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番外編 エリーゼの結婚前
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ブラッドに告白して三日経った。
「エリーゼ様、貴女をずっと愛しています」
ブラッドは確かにわたしに…キス…をしてそう言ってくれた。
そう、わたしのファーストキスだった。
なのに……
え?
でも何も変わっていない。
わたしは学園を卒業して、今はお義姉様と昼間は刺繍をしたりお茶の時間を過ごしている。
ブラッドは、いつものようにお父様の執事として仕事をしたり、わたしが外出するときは護衛としてそばにいてくれる……だけ。
え?
これで終わり?
一緒にデートは?
え?
二人でゆっくり過ごす時間は?
え?
主人と使用人という立場は変わらないの?
「ねえ、ブラッド。わたし、ブラッドのこと好きだと言ったわ、なのにどうしていつもと同じなの?せめてわたしの横を歩いて欲しいわ」
外出中もわたしの後ろに控えているブラッド。
せめて隣に立っていて欲しい。
「エリーゼ様、わたしはいち使用人です」
「……そう、わかったわ。だったらもういいわ、離れて護衛してちょうだい」
別に甘い時間を過ごしたいわけでも(ほんとうはしたいけど)、手を繋ぎたいわけでも(ちょっと期待してたけど)ないのに!
わたしは屋敷に帰ると、大量に買った物をブラッドに全て運ばせて、「もういいわ、出ていって!」と、追い出した。
部屋にたくさん積まれた物を見て溜息が出た。
「ほんとバカだわ。必要のない物をこんなに買って……」
わたしが買ったものは、街で今売上が落ちていて困っている時計屋さんと文房具屋さんで買ったものばかり。
わたし自身は、そんなに必要としていない。
でもわたし自身が投資して資産運用をして得たお金を使い、買い物をしたので侯爵家のお金を使ってはいない。
「お義姉様に相談しましょう」
わたしはヴィクトリア様が運営している孤児院に配ってもらえるように、お義姉様に頼んだ。
わたしの部屋の大量の荷物を見て、呆れていたが、
「だって、ブラッドとせっかくお出かけできたのに護衛としてしか、ついて来てくれないのですよ!
わたしは楽しみにしていたのに……なんだか腹が立って困っていると聞いていた時計屋さんに行って、持っていたお金全部使ってしまいました。
ついでに文房具屋さんも最近不景気で売れないと言っていたので、そっちはあとで集金してもらえるように言ってたくさん買って、ブラッドにいっぱい持たせました。
なのに、ブラッドったら嫌な顔もせず全部持ってくれるんです。
なんだか悔しくて!」
お義姉様はクスクス笑いながら
「ブラッドからしたら、エリーゼが一生懸命困っている人のためにお金を使っている姿が微笑ましかったのでしょうね」
「わたしは一緒に歩いて一緒に買い物をしたかったのです」
「まだお義父様からお許しが出ていないのですからブラッドは使用人に過ぎないのよ、仕方がないと思うわ」
「……だってやっと両思いになれたのに…」
わたしはなんだか悔しくて寂しくて目に涙が滲んで、でも、我儘なことを言っているのはわかっていて、頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
「ふふふ、エリーゼはブラッドが大好きなのね。でも自分の気持ちだけを押し付けては駄目よ、相手の立場も考えてあげないと。
彼は今お義父様に貴女に相応しい男か試されているところよ、頑張っているのだから黙って見守りなさい」
「そうですよね、彼ともし結婚できたらわたしは平民として生きることになるのですもの。わたしも平民になるために頑張ります!」
「エリーゼは孤児院で育ったのよ?もう平民として暮らすための準備はいつでもできているでしょう?
それに貴女は平民でも貴族でもどちらでも構わないのでしょう?ブラッドさえ居てくれれば」
「うん、ブラッドといると落ち着くんです。ここがわたしの居場所なんだと思えるし安心します」
お義姉様は扉の方を見ながらニコニコして、
「エリーゼがそう言ってますよ、お義父様、ブラッド」
わたしが扉の方を見ると、二人が入って来た。
「エリーゼ……」
お父様は少し寂しそうにしていた。
ブラッドは後ろからわたしを見てにっこりと笑ってくれた。
わたしは恥ずかしくて顔が真っ赤になり下を向いてしまった。
「エリーゼ……お前ももう18歳だ……本当はすっごおく嫌だけど、お前がブラッドが好きなら、本当はすっごく嫌だけど、認めるよ」
お父様は、なんとも言えない顔をして、嬉しくなさそうに認めてくれた。
「ブラッド!これで歩くときは護衛ではなくて横にきて一緒に歩いてくれる?」
わたしは嬉しくてブラッドに聞くと、小さな呟きが聞こえて来た。
「エリーゼ……わたし…の…存在…は……?」
「お父様?まだいらしたの?」
わたしは冷たくお父様を見た。
本当は素直に認められて「ありがとう」と言いたかったけど、なんだか恥ずかしくてやっぱりいつものツンとした態度になってしまった。
心の中でお父様に「ごめんなさい、ありがとう」と言ったけど、もちろん本人には伝えていない。
いつかお父様に素直になれる日は来るのかしら?
そして、お父様から認めていただいてから、3週間後にはブラッドのご両親にもお会いして無事婚約できた。
ブラッドは大人でイチャイチャすることもないけど、いつもわたしを後ろで見守ってくれる。
わたしは花嫁修行という名の家事の勉強、特に料理をしている時は、
「あ、危ない!」
「うわっ!なんだその料理?」
「これ……食えるのか?」
なんていつも言いながらわたしの料理を美味しそうに??食べてくれる。
最近はこっそりお父様の食卓にもわたしの料理を出しているのだが、
「うん?なんだこの変な料理!」
と使用人に言ってるのを聞いて、
「わたしが作りました!料理人を怒らないでください!」
「しまった!」と言う顔をしていた。
それからはわたしの美味しい?料理を毎日食べてくれるようになった。
見た目はアレだけど、食べると案外美味しいらしく今は文句を言わずに二人とも食べてくれる。
わたしはもうすぐブラッドの花嫁になる。
公爵家とは違い小さな家で二人で暮らす。
結婚式の日……わたしは今度こそお父様に素直になりたいと思っている。
そして……
今日ブラッドの花嫁になる。
お父様、どうかわたしの素直な気持ちを聞いて欲しい。
「エリーゼ様、貴女をずっと愛しています」
ブラッドは確かにわたしに…キス…をしてそう言ってくれた。
そう、わたしのファーストキスだった。
なのに……
え?
でも何も変わっていない。
わたしは学園を卒業して、今はお義姉様と昼間は刺繍をしたりお茶の時間を過ごしている。
ブラッドは、いつものようにお父様の執事として仕事をしたり、わたしが外出するときは護衛としてそばにいてくれる……だけ。
え?
これで終わり?
一緒にデートは?
え?
二人でゆっくり過ごす時間は?
え?
主人と使用人という立場は変わらないの?
「ねえ、ブラッド。わたし、ブラッドのこと好きだと言ったわ、なのにどうしていつもと同じなの?せめてわたしの横を歩いて欲しいわ」
外出中もわたしの後ろに控えているブラッド。
せめて隣に立っていて欲しい。
「エリーゼ様、わたしはいち使用人です」
「……そう、わかったわ。だったらもういいわ、離れて護衛してちょうだい」
別に甘い時間を過ごしたいわけでも(ほんとうはしたいけど)、手を繋ぎたいわけでも(ちょっと期待してたけど)ないのに!
わたしは屋敷に帰ると、大量に買った物をブラッドに全て運ばせて、「もういいわ、出ていって!」と、追い出した。
部屋にたくさん積まれた物を見て溜息が出た。
「ほんとバカだわ。必要のない物をこんなに買って……」
わたしが買ったものは、街で今売上が落ちていて困っている時計屋さんと文房具屋さんで買ったものばかり。
わたし自身は、そんなに必要としていない。
でもわたし自身が投資して資産運用をして得たお金を使い、買い物をしたので侯爵家のお金を使ってはいない。
「お義姉様に相談しましょう」
わたしはヴィクトリア様が運営している孤児院に配ってもらえるように、お義姉様に頼んだ。
わたしの部屋の大量の荷物を見て、呆れていたが、
「だって、ブラッドとせっかくお出かけできたのに護衛としてしか、ついて来てくれないのですよ!
わたしは楽しみにしていたのに……なんだか腹が立って困っていると聞いていた時計屋さんに行って、持っていたお金全部使ってしまいました。
ついでに文房具屋さんも最近不景気で売れないと言っていたので、そっちはあとで集金してもらえるように言ってたくさん買って、ブラッドにいっぱい持たせました。
なのに、ブラッドったら嫌な顔もせず全部持ってくれるんです。
なんだか悔しくて!」
お義姉様はクスクス笑いながら
「ブラッドからしたら、エリーゼが一生懸命困っている人のためにお金を使っている姿が微笑ましかったのでしょうね」
「わたしは一緒に歩いて一緒に買い物をしたかったのです」
「まだお義父様からお許しが出ていないのですからブラッドは使用人に過ぎないのよ、仕方がないと思うわ」
「……だってやっと両思いになれたのに…」
わたしはなんだか悔しくて寂しくて目に涙が滲んで、でも、我儘なことを言っているのはわかっていて、頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。
「ふふふ、エリーゼはブラッドが大好きなのね。でも自分の気持ちだけを押し付けては駄目よ、相手の立場も考えてあげないと。
彼は今お義父様に貴女に相応しい男か試されているところよ、頑張っているのだから黙って見守りなさい」
「そうですよね、彼ともし結婚できたらわたしは平民として生きることになるのですもの。わたしも平民になるために頑張ります!」
「エリーゼは孤児院で育ったのよ?もう平民として暮らすための準備はいつでもできているでしょう?
それに貴女は平民でも貴族でもどちらでも構わないのでしょう?ブラッドさえ居てくれれば」
「うん、ブラッドといると落ち着くんです。ここがわたしの居場所なんだと思えるし安心します」
お義姉様は扉の方を見ながらニコニコして、
「エリーゼがそう言ってますよ、お義父様、ブラッド」
わたしが扉の方を見ると、二人が入って来た。
「エリーゼ……」
お父様は少し寂しそうにしていた。
ブラッドは後ろからわたしを見てにっこりと笑ってくれた。
わたしは恥ずかしくて顔が真っ赤になり下を向いてしまった。
「エリーゼ……お前ももう18歳だ……本当はすっごおく嫌だけど、お前がブラッドが好きなら、本当はすっごく嫌だけど、認めるよ」
お父様は、なんとも言えない顔をして、嬉しくなさそうに認めてくれた。
「ブラッド!これで歩くときは護衛ではなくて横にきて一緒に歩いてくれる?」
わたしは嬉しくてブラッドに聞くと、小さな呟きが聞こえて来た。
「エリーゼ……わたし…の…存在…は……?」
「お父様?まだいらしたの?」
わたしは冷たくお父様を見た。
本当は素直に認められて「ありがとう」と言いたかったけど、なんだか恥ずかしくてやっぱりいつものツンとした態度になってしまった。
心の中でお父様に「ごめんなさい、ありがとう」と言ったけど、もちろん本人には伝えていない。
いつかお父様に素直になれる日は来るのかしら?
そして、お父様から認めていただいてから、3週間後にはブラッドのご両親にもお会いして無事婚約できた。
ブラッドは大人でイチャイチャすることもないけど、いつもわたしを後ろで見守ってくれる。
わたしは花嫁修行という名の家事の勉強、特に料理をしている時は、
「あ、危ない!」
「うわっ!なんだその料理?」
「これ……食えるのか?」
なんていつも言いながらわたしの料理を美味しそうに??食べてくれる。
最近はこっそりお父様の食卓にもわたしの料理を出しているのだが、
「うん?なんだこの変な料理!」
と使用人に言ってるのを聞いて、
「わたしが作りました!料理人を怒らないでください!」
「しまった!」と言う顔をしていた。
それからはわたしの美味しい?料理を毎日食べてくれるようになった。
見た目はアレだけど、食べると案外美味しいらしく今は文句を言わずに二人とも食べてくれる。
わたしはもうすぐブラッドの花嫁になる。
公爵家とは違い小さな家で二人で暮らす。
結婚式の日……わたしは今度こそお父様に素直になりたいと思っている。
そして……
今日ブラッドの花嫁になる。
お父様、どうかわたしの素直な気持ちを聞いて欲しい。
応援ありがとうございます!
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