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40話
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体が熱い……痛い、怠い、頭がズキズキする………
目を開けるとそこは知らない部屋だった。
あまり物が置いていない……ここは何処?
わたしは生きている……みたい?
反乱者達は?周りを見回したけど誰もいない。
声を出そうとするけど、小さな掠れた声しか出ない……
喉が渇いた……「み………水……」
わたしの声が聞こえたのか、近くに人が来た。
「目が覚めたのね?」
優しく声をかける女性の声。
「待っててね」
わたしを抱き起こして、コップに入れ水を口に近づけてくれた。
わたしは震える手を添えてその水を飲んだ。
「…………お、美味しかった」
喉の渇きは異常でお代わりを飲み終えて「はー」と溜息が。
そしてやっと周囲を見回すと、わたしは救護室で寝ていたようだ。
カーテンで仕切られているが周りには他にも人がいるようだった。
「あなたの傷は酷くて……助からないかもしれないと思ったのよ。でも助けてくれた人が急ぎ処置をしてくれたのが良かったみたいで、なんとか助かったの」
わたしは水を飲み終わりベッドにまた寝かされた。
そして看護師さんに話されてから気がついた。
ーーーい、痛い。肩から胸がズキズキと痛んで、体も熱い。
わたしが肩のあたりに触れていると
「あら?やっと痛いことを思い出したのかしら?」
と微笑んで「痛み止めの薬を飲みましょうね」と言って薬をくれた。
「ありがとう……ございます」
薬を飲んでまたしばらく横になって静かにしていた。
ボッーとした頭が少しずついろんなことを考えられるようになってきた。
わたしは斬られて、男達に辱めを受けた。
そのあとは?
先輩達は皆死んだのだろうか?
何故わたしは生きているのだろう?助けてくれた人には申し訳ないが、出来れば死んでしまいたかった。
男の人に犯されたこの体で生きてなどいたくない。
それに、剣で斬られたこの体は……醜い傷痕が残るだろう。
いくら見えないところに傷があるとはいえ女としてはもう結婚することも恋愛することも出来ない。
だけど、重たく怠い体はまだ身動きすら出来ないでいた。
ーーあ、また眠ってしまっていたようだ。
目が覚めると、ベッドの横にわたしの手を握る人がいた。
「……メルーさん?マーラちゃん?」
「よかったぁ、やっと目が覚めたと連絡があって駆けつけたらまた眠っているんだもの……」
「オリエ姉さん!心配したんだから!」
二人は目に涙をいっぱい溜めてわたしの手を握りしめていた。
「心配かけてごめんなさい」
二人の顔を見て何故か不思議に心があったまる。
さっきまで死にたかったはずなのに、死なないでよかったなんて考えてしまう。
「…あの、わたし、今の状況がよくわからないの」
わたしはどうやって助けられたのだろう。
あのあと、反乱者達はどうなったのかしら?
この国は大丈夫だったのかしら?
わからないことだらけだ。
メルーさんが、ここ数日の話を聞かせてくれた。
わたしは四日間も目を覚まさなかったらしい。
反乱を起こしたのは、前国王の臣下だった貴族達とその騎士。
悪政を行い滅ぼされた前国王達。その甘い汁を吸って暮らした貴族達は粛清されたのだが、それでもなんとか逃れた貴族達はまだまだいた。
甘い汁を吸えなくなり困窮した貴族達は、このまま滅んでいくのを待つくらいなら、反旗を翻して反乱を起こしたそうだ。
わたし達女騎士は、逃がそうとしてくれたのにわたし達は共に戦うことを選んだ。
そして力なく倒れていった。
その時にたまたま来ていたアルク国の人が剣術に優れていて助けてくれたそうだ。
その人はわたしを助け医術の心得もあり、治療してくれたらしい。
他の人達もその人から治療してもらいかなりの人が助けられたらしい。
反乱者達も騎士達の働きで抑え込めたらしい。
今はみんな地下牢に入れられて取り調べにあっていると聞いた。
「あ、あの……先輩達は?」
わたしの記憶に残るのは犯された先輩数人。あとは怪我をしながらも戦っている人達。
あの人達はどうなったのだろう……
「………何人かは亡くなったわ……オリエと同じように生き残った人もいるわ」
顔を歪めて話しにくそうに言ったメルーさん。
わたしはそれ以上話を聞けないでいた。
「……そうですか」
誰が亡くなって誰が生きているのか……
今はまだ人の心配をしても仕方がない。
もう少し体調が良くなればわかること。
ーーううん、本当は現実を知りたくないだけ……いつも一緒に見回りをした先輩達。一緒に昼食をとり笑い合い、楽しく過ごした時間。
一瞬にしてその大切な人達との時間を奪われた。
わたしはこれからどう生きるのだろう。
他国から来た人が助けてくれたと聞いたけど、その人にお礼を言わなければいけない……でも心からその人に感謝出来るのかしら?
