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別ルート もう一つの話。クロード編。④
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そう、わたしは笑顔で二人を見送っていたはずなのに泣いていたのだ。
自分では全く気が付いていなかった。
わたしはノアと、クロード殿下から離れようと彼に背を向けた。
「………エリーゼ」
後ろから小さな声が聞こえてきた。
わたしは泣いているところを見せたくなくて
「ノア…行きましょう」
と、急かした。
するとわたしの腕をギュウっと掴まれた。
「エリーゼ、どうして泣いているんだ?」
クロード殿下の目がわたしを捉えて離さない。
「………放っておいてください」
「泣いているじゃないか?何かあったんだろう?心配くらいしては駄目なのか?」
(貴方が他の女性といる姿を見て泣いていました……と言えばいいの?わたしをこれ以上惨めで嫌な女にしないで!)
「………大丈夫です」
わたしの冷たい言葉に殿下は辛そうな顔をして手を離した。
「………すまない、無理矢理引き留めた」
クロード殿下はエスコートしていた女性に声をかけると一人でどこかへ行ってしまった。
残された女性はわたしを睨みつけてその場から去っていった。
(婚約者を放っていいの?)
わたしは控え室の一室を借りて、付き添いで来てくれていたミリアと二人でお茶を飲んでいた。
「エリーゼ様、いいのですか?そんな苦しそうな顔をして……一度くらい素直になられては如何ですか?」
「素直に?」
「クロード殿下が気になるのでしょう?せっかく声をかけてくれたのに突っぱねたと聞きました。好きなのでしょう?今なら間に合います」
「婚約者がいるのに?間に合う?」
わたしは可笑しくて笑ってしまった。
今更だ。
どうしてわたしが傷ついた顔をしているの?
自分で自分に対して腹が立った。
甘えてる。
何があってもずっとわたしを好きでいてくれるなんて思い上がりもいいところ。
傷つくなんておかしい。
わたしが悪いの……
「グスッ……うっ……ぁ……ううっ………」
こんなに泣いたのはいつぶりだろう。
前回の時は心を閉じ込めて凍らせて何も感じないようにすることで自分を守ってきた。
でも今回はみんなが優しすぎて大切にしてくれて、あったかくて、心が弱くなってしまった。
「……ミ…リア……わたし……クロード殿下を許せなかった……ぅっ……でもね、どんなに嫌っても、忘れられないの……どうしたらいい?………どうしたら彼を忘れられるの?」
「………………それは…本当?エリーゼ?」
「…えっ?」
わたしは聞こえてきた方を振り向くと、扉の前にクロード殿下が立っていた。
「……ど、どうし…て、ここに……」
「君が心配で少しだけでもと思い顔を見にきてしまったんだ」
わたしは頭がパニックになってしまった。
(え?ええー?いやだ!やめて、無理、どうしたらいいの?)
わたしはスクっと立つと、彼とは違う方に向かって扉を開けてその中に入って行った。
そこは……トイレだった。
わたしはトイレに屈んでそのまま頭を抱えて蹲ってしまった。
(どうしよう……)
こんな場所に隠れてしまって出るに出れないし、恥ずかしいし……
「エリーゼ様、早くそこから出てください!迷惑です!ドレスが汚れたらどうするのですか?」
(確かに……綺麗な場所ではないわ……)
わたしはおずおずと扉を開けて、ミリアに謝った。
「ごめんなさい」
「謝るのはわたしにではありません、心配をさせてしまったクロード殿下にでしょう?」
「そうね……殿下すみませんでした、ご心配をおかけ致しました」
「エリーゼ、僕はほんの少しでも期待をしてもいいのだろうか?」
「む、無理です。殿下にはもう婚約者がいらっしゃるでしょう?」
「婚約者?僕にはまだいない。確かに勧められはしたけど断っているよ、だって君しか愛せない。だから僕は一生独身でいるつもりなんだ」
「え?でも今日ご一緒にいらした方は……」
「彼女は南の領地の隣の領地に住んでいる伯爵令嬢だよ、今年社交界デビューでエスコートの相手がいなくて困っていたから父上に頼まれたんだ」
「ほらあ、エリーゼ様良かったですね。ずっと落ち込んで悩んでいましたもの」
「ミリア、やめてちょうだい」
わたしは顔が真っ赤になって俯くしかなかった。
恥ずかしずぎる。
「エリーゼ、ごめん。君が気にしていたなら断ればよかった、もう君は僕とは関わりたくないと思っていたんだ。だから気にもしないだろうと思っていた」
「気にしたくなんかなかったわ!なのに……何故か貴方が他の女性といるだけで涙が出ていたの。泣くつもりなんてなかったの」
「エリーゼ、僕はずっと君だけだ。今日もエスコートはしたけどダンスは誰とも踊るつもりはなかった。僕はずっと君だけなんだ」
「…………ぅっ……ほんと?」
わたしは、もう、意地なんて捨てることにした。
「クロード殿下、わたしは……貴方をお慕いしております。遅すぎてごめんなさい、意地を張っていてごめんなさい、嫌いと言い続けて嫌な態度ばかり取ってごめんなさい」
わたしは告白なのに、懺悔になってしまった。
「謝らないで。
エリーゼ、僕の方が君がに酷いことしかしていない。今回はずっと君に対して誠実であることだけしか僕には出来なかった。
僕は君を愛している」
わたしは真っ赤がさらに真っ赤になって、下を向いているしかなかった。
ミリアの生温かい目がどうも居た堪れなかった。
自分では全く気が付いていなかった。
わたしはノアと、クロード殿下から離れようと彼に背を向けた。
「………エリーゼ」
後ろから小さな声が聞こえてきた。
わたしは泣いているところを見せたくなくて
「ノア…行きましょう」
と、急かした。
するとわたしの腕をギュウっと掴まれた。
「エリーゼ、どうして泣いているんだ?」
クロード殿下の目がわたしを捉えて離さない。
「………放っておいてください」
「泣いているじゃないか?何かあったんだろう?心配くらいしては駄目なのか?」
(貴方が他の女性といる姿を見て泣いていました……と言えばいいの?わたしをこれ以上惨めで嫌な女にしないで!)
