98 / 110
番外編 ブラッド編 ②
しおりを挟む
今回の巻き戻しでは、俺はまだ16歳だった。
今回は未亡人達の欲望の玩具になるのはやめて、魔石をいくつか探し出して、それを売って学費にした。
俺の両親は貧乏すぎて、俺のことはほとんど見向きもしていない。
俺が何をしようと自由だった。
俺はエリーゼ様を今回は何があっても助けるために、全てにおいて優秀でいようと努力した。
なのに何故か彼女は殿下の婚約者になっていなかった。
彼女は孤児院で楽しそうに生活をしていた。
孤児のみんなと共に働き、過ごしていた。
学生の間はたまに見守るために、慰問と称して友人達と訪問していた。
もちろんエリーゼ様は俺に気づかないし、俺も彼女の前には近づかないようにしていた。
今のところハウエル公爵やニューベル公爵からの接触はないみたいだ。
俺はとりあえず今回も成績優秀で身体能力も学園一を目指して過ごした。
もちろん今回も「影」になった。
そして20歳の時にやはり彼女の護衛になった。
今回はエリーゼ様は身の安全のためにクロード殿下の宮に寝泊まりしている。
前回とは動きが変わっていた。
それでも彼女が危険なのは変わらない。
前回と同じようにエリーゼ様をつけ狙っているようだった。
今度こそ守る。
俺にとって彼女は守るべき存在だった。
なのに彼女自ら囮になって拐われた。
だが、考えられていた毒とは違う強いものを使われていた。
解毒剤の効きは悪く、彼女を助け出したいのに見守るしかなかった。
殿下達、早く証拠を見つけ出してくれ。
俺はユシリス様とハウエル公爵達の話を聞いてすぐにでもこいつらを殺して助け出したくなった。
それにしても、三人の話は酷すぎる。
それぞれが自分の欲に溺れて、協力しているだけ。
「皇后様、クロード様を頂いてもよろしいですか?」
「ふふふ、その代わりこのエリーゼはわたしが貰うわ。しばらくは玩具としていろんな事をしてみたいの。
男に犯させる。城の中を引きずる。裸にして歩かせるのも楽しそう。髪を丸坊主にしたらどんな顔になるのかしら?あとは何をして遊ぼうかしら?」
皇后様はクスクス笑いながら、楽しそうに話していた。
「皇后様、その時は是非わたしに犯す役を与えてください」
ハウエル公爵が、気持ち悪い声で懇願している。
「まだ死んでいないみたいだから、後で誰かに解毒剤を持ってこらせるわ。少し元気になってもらわないとわたしの玩具として使い物にならないわ。
ねえ、次はヴィクトリアのところへ行きましょう。あの目障りな女はどうやって痛ぶるのがいいのか思いついたのよ。あの孤児院を燃やしたら、ヴィクトリアはどう思うかしら?あんなゴミ屑達が死んでも誰も困らない。逆に寄付代も浮くし、貴族達は喜んでくれるわ」
「確かに貴族として孤児院に寄付や慰問は欠かせません。無駄金が減るなら、全ての孤児院を順番に放火させて行きましょう。古い建物だ。よく燃えるでしょうね。子供達が寝ている夜中にみんなまとめて焼いてしまうのが手っ取り早い」
ハウエル公爵が笑いながら話している。
三人が地下牢から出て行った瞬間エリーゼ様が言った。
「誰かここからわたしを出してください。お願い」
コツン。
壁を叩いて返事をした。
「お願い、孤児院を守って」
エリーゼ様は窓に向かって何度もお願いした。
コツン!
