17 / 53
16話
しおりを挟む
イアン様にジーナ様の話を聞いた。
ジーナ様はわたしの命を助けてくれていた。
父親の暗殺計画を潰していたらしい。
でも、わたし自身は命を狙われてはいた。ジーナ様はわたしが死なないように暗殺計画を立てて失敗したようにみせかけている。そしてその計画を阻止し守ってくれたのはイアン様の影だった。
本気で殺す気はないけど、わたしを殺そうとした。
それを阻止していたイアン様の影。
わたしは??よくわからないけど、とりあえずみんなが護ってくれたんだと納得することにした。
ジーナ様は処刑されず命だけは助かったと聞いてホッとした。でもこれからの人生はとても大変かもしれない。
そう思うと胸が痛くなる。
そして、わたしとイアン様の離縁が成立していたこともお兄様が教えてくれた。
「オリエが眠り続けている間に、イアン殿下とオリエの離縁は成立している」
「………イアン様、お役に立てないままお別れすることになりすみませんでした。お世話になりました」
イアン様が一度も会いに来なかった理由はこれだったのだ。でも自分が望んだこと。
まだイアン様の顔を見るのは辛いけど、いつかはいい思い出になるだろう。
「ジョセフィーヌ様とお幸せに過ごされてくださいね」
わたしは笑顔で言えただろうか?
まだ目覚めたばかりで思うように体が動かないなか、まともに笑顔が作れているだろうか?
イアン様は「……あ、ああ」と、低くて、かすかに震える声で返事をした。
わたしはこれ以上話すことができなくて、
「お兄様、わたし……まだ本調子ではないみたい、休んでもいいかな」
と、イアン様を見るのが辛くて、お兄様に話しかけた。
「オリエは目覚めたばかりだからまだキツいだろう。ジーナ様のことはここだけの話。俺たちは全て忘れるオリエもゆっくりと眠るといい」
「………イアン様今までありがとうございました」
わたしは挨拶をしてそのまま毛布に潜り込んでしまった。
イアン様が今どんな顔をしているのか全く気づいていなかった。
◇ ◇ ◇
オリエに「ジョセフィーヌ様とお幸せに過ごされてくださいね」
と言われた時頭の中が真っ白になった。
オリエは眠り続けていたので、俺がジョセフィーヌとも別れたことを知らないのだ。
まだ本当のことを伝えていない。
そう思ったけど今更言い訳は必要ない気もする。
オリエが真実を望んでいるのだろうか?
伝えずにいるべきなのか?
いや、でもオリエに謝罪をし、本当のことを伝えないとオリエは自分が必要とされていないと思い続けて生きて行くことになる。
でも目覚めたばかりのオリエにこれ以上長い話は出来なかった。
「イアン殿下、ジーナ様のことは全て聞かなかったことにいたします。そしてオリエの命を助けようとしていただいたこと感謝いたします」
公爵に頭を下げられた。
「………公爵、オリエともう一度だけ話す機会を作ってもらいたい」
「オリエは目覚めたばかりです。あの子の状態を見てから話しても大丈夫だと確認できればご連絡いたします」
公爵のこの物言いは、了承したようで実はいつになるかはわからないぞと言っている。
だが離縁しているのに無理やり押しかけた俺は何もこれ以上言えない。
「……頼んだ。では……帰るよ」
公爵家をあとにした。
「ブライス、オリエが目覚めただけでもういいんだよな」
仕事を放って出て行ったため、今日の仕事は終わっていなかった。
俺は執務室で夜遅くまで仕事をした。
ブライスは俺に付き合い残業をしてくれた。
「殿下、オリエ様に全て話さないといけないのでは?」
「俺もそう思ってはいる。言い訳をするのではなくオリエが本当はお飾りではなかったこと、君を傷つけてすまなかったと謝罪をするべきだと……
だが公爵は俺にオリエと会わせるつもりはなさそうだ」
「まぁ、娘を傷つけられた元夫と会わせたいとは思わないですよね」
「そうだな、今更愛していたなんて伝えてもオリエは戸惑うだけだろう。だから……もし会うことが出来たら、謝罪と経緯だけ話して俺の気持ちは伝えないでおこうと思う。オリエの命を助けるためでジョセフィーヌとは何もなかった。ただのフリだったと」
「……殿下は馬鹿ですよ、最初から素直に愛していると言っていればよかったのに……あの頃は………年の差が、若過ぎた殿下を拗らせてしまいましたね」
ブライスは俺を溜息を吐きながら見た。
◇ ◇ ◇
イアン様が部屋から出て行ったあと、わたしはまたベッドの上で体を起こして窓の外を眺めていた。
お医者様が診察に来ると
「オリエ様、お体は動きますか?」
と聞かれて動かしてみた。
「……あ………思うように動かない」
わたしは手や首は動かせるのにまだ自分でいつものように体が動かないことに気がついた。
「ずっと眠り続けていたので筋力が弱っていると思われます。しばらくは体を動かす練習から始めて徐々に歩く練習も始めましょう」
「……わかったわ、少しずつ頑張って行くわ」
「オリエ様、目覚めたことは奇跡です、無理せずゆっくりと頑張りましょう」
お医者様の言葉を聞いて、わたしは、こくりと頷いた。
新しい人生が今始まった気がした。
イアン様のことを考えるとまだ心の整理はできないけど、でももう過去に囚われないで前に進もう。
ジーナ様はわたしの命を助けてくれていた。
父親の暗殺計画を潰していたらしい。
でも、わたし自身は命を狙われてはいた。ジーナ様はわたしが死なないように暗殺計画を立てて失敗したようにみせかけている。そしてその計画を阻止し守ってくれたのはイアン様の影だった。
本気で殺す気はないけど、わたしを殺そうとした。
それを阻止していたイアン様の影。
わたしは??よくわからないけど、とりあえずみんなが護ってくれたんだと納得することにした。
ジーナ様は処刑されず命だけは助かったと聞いてホッとした。でもこれからの人生はとても大変かもしれない。
そう思うと胸が痛くなる。
そして、わたしとイアン様の離縁が成立していたこともお兄様が教えてくれた。
「オリエが眠り続けている間に、イアン殿下とオリエの離縁は成立している」
「………イアン様、お役に立てないままお別れすることになりすみませんでした。お世話になりました」
イアン様が一度も会いに来なかった理由はこれだったのだ。でも自分が望んだこと。
まだイアン様の顔を見るのは辛いけど、いつかはいい思い出になるだろう。
「ジョセフィーヌ様とお幸せに過ごされてくださいね」
わたしは笑顔で言えただろうか?
