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15話

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ーーうん、確かにもう死ぬんだと覚悟してたわ

でもどうしてイアン様がわかったのかしら?

そんなことをボッーと考えながらみんなを虚な目で見ていたら

「オリエを殺す計画を立てていることがわかったんだ。だから急いで屋敷にやって来た」

ーーふと暗殺者の男と目が合った。

ニヤッと笑い頭を掻いたと思ったら、取り押さえた騎士の肩に手をやると関節を外した。
そして騎士を蹴り上げるとあっという間に開いていた窓から逃げ出した。

ーーあっ………

みんな男があまりにも素早くて呆気に取られてみていた。

あんなに速い動きができる人が捕まるものかしら?殺すのを失敗するはずがない。

わたしは少しずつ体が動かせるようになって来た。
そして手のところに紙があることに気がついた。

「に…い様……起こして………………」

近くにいたイアン様にお願いをせずに兄様にお願いをして体を起こしてもらった。

わたしは震える手でその紙を広げた。

さっきの男からだと思われる手紙だった。

ジーナ様からわたしを暗殺するように依頼が何度もあったこと。
ただし必ず失敗するようにとの依頼だった。
今回はジーナ様が処刑されるので、最後の依頼だと書かれていた。


あと「俺の親切で君の体が動くようにしておいた」と書かれていた。

確かに……彼はわたしの体によくわからない針をいくつも刺した。

あれはなんだったのだろう。あれがわたしの体を動かせるようにしてくれたのか……

「お…兄…様、兄様、イア…ン様この…手紙を……」
わたしは三人に手紙を渡した。

みんなが紙を読んでいる間わたしの体は少しずつ軽くなって来るのがわかった。

「お…兄様、ジーナ様…は処刑…される…のですか?」

「オリエには何も知らせていなかった……」
お兄様は眉を顰めた。

◇ ◇ ◇

「人払いを」

俺はライルとアレック、そして公爵だけを残して全員に出てもらった。

「この手紙を読む限り、もうあの暗殺者はここに来ることはないだろう」
俺はジーナが本気でオリエを殺すつもりがなかったのだと今確信を持てた。

ジーナは実際オリエを暗殺しようとしたが、絶対に成功させることのできる「影」がここまで失敗したことを不思議に思っていた。

もちろんこちらもオリエに「影」を付けて護ってはいたが。
今回の契約書もあまりにもわかりやすい場所に入っていた。
罠かもしれない。

それに最後は本気かもしれないと思い俺は慌てた。

そしてあの男を捕える時にあの男は俺の耳元で囁いた。
「遅かったな、だが、ありがとう」と。

ありがとうの意味は?


俺はジーナを処刑するつもりはなかった。

いや、対外的には今日処刑されたことになっている。

ジーナは処刑されたとして、死体を袋に包み、今日の夜墓場に埋められる。

しかし実際埋められるのは囚人の遺体だ。
ジーナは、国外に追放されることになっている。

身請けをしてくれるのはジーナの叔母である他国に嫁いだ侯爵家だ。

この話を持って行くのにかなりの時間がかかった。

ジーナの父親はかなり悪どいことをしていたので助からない。しかしジーナはオリエの暗殺計画を立てていても不審なところが多かった。

父親が実際は計画して、ジーナは別の暗殺者に依頼してその父親の計画を横取りさせて阻止していたのだ。

だから暗殺をわざとに失敗させていた。

調べれば調べるほどジーナの動きはオリエを殺そうとしているようには思えなかった。

でも確定も出来なかった。
だから、辺境伯に嫁がせた。
辺境伯のところなら父親である公爵と接触できない。
もちろんアレは変態で通っている。
なのでジーナは嫁がせたが、まだ婚姻届が受理されていないと護衛を置き、ジーナは別邸に住まわせて手を出させないようにしておいた。

そのあとはジーナは、辺境伯と共に捕縛された。

ジーナ自身、「影」に暗殺を依頼している証拠もあり、本人も自白したことから処刑が言い渡された。

だが、どう調べてもジーナは本気で殺そうとしてないのがわかる。
そしてその先に、もう一つの暗殺計画がわかった。
それがジーナの父親の依頼したオリエの暗殺計画だった。

二つの暗殺計画……表に出ている暗殺計画の犯人はジーナ。

ジーナが依頼したのは確かだがどうみても父親を庇っているようにしかみえない。さらにオリエの命を助けているように感じる。

ジーナに何度か取り調べをしたが、本人は「わたしが依頼をしたの、殺してやりたかった」
と自白する。

そんな時、公爵に自白剤を使う。
するとオリエの暗殺計画が何故か毎回失敗していることを自白した。

その時、ジーナが父親を庇い、オリエを気付かないように助けていたことがわかった。

だが助けるために暗殺計画を立てたことも確かだ。
ジーナの処刑を止めることは出来なかった。

だからジーナの叔母に事情を説明して、助けを求めた。ジーナにこの叔母は幼い頃から可愛がって貰い母親のような人だと聞いていたから助ける協力をしてくれるかもしれないと思った。

今日、ジーナは処刑され、ジーナという公爵令嬢は死んだ。
そして、これからは他国で全く違う人間になり生きて行くことになる。
本人はそれを受け入れるのか、受け入れられないのか……俺にはわからない。
だがオリエの命を守ってくれたジーナに俺が出来るのはこれくらいだ。

今回のオリエの暗殺依頼も父親がしていたことに気がついて、ジーナが邪魔するためにこの暗殺者に依頼していたようだ。

庭にはオリエを殺そうとした暗殺者の遺体が転がっていた。
オリエを殺そうとした暗殺者は、オリエに何かを施して、オリエを目覚めさせてくれた。

俺は、ジーナと学生の時に仲良くしていた。彼女の気持ちも知らないでお互い気楽な付き合いで楽しければいいと思っていた。

ジーナの気持ちなど知ろうともしなかった。
そして、オリエに対しても、拗らせて本当のことを伝えず、オリエを守りさえすれば後で言い訳すれば大丈夫だと思い込もうとしていた。

本当はもうダメなこともわかっていたのに……

俺はジーナのことを全てここだけの話として伝えた。




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