【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ

文字の大きさ
上 下
96 / 110

エピローグ

しおりを挟む
18歳になり、高等部の卒業式がもうすぐ。

卒業式のダンスパーティーがあるというのに、わたしには婚約者も恋人もいない。

「ねえ、ブラッド。わたしのダンスのパートナーになってもらえないかしら?」

いつもの夜会や舞踏会では、お父様がわたしの相手をしてくれる。

でも当日はお父様がどうしても仕事を抜けられないと言われた。
(本当は無理すれば出席できるらしい)

お父様はわたしと出席しようと思っていたがお断りした。

だから、わたしには相手がいない。

困った(振りをした)わたしはブラッドに頼ることにした。
(お願い!嫌な顔をしないで)

わたしは澄ました顔で、我儘な振りをして彼に聞いた。

「エリーゼ様、わたしでよろしいのですか?同じ年頃の方にお願いしてみてはいかがですか?」

「駄目よ!!」
わたしは思わず大きな声が出た。

「…あ、だってわたしが誰かに声を掛けてしまうと期待されてしまうわ、わたしがなんとも思っていなくても」

「わたしになら大丈夫だと思っているのですね」

「ええ、ブラッドだもん」

「お困りなのですか?」

「そ、そうよ、だから一緒に参加してくれないかしら?」

「……旦那様の仕事は当日そんな重要ではないので時間を作るのは簡単なはずですが?」

「……え?」
(バ、バレてる……)
わたしはブラッドの目を見る事が出来なかった。

「もう!」

わたしは諦めて開き直ることにした。

「ブラッドと、学園最後の卒業パーティーに参加したいの!」
わたしは真っ赤な顔をしてブラッドを見た。

「エリーゼ様、それは主としての命令でしょうか?」

「そ、そうよ!…………違う……わたしが貴方と参加したかったの。嫌なら無理には言わないわ、お父様にお願いするから、ごめんなさい」

わたしはこれ以上は恥ずかしいし情けなくて何も言えなかった。

だって16年プラス12年、わたしは誰にも告白なんてした事がない。

なんて言えばいいのかわからないんだもん。

シュンとして俯いてしまったわたしにブラッドは優しく囁いた。

「エリーゼ様、喜んで参加させていただきます」

「え?」

思わず嬉しさで顔を上げて

「いいの?嬉しいわ」

わたしは満面の笑顔で彼を見つめた。




そして、卒業式の日。

アンとユンとミリアがわたしのために、メイクと髪を結ってくれた。

ドレスの色はブラッドの黒い瞳の色を所々に入れた、ワインレッドの大人っぽいデザインのドレスにした。

少しでも彼に近づきたい、わたしが幼くて彼が恥をかかないようにと選んだドレス。

そして彼の服はわたしの金色の髪とブルーの瞳の色を選んで着ていた。

わたしはそれだけで胸がいっぱいで、恥ずかしくて。

アン達は生温かい目でわたしを見ていたが気付かないふりをしていた。

「ブラッド、今日はよろしくね」

「エリーゼ様、とても美しいです」
彼の優しい甘い笑顔にわたしの心臓のドキドキが止まらなかった。

そして卒業パーティーで初めて彼と踊った。

わたしとブラッドはベランダに出てダンスで火照った体を涼ませていた。

とても楽しくて幸せで、
「ブラッド、ありがとう、いい思い出ができたわ」

「エリーゼ様が喜んでくれたのならよかったです、これは卒業祝いです、ほんの気持ちですが」

彼がくれたプレゼントは、ネックレスだった。

わたしの瞳の色、ブルーサファイア。

「ありがとう、今つけてもいいかしら?」

「ではわたしがおつけしても宜しいですか?」

「お願いするわ」

彼の顔が首筋に近づいてきた。
わたしは彼の呼吸の音が聞こえて、恥ずかしくてドキドキした。

なのに彼は女性慣れしていて涼しい顔をして平然としている。
(当たり前よね、28歳の大人なのよ……)

わたしは彼の恋愛のことを考えると少し切なくなる。わたしでは恋愛対象になれない。

「好きです」その一言を伝える事が出来ない。
わたしと彼の年齢差にいつも一歩が踏み出せないでいる。
わたしみたいな歳の離れた子どもを相手にしたいなんて思わないのはわかっている。

でも、これから彼と接しづらくなるのがわかっていてもこの気持ちをもう抑えられないでいた。

「ブラッド、わたし……わたしね……っ…あ」
わたしは突然ブラッドの口で話すのを止められた。

彼の唇がわたしの唇を塞いだ。

(今キスをしているの?)
わたしは驚いてブラッドを見ていたが、彼はさらに深いキスをしてきた。

わたしは彼にされるがままにキスを受け入れた。

そして唇が離れると、
「エリーゼ様、貴女をずっと愛しています」

ブラッドは優しくわたしの頬をそっと触りながら言った。

そしてわたしは……

「わたしも貴方を愛しています」






END








◆ ◆ ◆

短編の予定でしたがかなり長い長編になってしまいました。(大汗)
最後までお付き合いありがとうございました。

14日から番外編を少しだけ更新していく予定です。

まずはブラッド編です。

よろしくお願いします。



そして、新しいお話も書き始めました。

[わたしはお飾りの妻らしい。  
                ~16歳で継母になりました~]

こちらはサラッと短めに書いていく予定です。

もしよろしければ読んでみてくださいね。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

虐げられた皇女は父の愛人とその娘に復讐する

ましゅぺちーの
恋愛
大陸一の大国ライドーン帝国の皇帝が崩御した。 その皇帝の子供である第一皇女シャーロットはこの時をずっと待っていた。 シャーロットの母親は今は亡き皇后陛下で皇帝とは政略結婚だった。 皇帝は皇后を蔑ろにし身分の低い女を愛妾として囲った。 やがてその愛妾には子供が生まれた。それが第二皇女プリシラである。 愛妾は皇帝の寵愛を笠に着てやりたい放題でプリシラも両親に甘やかされて我儘に育った。 今までは皇帝の寵愛があったからこそ好きにさせていたが、これからはそうもいかない。 シャーロットは愛妾とプリシラに対する復讐を実行に移す― 一部タイトルを変更しました。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】

雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。 誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。 ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。 彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。 ※読んでくださりありがとうございます。 ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。

貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。 彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。 しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。 悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。 その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

かんな
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。 二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?

処理中です...