わたしはもう生きていけない……犯されたことをみんな知っている。混乱の中でも周りは気づいていたはず…だってわたしも先輩達が犯されているのに助けてあげられなかった。自分の身を守るのが精一杯だった。
わたしはこのベッドから出るのが怖い。
待ち受けている現実は、人の目は……考えただけでも怖くて、わたしは両手で自分の体を抱きしめて、ベッドの中で泣き続けた。
◇ ◇ ◇
カイから連絡を受け取ったメルーとマーラは急ぎオリエの元へ向かった。
まだ殺伐とした王宮内。
あちらこちらで怒鳴り声や人の呻き声が聞こえる。
二人は救護室に行き、包帯が巻かれて青い顔をして眠り続けるオリエに会った。
「オリエ……」
二人は生きていることを確認したが包帯を巻かれた場所を見て手で口を押さえて泣いた。
でもすぐに落ち着きを取り戻して、人手の足りない救護室で怪我人の看護を手伝い始めた。
ほとんどが切り傷、打撲。
止血して薬を塗り包帯を巻く。
「このジーク国から取り寄せた傷薬がとてもよく効くのです。傷痕が綺麗に治るので使ってください」
メルーは、カイが取り寄せて家に置いてあった薬を持ってきていた。
前国王を倒す時に、やはりたくさんの血が流れた。
その時に、国外を飛び回るカイが手に入れて持っていたこの薬が傷を早く治してくれて傷痕も綺麗に治してくれた。
もちろん完全には治らないけど、時間が経てばうっすらと見える程度の傷痕になった。
それを気に入り、カイはこの国の騎士団でも常備薬として使おうとたくさん手に入れたばかりだった。
たくさんの怪我人になんとか薬をつけ終わり、一息ついた。
「メルー、この薬がもっと必要だ。俺はちょっと急ぎ薬を調達してくる。かなりたくさん仕入れていたがこの人数じゃすぐ足りなくなる。数日待っててくれ」
カイは、にっこり笑うと急ぎ去って行った。
「オリエにはたっぷりとこの薬をつけてやってくれ」
カイはオリエを助けられなかったことを悔やんでいた。
オリエをこの国に連れてきた時カイは言った。
「この子は自国で辛い思いをしてきたんだ、守られて過ごしてきたが、何も知らされず心を壊された。何も知らされないなんて地獄だよな、自分が命を狙われていることも愛されていることも、自分が必要とされていることも何も知らないんだ。それじゃただの人形を大事にしているのと変わらない。この子にも心があるんだ」
詳しくは話してもらえなかったけど、オリエはうちに来て確かに変わった。
初めはぎこちない笑顔だったけど、今は生き生きとした笑顔で、自分の意思もきちんと伝えられる明るい子になった。
元王太子妃で公爵令嬢。
儚くて守ってあげないといけないお姫様のようなオリエが、今は口を開けてみんなと笑い合い、小さなテーブルでみんなで楽しく話しながら食事をする。
狭い部屋に普段着の服。
宝石も豪華なドレスも豪華な食事もないけど、みんなの笑顔だけはあって、それだけは自慢できる。
なのに、やっと笑えるようになったオリエがこんな大怪我をした。
わたしはオリエが意識が戻ったと聞いて慌てて一度帰っていた家から急ぎ王宮へと来たのだった。
目を覚ましたオリエは、この国に来た時の、死んだような顔をしたオリエに戻っていた。
目を開けるとそこは知らない部屋だった。
あまり物が置いていない……ここは何処?