「………大丈夫です」
わたしの冷たい言葉に殿下は辛そうな顔をして手を離した。
「………すまない、無理矢理引き留めた」
クロード殿下はエスコートしていた女性に声をかけると一人でどこかへ行ってしまった。
残された女性はわたしを睨みつけてその場から去っていった。
(婚約者を放っていいの?)
わたしは控え室の一室を借りて、付き添いで来てくれていたミリアと二人でお茶を飲んでいた。
「エリーゼ様、いいのですか?そんな苦しそうな顔をして……一度くらい素直になられては如何ですか?」
「素直に?」
「クロード殿下が気になるのでしょう?せっかく声をかけてくれたのに突っぱねたと聞きました。好きなのでしょう?今なら間に合います」
「婚約者がいるのに?間に合う?」
わたしは可笑しくて笑ってしまった。
今更だ。
どうしてわたしが傷ついた顔をしているの?
自分で自分に対して腹が立った。
甘えてる。
何があってもずっとわたしを好きでいてくれるなんて思い上がりもいいところ。
傷つくなんておかしい。
わたしが悪いの……
「グスッ……うっ……ぁ……ううっ………」
こんなに泣いたのはいつぶりだろう。
前回の時は心を閉じ込めて凍らせて何も感じないようにすることで自分を守ってきた。
でも今回はみんなが優しすぎて大切にしてくれて、あったかくて、心が弱くなってしまった。
「……ミ…リア……わたし……クロード殿下を許せなかった……ぅっ……でもね、どんなに嫌っても、忘れられないの……どうしたらいい?………どうしたら彼を忘れられるの?」
「………………それは…本当?エリーゼ?」
「…えっ?」
わたしは聞こえてきた方を振り向くと、扉の前にクロード殿下が立っていた。
「……ど、どうし…て、ここに……」
「君が心配で少しだけでもと思い顔を見にきてしまったんだ」
わたしは頭がパニックになってしまった。
(え?ええー?いやだ!やめて、無理、どうしたらいいの?)
わたしはスクっと立つと、彼とは違う方に向かって扉を開けてその中に入って行った。
そこは……トイレだった。
わたしはトイレに屈んでそのまま頭を抱えて蹲ってしまった。
(どうしよう……)
こんな場所に隠れてしまって出るに出れないし、恥ずかしいし……
「エリーゼ様、早くそこから出てください!迷惑です!ドレスが汚れたらどうするのですか?」
(確かに……綺麗な場所ではないわ……)
わたしはおずおずと扉を開けて、ミリアに謝った。
「ごめんなさい」
「謝るのはわたしにではありません、心配をさせてしまったクロード殿下にでしょう?」
「そうね……殿下すみませんでした、ご心配をおかけ致しました」
「エリーゼ、僕はほんの少しでも期待をしてもいいのだろうか?」
「む、無理です。殿下にはもう婚約者がいらっしゃるでしょう?」
「婚約者?僕にはまだいない。確かに勧められはしたけど断っているよ、だって君しか愛せない。だから僕は一生独身でいるつもりなんだ」
「え?でも今日ご一緒にいらした方は……」
「彼女は南の領地の隣の領地に住んでいる伯爵令嬢だよ、今年社交界デビューでエスコートの相手がいなくて困っていたから父上に頼まれたんだ」
「ほらあ、エリーゼ様良かったですね。ずっと落ち込んで悩んでいましたもの」
「ミリア、やめてちょうだい」
わたしは顔が真っ赤になって俯くしかなかった。
恥ずかしずぎる。
「エリーゼ、ごめん。君が気にしていたなら断ればよかった、もう君は僕とは関わりたくないと思っていたんだ。だから気にもしないだろうと思っていた」
「気にしたくなんかなかったわ!なのに……何故か貴方が他の女性といるだけで涙が出ていたの。泣くつもりなんてなかったの」
「エリーゼ、僕はずっと君だけだ。今日もエスコートはしたけどダンスは誰とも踊るつもりはなかった。僕はずっと君だけなんだ」
「…………ぅっ……ほんと?」
わたしは、もう、意地なんて捨てることにした。
「クロード殿下、わたしは……貴方をお慕いしております。遅すぎてごめんなさい、意地を張っていてごめんなさい、嫌いと言い続けて嫌な態度ばかり取ってごめんなさい」
わたしは告白なのに、懺悔になってしまった。
「謝らないで。
エリーゼ、僕の方が君がに酷いことしかしていない。今回はずっと君に対して誠実であることだけしか僕には出来なかった。
僕は君を愛している」
わたしは真っ赤がさらに真っ赤になって、下を向いているしかなかった。
ミリアの生温かい目がどうも居た堪れなかった。
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