると困ったように微笑んだ。
久しぶりの反応だ。
「アンディ貴方の気持ちは嬉しいわ、わたしが浮気だと誤解したこともごめんなさい、勘違いだと分かったわ。でも貴方のこともう信用出来ないの、愛せないわ」
俺は絶対に諦めない。
「ヴィオラ、俺は一度も浮気なんかしていない。それに俺は未だに童貞だ!女を知らない。初めては君だと決めている。お願いだ、信用して欲しい」
俺は恥も外聞も捨てて大きな声で叫んだ。
「アンディ!やめて!恥ずかしいわ」
俺はヴィオラに腕を掴まれ、久しぶりのヴィオラの家に入れてもらった。
彼女の部屋の甘い匂いにうっとりしていたら、
「アンディ、貴方恥ずかしいこと言わないで!嘘なんて吐かないで」
「嘘ではない。君とのキスが初めてだったし君としかキスをしたことはない。どんなに王女に迫られても部屋には入らなかったし一晩中一緒になんかいなかった。上司に命令されて仕方なく護衛していただけだ。あんな女絶対に愛せない」
「本当だったのね……団長様に謝られたわ。自分がアンディを強制的にセシリア様に就かせていたと聞いたわ。わたしを囮に使う提案をしたら絶対に嫌だと言って自分が囮になったと聞いたの。アンディ、わたしを守ってくれてありがとう」
「俺はずっとたヴィオラだけなんだ、愛しているんだ」
「アンディ、でもごめんなさい。もう貴方を愛せないわ。わたし達は終わったのよ」
「何故なんだ?好きな奴でもできたのか?」
「違うわ、わたし貴方に裏切られたと思って財務部を辞めて領地に戻ってお見合いをするの、相手も決まっているの」
「嫌だ!嫌だ!お見合いなんかさせない!するなら俺としよう!おれが君とお見合いをする。愛しているんだ」
「アンディ……今さらお父様にお断り出来ないわ」
「君は俺を諦められるんだ……」
俺は肩を落とした。どんなに言ってももう遅い。
俺がもっと早くあの女をどうにか出来ればよかったのに、後悔しても遅いんだ。やはりあの女殺すべきだった。
「アンディは本当にわたしを好きなの?」
「当たり前だ!君だけなんだ。振られても諦められない、どうすれば諦められるか教えて欲しいよ!」
俺は叫んでいた。
「俺はヴィオラの真面目で丁寧な仕事に最初好感を持った。それから毎日教えてもらっていたら会えない日が何故か物足りなくて寂しく感じたんだ。君が長く休んで会えなくなって、心配でたまらなくなった。気がつけば君に会いにいってたんだ。
それからは、君に会いたくて何かと理由をつけて会いにいった。やっと告白して恋人になったんだ。そして婚約までなんとか了承してもらったのに、あのクソ王女の所為で会えなくなったんだ!君への手紙も全部捨てられていたらしい。君に会うことも騎士団に邪魔された。君に会うと王女が嫉妬して君に危害を加えるからと言われた。実際に君には護衛と影が付いていて君を守ってくれていたんだ。俺は会いたいのに会えなくて我慢できなくて君の同僚に交換条件を出して君のことを教えてもらっていたんだ」
「交換条件?」
「俺の同僚の騎士が好きらしくてそいつのことを教えていたんだ」
「だったらどうして彼女を抱き寄せて歩いていたの?」
「それは、これ以上王女に狙われないようにだ。本当は彼女と接点を持たなければいいんだろうけど、ヴィオラのことをどうしても知りたかった。君に会えない間の君を知りたくて我慢できなかった。あれは顔を隠すために抱き寄せた振りをしていただけだ。実際は密着なんかしていない、後ろからそう見えるようにしていただけだ。俺はヴィオラだけにしか引っ付かない!」
「アンディ、わたしももう少し早くわかっていたら貴方と元に戻れていたのにね」
「今でも戻れるだろう」
「無理よ、お見合いをするの、たぶん結婚することになるわ」
「だめだ!俺としよう」
「ごめんなさい、父の領地が豪雨で災害が起きて立て直しにお金がかかるの。だから貴方ではダメなの」
「君は身売りをするのか?」
「そんな言い方酷いわ。わたしは領民を守りたいの」
「俺が守るよ。これでも伯爵になったんだ。それに騎士の退職金と慰労金でかなりのお金もある、大丈夫だから、結婚しよう」
俺はしつこく求婚した。
ヴィオラを愛しているんだ。
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