まだ目覚めたばかりで思うように体が動かないなか、まともに笑顔が作れているだろうか?
イアン様は「……あ、ああ」と、低くて、かすかに震える声で返事をした。
わたしはこれ以上話すことができなくて、
「お兄様、わたし……まだ本調子ではないみたい、休んでもいいかな」
と、イアン様を見るのが辛くて、お兄様に話しかけた。
「オリエは目覚めたばかりだからまだキツいだろう。ジーナ様のことはここだけの話。俺たちは全て忘れるオリエもゆっくりと眠るといい」
「………イアン様今までありがとうございました」
わたしは挨拶をしてそのまま毛布に潜り込んでしまった。
イアン様が今どんな顔をしているのか全く気づいていなかった。
◇ ◇ ◇
オリエに「ジョセフィーヌ様とお幸せに過ごされてくださいね」
と言われた時頭の中が真っ白になった。
オリエは眠り続けていたので、俺がジョセフィーヌとも別れたことを知らないのだ。
まだ本当のことを伝えていない。
そう思ったけど今更言い訳は必要ない気もする。
オリエが真実を望んでいるのだろうか?
伝えずにいるべきなのか?
いや、でもオリエに謝罪をし、本当のことを伝えないとオリエは自分が必要とされていないと思い続けて生きて行くことになる。
でも目覚めたばかりのオリエにこれ以上長い話は出来なかった。
「イアン殿下、ジーナ様のことは全て聞かなかったことにいたします。そしてオリエの命を助けようとしていただいたこと感謝いたします」
公爵に頭を下げられた。
「………公爵、オリエともう一度だけ話す機会を作ってもらいたい」
「オリエは目覚めたばかりです。あの子の状態を見てから話しても大丈夫だと確認できればご連絡いたします」
公爵のこの物言いは、了承したようで実はいつになるかはわからないぞと言っている。
だが離縁しているのに無理やり押しかけた俺は何もこれ以上言えない。
「……頼んだ。では……帰るよ」
公爵家をあとにした。
「ブライス、オリエが目覚めただけでもういいんだよな」
仕事を放って出て行ったため、今日の仕事は終わっていなかった。
俺は執務室で夜遅くまで仕事をした。
ブライスは俺に付き合い残業をしてくれた。
「殿下、オリエ様に全て話さないといけないのでは?」
「俺もそう思ってはいる。言い訳をするのではなくオリエが本当はお飾りではなかったこと、君を傷つけてすまなかったと謝罪をするべきだと……
だが公爵は俺にオリエと会わせるつもりはなさそうだ」
「まぁ、娘を傷つけられた元夫と会わせたいとは思わないですよね」
「そうだな、今更愛していたなんて伝えてもオリエは戸惑うだけだろう。だから……もし会うことが出来たら、謝罪と経緯だけ話して俺の気持ちは伝えないでおこうと思う。オリエの命を助けるためでジョセフィーヌとは何もなかった。ただのフリだったと」
「……殿下は馬鹿ですよ、最初から素直に愛していると言っていればよかったのに……あの頃は………年の差が、若過ぎた殿下を拗らせてしまいましたね」
ブライスは俺を溜息を吐きながら見た。
◇ ◇ ◇
イアン様が部屋から出て行ったあと、わたしはまたベッドの上で体を起こして窓の外を眺めていた。
お医者様が診察に来ると
「オリエ様、お体は動きますか?」
と聞かれて動かしてみた。
「……あ………思うように動かない」
わたしは手や首は動かせるのにまだ自分でいつものように体が動かないことに気がついた。
「ずっと眠り続けていたので筋力が弱っていると思われます。しばらくは体を動かす練習から始めて徐々に歩く練習も始めましょう」
「……わかったわ、少しずつ頑張って行くわ」
「オリエ様、目覚めたことは奇跡です、無理せずゆっくりと頑張りましょう」
お医者様の言葉を聞いて、わたしは、こくりと頷いた。
新しい人生が今始まった気がした。
イアン様のことを考えるとまだ心の整理はできないけど、でももう過去に囚われないで前に進もう。
応援ありがとうございます!
41
お気に入りに追加
4,172
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる