【完結】浮気などしません、愛しているのは貴方だけです

たろ

文字の大きさ
上 下
1 / 21

第1話

しおりを挟む
窓から見える彼女は、背筋を伸ばし前を見て歩く姿に思わず振り返る者は少なくない。
光を浴びきらきらと輝くブロンドの長い髪、空色の瞳はいつも何を映し出しているのか……もう一度彼女の瞳に自分を見て欲しいと何度も望み欲して、俺は諦める。


◇ ◇ ◇

「ねえ、今夜もわたしの部屋に来てちょうだい」
俺は近衛騎士団第一隊副隊長のアンディ・フォーテ21歳。

第二王女の護衛騎士になって三ヶ月、度々夜部屋に呼ばれる。

第二王女のお気に入り、男娼などと揶揄されている。

「セシリア様、お願いですから誤解される発言は辞めていただきたい」

「どうして?」
王女は頬を膨らませ怒った。
「アンディは今夜もわたしの部屋で過ごすの!これは命令よ!」

セシリア様は、17歳で俺より4歳年下。
愛らしい顔をしていて王宮内での人気も高い。

「わたしは、部屋の外で朝まで立っております」
俺はどんなにセシリア様に命令されようと部屋の中には入らないようにしている。
なのにセシリア様の発言に周りは勝手に誤解する。
セシリア様の部屋と隣の部屋には中で行き来出来る扉があり隣で常に侍女が控えている。
だから、俺が部屋に入らないのは知っているにも関わらず誰も否定してくれないし、噂は何故か肯定されている。

俺が愛しているのは、空色の瞳をしたヴィオラ・プラシドただ一人だけだ。

でも彼女は俺を瞳に映さない。
もう二度とこちらを見ない。

わかっている。俺が悪いんだ。
セシリア様とのことを否定しなかったのは俺だ。
婚約者がいながら王女に懸想する近衛騎士。
度々王女に呼ばれ閨を共にしている。
こんな噂を聞いても気丈に耐えてくれていたのに俺は否定も言い訳もしなかった。
いや、させてもらえなかった。

セシリア様は俺を欲しいと言う。
もし、言うことを聞かないなら死んでやると我儘を言い陛下は娘のために俺に我慢しろと言う。

好きでもない女は抱けない。仕方ないのでセシリア様の部屋の前で一晩中護衛として立つ。

それをセシリア様の侍女達は、セシリア様の命令で俺と何かあったかのように噂を流す。

噂を否定すれば自分が恥をかかされた事になるから王宮内に居られなくなる、と泣く。

陛下も近衛騎士団団長もみんな俺がただ部屋の外で立っていることを知っている。
なのに誰も噂を否定してくれない。
一度も部屋の中には入ったことがないし、俺が外に立っている時ももちろん護衛当番数人も近くに立っている。

だから俺が王女に手を出していないことは明らかだ。
頼む、誰か俺の代わりにヴィオラに伝えて欲しい。

愛しているのはヴィオラだけなんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。

緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」  そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。    私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。  ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。  その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。 「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」  お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。 「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」  

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

処理中です...