わたしは生きている……みたい?
反乱者達は?周りを見回したけど誰もいない。
声を出そうとするけど、小さな掠れた声しか出ない……
喉が渇いた……「み………水……」
わたしの声が聞こえたのか、近くに人が来た。
「目が覚めたのね?」
優しく声をかける女性の声。
「待っててね」
わたしを抱き起こして、コップに入れ水を口に近づけてくれた。
わたしは震える手を添えてその水を飲んだ。
「…………お、美味しかった」
喉の渇きは異常でお代わりを飲み終えて「はー」と溜息が。
そしてやっと周囲を見回すと、わたしは救護室で寝ていたようだ。
カーテンで仕切られているが周りには他にも人がいるようだった。
「あなたの傷は酷くて……助からないかもしれないと思ったのよ。でも助けてくれた人が急ぎ処置をしてくれたのが良かったみたいで、なんとか助かったの」
わたしは水を飲み終わりベッドにまた寝かされた。
そして看護師さんに話されてから気がついた。
ーーーい、痛い。肩から胸がズキズキと痛んで、体も熱い。
わたしが肩のあたりに触れていると
「あら?やっと痛いことを思い出したのかしら?」
と微笑んで「痛み止めの薬を飲みましょうね」と言って薬をくれた。
「ありがとう……ございます」
薬を飲んでまたしばらく横になって静かにしていた。
ボッーとした頭が少しずついろんなことを考えられるようになってきた。
わたしは斬られて、男達に辱めを受けた。
そのあとは?
先輩達は皆死んだのだろうか?
何故わたしは生きているのだろう?助けてくれた人には申し訳ないが、出来れば死んでしまいたかった。
男の人に犯されたこの体で生きてなどいたくない。
それに、剣で斬られたこの体は……醜い傷痕が残るだろう。
いくら見えないところに傷があるとはいえ女としてはもう結婚することも恋愛することも出来ない。
だけど、重たく怠い体はまだ身動きすら出来ないでいた。
ーーあ、また眠ってしまっていたようだ。
目が覚めると、ベッドの横にわたしの手を握る人がいた。
「……メルーさん?マーラちゃん?」
「よかったぁ、やっと目が覚めたと連絡があって駆けつけたらまた眠っているんだもの……」
「オリエ姉さん!心配したんだから!」
二人は目に涙をいっぱい溜めてわたしの手を握りしめていた。
「心配かけてごめんなさい」
二人の顔を見て何故か不思議に心があったまる。
さっきまで死にたかったはずなのに、死なないでよかったなんて考えてしまう。
「…あの、わたし、今の状況がよくわからないの」
わたしはどうやって助けられたのだろう。
あのあと、反乱者達はどうなったのかしら?
この国は大丈夫だったのかしら?