「ありがとう。お願いします」
エリーゼ様は窓に向かって頭を下げた。
それからしばらくエリーゼ様は窓を見つめ続けた。
エリーゼ様は窓を見るのに疲れて壁にもたれ掛かって、キツイ体をなんとかいつでも動ける態勢に整えて、助けを待っていた。
意識が朦朧としているのがわかった。
食事も摂っていないし、解毒剤が効いたといってもまだ本調子ではない。
そしてやっと、許可がおりてエリーゼ様を助けることができた。
「殿下……わたし…は貴方を愛し…ていたんです…」
エリーゼ様のその呟きは何故か俺の心を抉った。
まだ10歳の少女。
俺がこの子に恋などあり得ない。
なのに前回の16歳の時の彼女の姿と重なり、あの時の思いが、助けたいと思った理由が分かりそうになる。
俺は気づかないフリをした。
今回は未亡人達の欲望の玩具になるのはやめて、魔石をいくつか探し出して、それを売って学費にした。
俺の両親は貧乏すぎて、俺のことはほとんど見向きもしていない。
俺が何をしようと自由だった。
俺はエリーゼ様を今回は何があっても助けるために、全てにおいて優秀でいようと努力した。
なのに何故か彼女は殿下の婚約者になっていなかった。
彼女は孤児院で楽しそうに生活をしていた。
孤児のみんなと共に働き、過ごしていた。
学生の間はたまに見守るために、慰問と称して友人達と訪問していた。
もちろんエリーゼ様は俺に気づかないし、俺も彼女の前には近づかないようにしていた。
今のところハウエル公爵やニューベル公爵からの接触はないみたいだ。
俺はとりあえず今回も成績優秀で身体能力も学園一を目指して過ごした。
もちろん今回も「影」になった。
そして20歳の時にやはり彼女の護衛になった。
今回はエリーゼ様は身の安全のためにクロード殿下の宮に寝泊まりしている。
前回とは動きが変わっていた。
それでも彼女が危険なのは変わらない。
前回と同じようにエリーゼ様をつけ狙っているようだった。
今度こそ守る。
俺にとって彼女は守るべき存在だった。
なのに彼女自ら囮になって拐われた。
だが、考えられていた毒とは違う強いものを使われていた。
解毒剤の効きは悪く、彼女を助け出したいのに見守るしかなかった。
殿下達、早く証拠を見つけ出してくれ。
俺はユシリス様とハウエル公爵達の話を聞いてすぐにでもこいつらを殺して助け出したくなった。
それにしても、三人の話は酷すぎる。
それぞれが自分の欲に溺れて、協力しているだけ。
「皇后様、クロード様を頂いてもよろしいですか?」
「ふふふ、その代わりこのエリーゼはわたしが貰うわ。しばらくは玩具としていろんな事をしてみたいの。
男に犯させる。城の中を引きずる。裸にして歩かせるのも楽しそう。髪を丸坊主にしたらどんな顔になるのかしら?あとは何をして遊ぼうかしら?」
皇后様はクスクス笑いながら、楽しそうに話していた。
「皇后様、その時は是非わたしに犯す役を与えてください」
ハウエル公爵が、気持ち悪い声で懇願している。
「まだ死んでいないみたいだから、後で誰かに解毒剤を持ってこらせるわ。少し元気になってもらわないとわたしの玩具として使い物にならないわ。
ねえ、次はヴィクトリアのところへ行きましょう。あの目障りな女はどうやって痛ぶるのがいいのか思いついたのよ。あの孤児院を燃やしたら、ヴィクトリアはどう思うかしら?あんなゴミ屑達が死んでも誰も困らない。逆に寄付代も浮くし、貴族達は喜んでくれるわ」
「確かに貴族として孤児院に寄付や慰問は欠かせません。無駄金が減るなら、全ての孤児院を順番に放火させて行きましょう。古い建物だ。よく燃えるでしょうね。子供達が寝ている夜中にみんなまとめて焼いてしまうのが手っ取り早い」
ハウエル公爵が笑いながら話している。
三人が地下牢から出て行った瞬間エリーゼ様が言った。
「誰かここからわたしを出してください。お願い」
コツン。
壁を叩いて返事をした。
「お願い、孤児院を守って」
エリーゼ様は窓に向かって何度もお願いした。
コツン!
「ありがとう。お願いします」
エリーゼ様は窓に向かって頭を下げた。
それからしばらくエリーゼ様は窓を見つめ続けた。
エリーゼ様は窓を見るのに疲れて壁にもたれ掛かって、キツイ体をなんとかいつでも動ける態勢に整えて、助けを待っていた。
意識が朦朧としているのがわかった。
食事も摂っていないし、解毒剤が効いたといってもまだ本調子ではない。
そしてやっと、許可がおりてエリーゼ様を助けることができた。
「殿下……わたし…は貴方を愛し…ていたんです…」
エリーゼ様のその呟きは何故か俺の心を抉った。
まだ10歳の少女。
俺がこの子に恋などあり得ない。
なのに前回の16歳の時の彼女の姿と重なり、あの時の思いが、助けたいと思った理由が分かりそうになる。
俺は気づかないフリをした。
95
お気に入りに追加
4,844
あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する
ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。
その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。
シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。
皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。
やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。
愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。
今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。
シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す―
一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました
青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」
司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。
===============================================
オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。
挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。
クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。
新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。
マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。
ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。
捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。
長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。
新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。
フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。
フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。
ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。
========================================
*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした
かんな
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。
二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる