【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ

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24話

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お父様の部屋へ向かった。

「オリエ、この部屋に入ってはダメだ。出て行きなさい」
部屋に入ろうとしたらお父様がいきなり怒鳴ってきた。
部屋の中をチラッとみると縄で縛られた三人がぐったりとして転がされていた。

「あ、お父様お話があります」

「今はバタバタしているので、またにしてくれ」

「お父様、その人達はわたしを暗殺するように依頼した首謀者の方達です!」

わたしの声に皆ピタッと止まった。

「は?」
「え?」
「何を言ってるんだ!」

お兄様とアレック兄様、お父様が固まった。

「わ、わたしは何もしていない」

「そうだ、突然ここに連れてこられた被害者なんだ!」

「そうです。わたしはただの執事です。暗殺など誰に依頼すると言うのです」

三人は転がって身動きが取れないのに、口だけはしっかりと動いていた。

「ここに暗殺依頼の契約書がありますけど?」

わたしは首をコテンと傾げてにっこりと微笑んでみせた。

「な、な、何で持っているんだ?」

「わたしが、暗殺者さんに暗殺依頼した人達を捕えてもらうように逆に依頼したからかな?」

人差し指を口に当てて、ふふふと笑った。

「裏切ったのか?」

「そんな……確実に殺すと請け負っていたのに」

「オリエを確実に殺す?わたしがお前を殺してやる!」
お父様が怒りに任せて剣を近くにいた騎士から奪い、斬りかかろうとした。

「おやめください、父上!」
お兄様が止めたのでほっとしたら

「殺るなら全て白状させてからにしましょう」
 
「そうだな、何故オリエの命を狙ったのか全て吐かせてからでも遅くはないな」

ーーなんだかここにも怖い人たちがいるわ

そして三人は、お父様達に縛られたまま、起こされて壁の前に座らされて尋問をされることになった。

お兄様はとても怖い顔で、首の近くに剣を近づけて言った。

「全て話せ。命は大切にした方がいいと思うぞ」

三人は真っ青な顔になり震えながら話し出した。

「義父からこれ以上バーグル公爵家に力が集中すれば我々の生活を脅かすことになると言われて、イアン殿下が未だに愛してやまないと言われているオリエ様をなんとか排除したいと考えて、消えてもらおうかと…うっ、ぐふぉ」

娘婿にあたるトムソン伯爵が話している途中なのに、アレック兄様がお腹に蹴りを入れた。

トムソン伯爵は縛られて動かせない体なのに激痛で寝転がり痛みで唸っていた。

「消えてもらう?ふざけんな!」

あのとても優しい兄様が今は鬼のように怖い。

結局みんなお腹や背中を蹴られて、座っていたはずがみんな寝転がって痛みで唸っている。

「オリエを狙ったのは、ブルーゼ公爵がいなくなって、我が公爵家がこの国で一番力が強くなった。それにオリエがイアン殿下と再婚すればうちの力がさらに強くなる。それを阻止したいお前達がオリエの命を狙ったんだな」

「………はい」

「お前達がまさかオリエの命を狙うとは……ジョセフィーヌ様の方から攻めてくると思ったのに」

「な、なんのことですか?」

「オリエはしばらく部屋を出ろ。ここからは重要な話になる、お前には聞かせられない」
お父様がわたしを気にかけて仰ってくださったのはすぐにわかった。
でも、わたしはカイさんにジョセフィーヌ様のことも聞いていた。

「ジョセフィーヌ様がイアン殿下の子供を妊娠していらっしゃるのでしょう?それをこの方達は、脅しとして使おうとしていたのでしょう?」

「知っていたのか?」

お父様が驚いた顔をしてわたしに聞いてきた。

「わたしを暗殺しようとしていた方が、今回は味方になってくださいました。前回もわたしの体を動くようにしてくださった親切な暗殺者さんなんです。彼が教えてくださいました」

わたしは大きな溜息をついた。

「お二人が元に戻り幸せに暮らすにはわたしは邪魔だったのでしょうか?お二人の邪魔などしたつもりもありませんでしたが……わたしとイアン様が再婚するなどあり得ないのに……そんな話を真に受けるなんて」

「真に受けただけで貴女を暗殺するわけがないでしょう?………ブルーゼ公爵もジーナ様も貴方のせいで処刑されたのですよ。それなのに殿下に愛されているなんて噂が流れてどんなに腹立たしいか……」

トムソン伯爵はわたしを恨みがましく睨みつけた。

ーー何か言い返そうかと思ったけど、言葉が思い当たらない。
わたしはイアン様に愛されたことなどないのに、わたしは愛されていたなどと言う人がいる。
何度も命を狙われたのは、わたしがイアン様に愛されていたからだと周りに言われても、わたしにはイアン様に愛された思い出すらない。

「あの二人が処刑されたのは娘のせいではない。悪事を働いたからだ。娘のせいにされては困る」

「……多少の悪事を見逃すこともこの国の貴族なら仕方がないこと、だから貴方がこの国で一番力を持たれると困るのです」

二人に雇われている執事が突然話し出した。

ーー悪事を見逃す?何をこの人は言っているの?

「そ、そうだ。ブルーゼ公爵は我々と同じ考えだった。貴族だってみんな金があるわけではない、貴族として生きていくためには多少の悪事は必要で見逃しても良いもの……それを良しとしない貴方達の考えが我々を苦しめるのです」

「……苦しめているのは貴方達でしょう?自分達が贅沢できれば領民が死のうと餓死しのうとどうでもいい。そんな考えを何故認めなければならない?」

「平民の命など貴族の命に比べれば軽いものでしょう?そんな命と我々貴族の命を比べるなど…それこそ可笑しいでしょ」
そう言うと三人はヘラヘラと笑っていた。

わたしは黙って聞いていたけど頭にきて拳をギュッと握りしめていた。

「平民は我々が贅沢に暮らすための道具です。道具はたくさんいた方がいい、そして使えなくなったら捨てればいいんですよ、どうせまた新しい子供が生まれて減ることはないのですから」

わたしは気がつくと、三人を殴っていた。

生まれて初めて人に手を挙げた。

「あなた達は、人として最低です!みんな生きているのですよ!道具?捨てる?ふざけないで下さい!」

そして、生まれて初めて大きな声で怒鳴っていた。

わたしの大事な市井で頑張っている子供達の笑顔を思い出すと、この人たちの言っていることがどうしても許せなかった。

目に涙が溢れていると、お兄様がわたしを抱きしめてくれた。
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