わからないことだらけだ。
メルーさんが、ここ数日の話を聞かせてくれた。
わたしは四日間も目を覚まさなかったらしい。
反乱を起こしたのは、前国王の臣下だった貴族達とその騎士。
悪政を行い滅ぼされた前国王達。その甘い汁を吸って暮らした貴族達は粛清されたのだが、それでもなんとか逃れた貴族達はまだまだいた。
甘い汁を吸えなくなり困窮した貴族達は、このまま滅んでいくのを待つくらいなら、反旗を翻して反乱を起こしたそうだ。
わたし達女騎士は、逃がそうとしてくれたのにわたし達は共に戦うことを選んだ。
そして力なく倒れていった。
その時にたまたま来ていたアルク国の人が剣術に優れていて助けてくれたそうだ。
その人はわたしを助け医術の心得もあり、治療してくれたらしい。
他の人達もその人から治療してもらいかなりの人が助けられたらしい。
反乱者達も騎士達の働きで抑え込めたらしい。
今はみんな地下牢に入れられて取り調べにあっていると聞いた。
「あ、あの……先輩達は?」
わたしの記憶に残るのは犯された先輩数人。あとは怪我をしながらも戦っている人達。
あの人達はどうなったのだろう……
「………何人かは亡くなったわ……オリエと同じように生き残った人もいるわ」
顔を歪めて話しにくそうに言ったメルーさん。
わたしはそれ以上話を聞けないでいた。
「……そうですか」
誰が亡くなって誰が生きているのか……
今はまだ人の心配をしても仕方がない。
もう少し体調が良くなればわかること。
ーーううん、本当は現実を知りたくないだけ……いつも一緒に見回りをした先輩達。一緒に昼食をとり笑い合い、楽しく過ごした時間。
一瞬にしてその大切な人達との時間を奪われた。
わたしはこれからどう生きるのだろう。
他国から来た人が助けてくれたと聞いたけど、その人にお礼を言わなければいけない……でも心からその人に感謝出来るのかしら?
わたしはもう生きていけない……犯されたことをみんな知っている。混乱の中でも周りは気づいていたはず…だってわたしも先輩達が犯されているのに助けてあげられなかった。自分の身を守るのが精一杯だった。
わたしはこのベッドから出るのが怖い。
待ち受けている現実は、人の目は……考えただけでも怖くて、わたしは両手で自分の体を抱きしめて、ベッドの中で泣き続けた。
◇ ◇ ◇
カイから連絡を受け取ったメルーとマーラは急ぎオリエの元へ向かった。
まだ殺伐とした王宮内。
あちらこちらで怒鳴り声や人の呻き声が聞こえる。
二人は救護室に行き、包帯が巻かれて青い顔をして眠り続けるオリエに会った。
「オリエ……」
二人は生きていることを確認したが包帯を巻かれた場所を見て手で口を押さえて泣いた。
でもすぐに落ち着きを取り戻して、人手の足りない救護室で怪我人の看護を手伝い始めた。
ほとんどが切り傷、打撲。
止血して薬を塗り包帯を巻く。
「このジーク国から取り寄せた傷薬がとてもよく効くのです。傷痕が綺麗に治るので使ってください」
メルーは、カイが取り寄せて家に置いてあった薬を持ってきていた。
前国王を倒す時に、やはりたくさんの血が流れた。
その時に、国外を飛び回るカイが手に入れて持っていたこの薬が傷を早く治してくれて傷痕も綺麗に治してくれた。
もちろん完全には治らないけど、時間が経てばうっすらと見える程度の傷痕になった。
それを気に入り、カイはこの国の騎士団でも常備薬として使おうとたくさん手に入れたばかりだった。
たくさんの怪我人になんとか薬をつけ終わり、一息ついた。
「メルー、この薬がもっと必要だ。俺はちょっと急ぎ薬を調達してくる。かなりたくさん仕入れていたがこの人数じゃすぐ足りなくなる。数日待っててくれ」
カイは、にっこり笑うと急ぎ去って行った。
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カイはオリエを助けられなかったことを悔やんでいた。
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詳しくは話してもらえなかったけど、オリエはうちに来て確かに変わった。
初めはぎこちない笑顔だったけど、今は生き生きとした笑顔で、自分の意思もきちんと伝えられる明るい子になった。
元王太子妃で公爵令嬢。
儚くて守ってあげないといけないお姫様のようなオリエが、今は口を開けてみんなと笑い合い、小さなテーブルでみんなで楽しく話しながら食事をする。
狭い部屋に普段着の服。
宝石も豪華なドレスも豪華な食事もないけど、みんなの笑顔だけはあって、それだけは自慢できる。
なのに、やっと笑えるようになったオリエがこんな大怪我をした。
わたしはオリエが意識が戻ったと聞いて慌てて一度帰っていた家から急ぎ王宮へと来たのだった。
目を覚ましたオリエは、この国に来た時の、死んだような顔をしたオリエに戻っていた。
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