【完結】浮気などしません、愛しているのは貴方だけです

たろ

文字の大きさ
上 下
2 / 21

第2話

しおりを挟む
「なあ、アンディ、ヴィオラ嬢と別れたのか?」
俺は暗い顔をしながら、同じ近衛騎士のハックを見て、溜息を吐いた。

「たぶん別れてはいないと思う。だが、手紙を出しても会ってはくれない」

「だろうな、王女の男娼様、愛人、婚約者がいるのに堂々と浮気する男なんだからな」

「ふざけるな!俺は何にもしていない!陛下だってご存知だ!団長だって知ってて助けてくれない!」

「陛下はセシリア様が可愛くて仕方がないから多少の我儘は許してしまうからな、団長も可愛い姪っ子の可愛い我儘だと笑って許してしまっているしな」

「なんで無理矢理付き合わされなきゃいけないんだ!俺の大切なヴィオラを失ったらどうしてくれるんだ!」

「まあ、怒るなよ、セシリア様の婚姻ももうすぐ決まるそうだ。それまでの辛抱だ、隣の国の国王と結婚すればこの国を出て行く事になるんだ。だから、二人ともアンディとセシリア様の噂を放っているんだと思う」

「そんなのそれこそ醜聞になるだろう」

「お前が堅物で絶対に王女に手を出さないのはみんな知っているし、隣の国の影も動いている」

「影が?」

「そうだ、だからお前と王女が何もないことは証明されている。王女にお前を充がっていれば他で馬鹿なことをしないからちょうどいいんだとさ」

「俺の一生はどうでもいいのか……せめてヴィオラに本当のことを伝えたい……」

「王女はプライドが高いからな。もし本当のことをヴィオラ嬢が知ったらヴィオラ嬢の命が危ないぞ」

「わかっている」

「団長はもしもの時のためにヴィオラにも影と護衛をつけてくれてはいるんだ。セシリア様は何をしでかすかわからないからな」

セシリア様は以前お気に入りの護衛騎士が自分以外の女性と付き合っていると聞いてその女性を襲わせた。その女性は見知らぬ男の子どもを身籠もり自殺した。

なのに陛下も団長も未だにセシリア様の我儘を笑って許している。



◇ ◇ ◇


セシリア様は今庭園の四阿で友人達とお茶会をしている。
俺たち近衞騎士は、周りで護衛中だ。

「ねえ、アンディ、ドレスの裾が汚れたみたいなの、見てちょうだい」

俺はすぐにセシリア様のところへ行き、
「誰か拭くものを」と、声をかけてさっさと側から離れた、
「貴方が拭くのよ!」

「わたしは騎士です。それは侍女の仕事です」

「わたしは貴方にお願いしているのよ」

これ以上セシリア様の言葉に逆らえば周りの騎士にも迷惑をかける。
俺は跪きドレスの裾を拭いた。
ほとんど汚れなどないのを分かっていて態とにしているセシリア様は俺の姿に満足して笑っていた。

周りの令嬢はキャーキャーと煩く騒いでいた。

「セシリア様愛されていらっしゃるのね」
(何がだ。愛などどこにもない)

「アンディ様にわたしも跪かれたいわ」
(誰がこんなことするか)

「アンディ、いつもありがとう」
俺を見てにっこりと微笑みお礼を言われたが、何がだ。
(勝手に思わせぶりなことを言いやがってまた誤解されて変な噂が立つだろう)

俺はムスッとしたまま立ち、頭を下げて離れた。

「アンディったら、いつもみたいに優しい顔をしてくれないのね、夜は素敵なのに」
(セシリア様はなにを言い出すんだ!)

俺はさらにイライラして言い返そうとしたが、周りの騎士に肩を掴まれ、首を振り「辞めておけ」と言われた。

(何故なんだ、コイツの所為でおれは、ヴィオラと会うことも出来ないんだ)

俺は震える拳をギュッと握り締めて耐えた。

その後もセシリア様は何かと俺に絡んできた。

























しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

婚約者に選んでしまってごめんなさい。おかげさまで百年の恋も冷めましたので、お別れしましょう。

ふまさ
恋愛
「いや、それはいいのです。貴族の結婚に、愛など必要ないですから。問題は、僕が、エリカに対してなんの魅力も感じられないことなんです」  はじめて語られる婚約者の本音に、エリカの中にあるなにかが、音をたてて崩れていく。 「……僕は、エリカとの将来のために、正直に、自分の気持ちを晒しただけです……僕だって、エリカのことを愛したい。その気持ちはあるんです。でも、エリカは僕に甘えてばかりで……女性としての魅力が、なにもなくて」  ──ああ。そんな風に思われていたのか。  エリカは胸中で、そっと呟いた。

処理中です...