【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ

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5話

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実家に帰って来てしばらくは何も考えないで騎士達と手合わせをしてもらい過ごした。

王宮では一応大人しく過ごしてきたが、本当は走り回って剣を振り回すのが大好き。

お兄様が呆れて「怪我だけはするなよ」と言いながらも、わたしの王宮での辛い立場を知っているからか、駄目だとは言わないでくれている。

「オリエ様、皆、貴女が鍛錬に参加すると張り切るので士気が上がって効率がいいですね」
そう言ってくれるのはわたしが幼い頃から、剣を教えてくれたお兄様と同じ副団長の35歳オーヴェン・クラーク 子爵当主。
わたしのお父様的存在。ううん、お父様よりも慕っているかも。

「オーヴェン様、こんな小娘が参加しても色気も可愛さもないわ。みんなからしたらハナタレだもの」
わたしがクスクス笑いながら言うと

「まあわたしからすればオリエ様はハナタレですが若い騎士からすれば憧れの人ですよ」

と笑いながら答えた。

オーヴェン様の剣はとても厳しく正確に相手を攻めるこむ。
少しでも気を緩めると練習とはいえ怪我をしかねない。その緊張感がとても気持ちがいい。

こちらに戻ってきてからはギルも学校から帰って来ると一緒に参加するようになった。
さすがブルダの息子だけあって才能に恵まれている。

そしてブルダのとても優しい?英才教育で、彼の才能はしっかり開花しているみたい。
わたしでも負けてしまうこともある。

少し悔しいのだけど。

実家に戻ってきてからは殆どドレスを着ることはなくなった。
騎士服か簡単に着れるワンピースが増えた。

そんなわたしの姿を見ても、お父様は何も話しかけてはこない。
わたしもなんとなく避けてしまい、お互い話さずに過ごしている。


ーーーーー

「オリエ、久しぶりだな」

実家に戻って数週間が経った頃、懐かしい人が騎士団に帰ってきた。

わたしの従兄弟でこの騎士団に所属しているアレック・バーグル19歳。
お父様の弟の息子で、今はバーグル領の騎士団に所属している。
こちらには年に数回用事がある時に帰ってきているらしい。
わたしは王太子妃教育が忙しくて、ここ数年会っていなかった。

「アレック兄様!懐かしいわ、すぐに手合わせ致しましょう」

「おい、帰ってきて早々それはないだろう?」

「だって久しぶりなんですもの、兄様と手合わせしたいわ」

「ずっと王太子妃なんてしてたから体が鈍ってるだろう?そんな奴と手合わせしたら怪我させるだけだろ?」

「最近は毎日みんなの中に入れてもらって鍛錬をしているから少しは相手になると思うの、ね、いいでしょう?」

兄様はオーヴェン様をチラッと見てお伺いを立てているみたい。

「はあー、仕方ないな、怪我しても知らないからな!」

「うん、ありがとう!」

兄様の剣はオーヴェンやお兄様とは全然違う。
荒々しくて激しい。
なのに兄様は全く呼吸が乱れていない。

わたしは兄様の剣先をなんとかとらえるのが精一杯で防御しかできない。
責めることもできずに簡単に負けてしまった。


「兄様!いつまでいます?わたし兄様が帰るまでにもう少し腕を上げますのでもう一度リベンジさせてください」

「ほんっと、弱いくせに負けず嫌いは変わらないな」
そう言うとわたしの頭に手を置いて髪の毛をくしゃっとして笑った。

「もうせっかく髪を、マチルダが綺麗にしてくれたのに!」

「ブルダも帰ってるのか?」

「もちろんよ、マチルダとブルダは連れて帰ってきたわ」

「俺も後でブルダと手合わせしよう!」

「ブルダは弱い人とはしないわ!」
負けたわたしはついムキになって兄様に意地悪を言った。

「そうか、ブルダはオリエとはしないのか、可哀想に」

「違う!兄様としないと言ったの!」

「へえ、そっかあ。
俺がブルダに負けていたのは俺が15歳までだ!それからは勝つことも増えてきたんだ!」

「え?そうなの?」

「はい、残念ながら本当です。アレック様はとても才能のあるお方だと思います」

「いいなー、わたしも男に生まれて思いっきり剣を振りたかったわ」


「そんなことしたら殿下も俺もこの恋を諦めなきゃいけなくなるからダメだろ」
アレックが聞こえないようにボソッと言ったけど、わたしの耳には届かなかった。


◇ ◇ ◇

オリエが実家に帰ってから数週間が経ってしまった。

「迎えに行きたい」
俺がボソッと呟くと

「オリエ様は今ご実家で充実した日々を送っておりますのでどうぞジョセフィーヌ様と仲睦まじくお過ごしください」

「お前まで言うのか、側近のくせに」

俺の側近であるブライス・ベナートル、伯爵家嫡男で幼い頃からの幼馴染でもある。

「ジョセフィーヌ様に愛しているなど言ってイチャイチャしながら過ごす姿を皆見ております。今更演技だと言われてもそちらの言葉を疑いたくなります」

「……そんな風に見えるか?」

「はい、側妃に夢中になる王太子に見えます」

「嬉しくはないが仕方ない。それがこちらの思惑なんだからな」

「ブルーゼ公爵の動きは?」

「オリエ様が実家に戻られたと聞いてご機嫌がいいみたいですね」

「ふうん、では一度呼び出してみるか」

「どうして?」

「向こうも俺がオリエに対してどう考えているか知りたいだろう?」

「ジーナ様もついて来られるのでは?」

「アレは鬱陶しいが、一緒のほうが罠もかけやすいかもしれないな」

「その時はジョセフィーヌも連れて行くとしよう」

「ジョセフィーヌ様の命が狙われるのでは?」

「ジーナは俺を愛しているわけではない、愛しているのは王妃にしてくれる俺だ。俺の正妃にならなければ王妃になれないから俺に固執してるんだ。ジョセフィーヌは絶対に側室のままだ」

「どうしてそういいきれるのですか?」

「父上である陛下が、ジョセフィーヌの父親と側室ならと、俺と結婚させたんだ。ジョセフィーヌは他国だろう?王妃になる条件であるブロンドの髪の色じゃないんだ」

「そう言えば……王妃は皆ブロンドですね……側妃様は確かに違う髪の色……」

「だからオリエは3歳で俺の婚約者になったんだ。あのブロンドはこの国でもなかなか少ない輝くほど綺麗な髪だ」

「ジーナ様もブロンドではあるけど、まぁ、普通ですもんね」

「ジーナのプライドが許さないんだろうな、同じ公爵家の娘として。オリエがいなければ自分が選ばれたはずだと考えていると思うんだ」
















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